カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「行きたいところが多すぎて立てられなかった旅行計画が、一発で決まってしまった話」

 結婚式のために岩手まで行くことになった
 せっかくのことだから観光も
 そう思ったが行きたいところがたくさんあって計画が立てられない
 ところが秘策があって それですべてが一発で決まってしまった

というお話。

f:id:kite-cafe:20190925100600j:plainphotoAC より)

 

【旅行計画が立てられない】

 昨日は岩手県で結婚式があったというお話をしました。
 日取りは3カ月以上前から分かっていたのであれこれ計画を立てる時間は十分にあったのですが、私はぎりぎりまで東北地方のどこに行くのか、交通機関は何を使うのか、まったく決めていませんでした。決められなかったのです。

 昔からあまり旅行をしない人間で、それを自分のケチと面倒くさがりのせいにしてきました。
「『どこでもドア』があれば行ってみたいところはたくさんあるんだけど、行くまでが面倒、時間のムダみたい気がしてなかなかねぇ」
 そんなふうに言ってきたのです。

 ところが今回岩手に行くにあたってつくづく分かったのは、そもそも私は計画を立てるのが嫌いなのです。正確に言えば“仕事上の計画などはともかく、旅行計画だけはほんとうに嫌い”。なぜかというといろいろ諦めなくてはならないからです。
 あれこれ調べていて、あれも見たい、これも見たい、しかし全部回るのは資金的にも時間的にもムリ、だからあれも捨てこれも捨て、とたくさん諦めなくてはなりません。その“諦めること”がとても嫌なのです。未練たらしい。

 今回、岩手に向かうにあたって使える時間はわずか1日半。妻が休みを取れるギリギリの線です。
 途中の埼玉や栃木は行こうと思えばいつでも行ける範囲だから考えないとして、福島は以前職員旅行で行ったことがあるのでここもパス。残るは宮城と岩手なのですが、調べると行きたいところが山ほどある。
 被災地には行ってみたい。それより手前の宮城南部には蔵王がある、海岸に移動して松島がある。ニッカウヰスキーがある、白石城がある、多賀城がある、仙台城がある、西芳寺がある。岩手なら浄土ヶ浜猊鼻渓中尊寺毛越寺庭園、えさし藤原の郷、宮沢賢治記念館、宮沢賢治童話村、その他諸々。

 先ほど“一日半”と言いましたが、“半”は妻が午後の時間休を取って生み出した半日ですから、実際には宮城県に入るくらいが精いっぱいの移動日。残る一日も夕方からは親戚の食事会が入っているので実質的に許されるのは最長で8時間程度。しかもそれぞれの観光地でどの程度の時間を過ごすのかも言ってみないと分かりません。

 そう考えていくとウンザリして計画どころではなくなります。結局、見て見ぬふりで三か月。本気になって考え始めたのはわずか一週間前のことでした。

 

【決め手の一歩は交通手段】

 行きたいところはたくさんあるのに時間は少ない。おまけに帰りに回ってみようと思った東日本大震災の被災地を調べると、どこも一筋縄ではいかない遠隔地。ひとつの町を訪れるだけでも電車を乗り継ぎ、一時間に一本といったバスに乗らなくてはいけなかったりします。
 もう本当にどうしようもなくなってついに考えたのが、
「そうだ、車を運転して行って来よう」
ということでした。自家用車だったら乗り継ぎの手間もなく、乗り物待ちもなくなります。しかし往復、最短でも1400km。そんなに運転できるのだろうか?
 行きは妻と一緒ですから交互に運転すればよいようなものですが、帰りは仕事の入っている妻が一足先に新幹線で帰ってしまい、私ひとりの700㎞です。

 悩んで妻に相談すると。
「やったー! 荷物がたくさん持てる!」
この人は夫を心配するという様子がまるでありません。それですべてが決まりました。

 

 【他人本意の便利さ】

 宿はできれば高速インターからあまり離れていないところ。温泉が趣味の妻のことを考えると源泉かけ流しの風呂がなくてはなりません。その条件で調べると秋保温泉はすんなりと決まりました。木曜日ですから空き部屋がないということもないでしょう。

 立ち寄る観光地ですが、妻は歴史に興味のない人ですから多賀城も藤原の郷も簡単に消えます。景観にも興味がなさそうで松島も浄土ヶ浜も消えてしまいました。一時期、中学校の国語の教師をしたことがありましたから「奥の細道」で中尊寺はいいかもしれません。あとは宮沢賢治、これで決まりです。
 ある意味、他人本意に考えると決定はあっという間です。

 ただ中尊寺のとなりの毛越寺庭園には心が残ります。となりと言っても駐車場に車を置きっぱなしで移動できるほど近くでもないからです。改めて駐車料金を払い、入場料も払って観るのが“庭園”でも妻は納得してくれるだろうか?
 私はそこそこ歴史に詳しいですから庭園の周囲に巨大な伽藍群を思い浮かべることができます。しかし妻にとっては単なる“(たいしたことのない)庭”でしかないかもしれません。そんなものに1500円も払う気になってくれるかどうか・・・で、結局よほど時間に余裕がない限りここも諦めることにしたのです。
 いずれにしろ妻を言い訳にしたら、ものごとはずっと単純になってしまいました。
 宮沢賢治は記念館と童話村、どちらを選ぶか、どちらも選べるのかは、行ってから考えることにしましょう。

                      (この稿、続く)