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「教師を使いこなす」~同僚の先生に、優先的に私の仕事をやってもらう方法

 教員の仕事は一部独立採算性のような部分があって、極めて個人営業的、閉鎖性が高いものです。しかし一方校務分掌は多岐多様にわたり、いろいろな意味で他人の力を仰がなければならないものが出てきます。例えば原稿を出してもらうとかアンケートに答えてもらうといった類のものです。ところがこれがなかなか集まらない。なぜ集まらないかというと皆、忙しいからです。

 ここで大切なのは、提出物を出してくれない人が頼んだ“あなた”を軽んじているわけではないということです。“あなた”のことをいい加減に考えているから仕事を後回しにしているわけではない、しかしそれにも関わらず頼んだものが出てこないのは、その人が仕事を「重要度」や「締め切り」順に行うのではなく、「怖いもの」順に並べなおしたからです。

 いつも言っていますが、教員の仕事の特徴の一つはマルチ・タスクということです。まったく方向の異なった仕事を同時に多数持っています。例えば、明日の授業の準備をしながら保護者の相談に回答し、合間に学校行事の計画及びその下見計画を立てる。教員自己評価が迫っているので評価カードを作成しながら学級会計を整理し、PTA委員会の計画を立てながら部活の遠征計画を書く、その間に各校部活顧問と電話連絡をしあう、といった具合です。

 バランス感覚の良い人や仕事の早い人はいいのですが、私のように何かに耽りこむと融通の利かないタイプはまるでダメです。同時に者を考えること自体が苦手なのです。こういう人はすぐに切羽詰ります。締め切り切れがあちこちに出てきます。私はこういう時、「仕事に追い抜かれた」という言い方をしました。そして「仕事に追い抜かれた」人間は何をすること言うと、遅れたら容赦ない仕打ちが待っている仕事から手をつけるのです。もうそうなると自転車操業です。

 では、そんな横着者に仕事をさせるにはどうしたら良いのか――。
 一番簡単なのは“あなた”自身が「恐ろしい人」になることですが、しかし誰もがそうなれるわけではありません。そこでそれに代わるのが丁寧な「締め切り」の執行です。仕事に必ず締め切りをつくり、早め早めに意識させることです。特に大切なのは、その仕事が終わるまでの時間を概算し、締め切りから逆算してちょうどいいくらいの時期に催促するのです。例えば三日でできそうな仕事なら、締め切りの三日前に周知するのです。当日になって「今日、締め切りです」などと言うのは最低です。逆にずっと早めに言ったから大丈夫と思うのも愚かです。ちょうど良い時期でないとだめなのです。

 私は仕事の遅い方だったので、さまざまな人に催促されたり脅されたりしましたが、うまく間に合うのはそういう人に渡された仕事でした。もっとも適切な時期を計って適切に催促できるというのも、そのひと独自の能力ではあるわけなのですが、そういう人はいくらでもいました。