昨日書いたことを簡単にまとめると、
- 「塾の先生にも、教えるのがうまい人もいればへたな人もいる」全員がうまいというわけではない。
それにもかかわらず塾で成績を上げる子がいるのは、 - 勉強に本当に困っている(つまり意欲のある)子がたくさん来ている。
- 基本的に個別指導のため、分らなくなった時点まで遡って押さえなおすことができる。
- 基本的に担任を嫌いながら通ってくる子がいないため、互いに人間関係に苦慮することがない。静かな、学習の雰囲気がつくりやすい。
- 学習内容が受験に特化しているため、コンパクトで効率がよい。
ということになります。
要するに、必ずしも塾の先生は教え方がうまいわけでもありませんが(しつこいようですが、教え方のうまい塾講師もたくさんいます)、塾のおかげで成績を伸ばす子がたくさんいるというのも事実だということです。
ですから私は、保護者から「やはり塾にやった方がいいでしょうか」と問われたときは、「本人が行きたがるようならやった方がいいですよ」と答えるようにしています。
若いころは、そう言われると自分の指導力に疑問を持たれたみたいで少し腹が立ち、「大丈夫です。何とかします」とか答えてそれなりに努力しましたが、大きく遅れてしまった子を引き上げるのは容易ではありません。安請け合いして結局ダメにしてしまうのは不誠実なので、以後は早めに勧めるようにもなりました。学校のやっていることと塾のやっていることは違うのですから、子どもは必要に応じて組み合わせればいいのです(ただし「親が生かせる塾」は非常に危険だというお話もしておく必要があります)。
こう見てくると、やはり学校教師と塾講師を比較すること自体が間違っています。それはいわば陸上の100m走と十種競技を比較するようなもので、意味あることとは言えません。
現在の100m走の世界記録はウサイン・ボルトの9秒58です。それに対して2001年につくられて今も破られない十種競技の世界記録保持者、ロマン・セブルレの100m走はわずか10秒64です。これでは世界陸上100mの決勝にさえ出られません。けれどだからセブルレはだめなアスリートだという人はいないでしょう。セブルレもボルトも、ともに偉大なアスリートです。
(ところで、塾講師に授業法を学んだ東京都の教員たち、その際どのような感想を持ったのでしょう? それに関するニュースはまったく伝わってきません)