カイト・カフェ

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「日本のガラパゴス問題について」~何も低いレベルに合わせることはない

 ひところメディア上で「ガラパゴス現象」いう表現が頻出しました。日本企業の技術やサービスが、日本市場の中だけで高度に発展してしまう現象を言うのだそうで、その間、世界市場ではもっとレベルの低い技術やサービスが普及し、結果、日本企業の海外進出が難しくなっているというのです。

 代表的なのは携帯電話で、日本のケータイは世界最高峰の技術が詰め込まれている代わりに高価で、世界標準となり得ませんでした。冷蔵庫も、アジア向けのものは最低の性能で十分で、現段階ではそのレベルのものが売れ筋だそうです。 
 日本の3Dテレビの技術水準は群を抜いています。それに対して韓国サムスン社の3Dテレビは寝転がると暗くなって見えない、斜め横深くから見ると黒い部分が白っぽく見えるなど、いくつかの問題があります。にもかかわらず世界シェアの9割はサムスンの製品です。しかしこれはサムスンの技術力が低という問題ではなく、その程度で販売してよいと見切ったサムスンの販売戦略の勝利といっていいでしょう。少なくとも日本が出遅れたことは確かです。

 だからいい加減、高スペックを追及するのはやめようというのが「ガラパゴス現象」を問題視する人々の立場です。
 しかしそんなものなのでしょうか。

 テストでいつも100点を取るためには120点分の実力が必要です。100点の実力だとミスや思い違いによって必ず1〜2問、落とすからです。同じように100点満点の製品を常に送り出すためには120点分の技術が必要なはずです。

 トヨタプリウスはつい最近まで、日本にしかない珍奇な車でした。それが世界を席巻しました。トヨタ叩きにも関わらずトヨタが力強く息を吹き返したのもプリウスのおかげです。

 そもそも日本の自動車産業が世界のひのき舞台に躍り出ることができたのも、乗用車生産企業が七つもあるという超過当競争の国内市場で、高スペック低価格を追及し続けたからです。

 ケータイで世界を制圧することには失敗しました。半導体王国だった時代も終わってしまいました。しかしそれらはすぐに陳腐な技術となり、世界はさらによりよいものを目指すに決まっています。

 店に来た客を玄関まで送り出すといった過剰な接客は、外国の人々をまず恐れさせるのだそうです。しかしそういったサービスになれた外国人たちは自国に帰って、今度は本国の店員の、そっけない態度にうんざりしています。ニューヨークの街中で入り口のガラス扉にぶつかっている人がいたら、それは自動ドアに慣れきったトーキョー帰りの人だとも言われます。タクシーのドアが自動であったり、公衆トイレにまでシャワー付きにしてしまう、そうした過剰は日本の文化なのです。

 私はこの件でも、日本が反省して世界基準に合わせることには反対します。ガラパゴス現象は微調整すべきかもしれませんが、根本的に見直していいものではありません。