学ばないことはできない

 大人になっても、米の銘柄を知らなかった。何も知らないことにあきれた先輩が

「アキタコマチもササニシキも知らんのか? じゃあコシヒカリは? トチヒカリは? トチノウミくらい知ってるだろ。タカノハナは? ワカノハナは?」

と、ここまできてやっとからかわれていることは分かった。しかしさて、どこまでが米の銘柄でどこから関取の名に変わったのか、それが分からない。

 40代の始めに初めて畑を持ち、鍬を買ってさあ耕そうと思ってからフト迷った。鍬で耕しながら前に進めばいいのか、後ろへ下がればいいのか分からない。前へ進めばせっかく耕した部分を踏みつけなければならない、後ろに下がれば引き寄せる土がひたすら多くなって重くて叶わない。

 学校菜園に苗を植えて、毎日毎日生徒と一緒に水をやっていたら同僚に笑われた。「T先生、一度雨降ったらよほど乾かない限り、水なんてやらなくていいんだよ。あんなに水まきしなくちゃならないなら、百姓なんてバカらしくてやってられない」

なるほど、水道代だってバカにならない。

 マルチを買って来て畑に敷いたはいいが、苗を植えるための穴がきれいに開けられない。近くの畑に見学に行ってみるとどれも見事な等間隔で、同じサイズの穴が並べられている。何度も迷ってから、思い切って見知らぬおばさんに訊いてみると一言、

「あんなものは、穴の開いたマルチを買ってくりゃいいんだ」

 確かに。

 そのほか、

 もらってきたバラの苗を根元のビニール袋をつけたまま植えてしまった。

 トマトの脇芽を取らなかったばかりにジャングルトマトみたいなものを作ってしまった。

 中身の真っ白な未熟のスイカを収穫した。

 枝豆の豆の部分を丁寧に採って、次の豆ができるのを待っていた。

 きゅうりとカボチャを同じ場所に植えて、「カボリ」とも「キュウチャ」とも呼べる変なものを生み出してしまった・・・ときりがない。

 結局、学ばなかったことは何もできないということだ。

 さて、いよいよ本格的な田畑のシーズン。私のようなアホな人間にしないため、たくさんの経験をさせてください。