すっかりリタイアしたのですからやれることはたくさんあります。しかしやろうとしなければ何もできません。
「人生は何事もなさぬにはあまりにも長いが、 何事かをなすにはあまりにも短い」(中島敦「山月記」)。
そこでとりあえず思いついた「死ぬまでにやっておきたい10のこと」、書き出してみます。
1 百姓仕事を覚えたい
前述のとおり今の家に移り住んだとき、1アールほどの狭い畑が付録のようについてきました。鍬を持って耕すのに前へ進みながら鍬を振るうのか、それともうしろに下がりながらするのか、それすらわからないところからのスタートでしたが、とにかく植える苗・蒔く種、何をやってもうまく行きます。
「百姓って楽なもんだな」
それが1年目。
2年目もそこそこ。ところが3年目あたりからおかしくなってきます。何をやってもうまく行かない。病害虫は出る作物は十分育たない・・・。
要するに土づくりがすべてなのです。
私たちが入手するまで、その畑はずっとプロが管理していたものです。明け渡すに際しても、きっと何かすべきことをしてくださったのでしょう。だから何もかもうまく行く。2年くらいはもつ、しかし3年は無理なのです。
以後20年にわたって「百姓って楽なものだ」と考えたことは一度もありません。うまくいくものもあるのですが、まるっきり育たないものもあってまちまち。
もっとも土づくりにとって最も大切なのは3月。教員にしろその他の仕事にしろ、3月4月は一番忙しい時期で片手間に畑をやるのは容易なことではありませんでした。来年はそれが可能になるので、今から勉強しておきましょう。
いい作物ができたら親戚に配って回りましょう。忙しさに取り紛れて、ずいぶん失礼を重ねた家がたくさんあるのです。
2 庭木の剪定について勉強したい
果樹もあれば庭木もあります。
果樹に関しては前に書きましたが、庭木の方はもっと悲惨です。何とか表面のかたちは整えてきたものの、幹に近い内部の枝ぶりはメチャクチャです。実のところ、外面なんていくら整えても無理、中から整枝しないと無駄な仕事が増えるだけです。
「絡み枝」に「逆さ枝」、「懐枝」に「車枝」、「下り枝」「立枝」「徒長枝」「平行枝」・・・いろいろ覚えました。
「あの植木を見なさい。小さい時からいつも気をつけて手を入れた木と、生えてきたまま自然にしておいた木と、どのくらい違いがあるかしれない。大きくなって枝を曲げたり切り込んだりしてみても、木が傷むばかりで、とても小さな時から手を入れた木のようにはならないものだ。 それと同じことで、はいはいをしない前から気をつけて教えていけば、ご本人は少しも難儀ともつらいとも思わずに、自然にいろいろ覚えるけれど、大きくなってしまってから急に行儀を教えると、本人は窮屈で苦しいものだから、人前ばかりで行儀をよくしても、人のいない所ですぐくずしてしまうので、とてもほんとうの躾はできない」(和田英「我が母の躾」)
つまりほんとうは「もう遅い」のですが頑張りましょう。
そう言えば20年以上昔、暇さえれば梯子を持ち出して校庭の樹木の剪定をしていた校長先生がおられました。そのおかげで在任中、校内の巨木が5本以上枯れたと言われていましたが、切りたくなる気持ちは分かります。
(この稿、続く)