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「リスクの見積もり」~マスコミの提示する”子どもの危険”はいびつだ

 あの、口うるさく声の大きなマスコミを何とかしなければと思うことがしばしばあります。うっかりテレビを見ていると、問題の所在や大きさを見失ってしまうからです。

 たとえば不審者問題というもの、町じゅうが神経質になって、道を往来する目的不明の人々(たいていの人は目的のわからない人ですが)を警戒していますが、実際に見知らぬ人に声をかけられ、誘拐され殺される子どもの数というのは、多い年でも年間2~3人しかしかいません。内容を見ても、おととしの広島のペルー人による誘拐殺人事件などは「見知らぬ人」による犯罪ではなく、通学路でよく見かける外国人によって行われたものです。

 その前年の奈良の幼女誘拐事件は「見知らぬ人」によるものでしたが、被害者の児童は声をかけられるとあっという間に自分から車に乗り込んで言った様子が目撃されています。つまり腕をつかまれ無理やり引きずり込まれそうになったら大声をあげる、というのとは別の指導が必要なはずです。
 この事件ではまた、安全対策として携帯電話がまったく役に立たなかったことがはっきりしていますが、今も携帯を持たせたほうが安全だと信じて、別な意味では危険極まりない携帯電話を持たせる家庭が少なくありません。

 年間に殺される子どもの数は少なくはありませんが、もっとも多く殺しているのは、保護者たちです。その数は毎年100人。全国の児童相談所が処理した虐待の相談件数は3万5000件です。そうなると数字的には町の不審者より、親の方を監視しなければならなくなります。

 子どもの性被害が2600件と聞かされると震え上がりますが大半が露出狂によるものですから、注意は必要なものの深刻になる必要はないのかもしれません。

 自殺する子どもが年間に180人ほどいます。交通事故で死ぬ子は200人ほど。けがをする子は驚くほど多くて8万8000人です。

 学校内での暴力事件が3万件、学校外だと4千件ほど。不登校が20万人、大人の引きこもりは40万人。いじめ事件は2万件、教師の体罰事件は800件ほどです。もちろん数字の上の問題で、中身はもっと複雑です。
 
 こう見てくると、子どもが誘拐されたら困ると言って日曜日も外に出さず、ふんだんにテレビゲーム与えたり携帯電話を与えたりすることがいかに愚かなことか、わかります。不登校や非行少年になる可能性の方がよほど高いからです。

 リスクはゼロにはできません。本来なら、どのリスクを回避し、どのリスクを背負うかということだけが問題になるはずですが、いまやどこかで本末転倒の話が進められています。