「携帯電話の向こうには」

 

 数百人ものメールともだちを持っている人もメールというものをまったくしない人も含めて、ひとり平均で20人のメールアドレスを持っていると仮定しましょう。その上でチェーンメールの実験をします。

 最初に私が20人にメールを送ります(1回目)。その20人がそれぞれ20人にメールをすると400人に伝わります(2回目)。その400人がそれぞれ20人にメールを送る3回目で8000人。4回目で16万人。5回目に320万人。6回目で6400万人。7回目12億8000万人つまり軽く日本の人口の10倍になってしまいます。その中にはもちろん、ヤクザだの暴力団だのといったとんでもない人たちもいます。つまり携帯電話の7人向こうにこういう人たちがいるのです。

 それを承知で、小中学生に携帯電話を買い与える親の気持ちが、私にはまったく分かりません。

 

「万が一の時のために与える」というのは、指先のケガを恐れて手首を切り落とすようなものです。携帯電話のために犯罪に巻き込まれた例は山ほどありますが、携帯のために助かったという例は1件しか知りません。

「必ず勉強するから」というアテにならない約束をして騙された親も親もいるかもしれません。しかし金(購入費と使用料)を払って当てにならないもの(勉強する)を手に入れようとする行為は、普通ギャンブルといいます。自分の子を使ってギャンブルをしてはいけません。

 子どもとの「携帯買って・買わない」戦争にホトホト疲れ、結局買わされてしまった親もいます。しかし買ったところで平和は訪れません。今度は「出会い系サイト制限戦争」「アダルトサイト制限戦争」「学校への持ち込み禁止戦争」「使用料制限戦争」と次から次へと問題が発生します。前と違って購入後は同時多発テロみたいになってしまいますから、疲労度も前回どころではないのです。その上、「学習時間の低下」「学力の低下」「高額な通信費の支払い(もしくは子が支払いのためにアルバイトに明け暮れる時間のムダ、そこでつくられる不明の人間関係)」「不良グループへの接近への心配」「誰と付き合っているかまったく分からなくなる不安」・・・と心配し始めたら切りがありません。

 

「買う・買わない戦争」に明け暮れていればよかったものを、うっかり買ったばかりに大変な目に合う、ということは、既にテレビゲームで経験済みです。あの時も「必ず勉強する」とか「時間を決めて」とかいう言葉に騙され、結局「視力の低下」「学力の低下」「睡眠時間の減少」「外遊びの減少」「時間制限戦争」「ソフト買ってくれ戦争」とさまざまな厄災を招きこんでしまいました。今また同じことを、それと知りながら繰り返すのは、やはり愚かなことでしょう。

 

 本校で携帯電話を持っているのは1年生4人、2年生3人、3年生0人、4年生1人、5年生1人、6年生6人の計15人ということになっています(8月の調査)。これ以上、増やすことはないでしょう。