カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「穂積隆信という男」①

 先週の金曜土曜と二日間、フジテレビ系列で「積み木くずし最終章」というドラマをやっていました。非常にイライラしながら二晩とも見てしまいました。私は非常に複雑な思いを持っています。

 一連の「積み木くずし」シリーズ(穂積隆信・著)の発端となった「積み木くずし〜親と子の200日戦争」は1982年に出版され、300万部というとてつもない発行部数を記録したベストセラーです。個人的にも想いの深い本であって、私は一時期、これを生徒指導上のバイブルのように思っていました。

 中でも「〜200日戦争」に出てくる警視庁少年相談室の技官の指導には、深く噛み締めるべきものがあります。子どもの非行に立ち向かう術として、彼のやり方は30年近く経った今でもまったく輝きを失っていません。

一、子どもと話し合いをしてはいけない。
(親の方から絶対に話しかけてはいけない。子どもの方から話しかけてきたら、愛情を持って相づちだけを打つ。意見を言ってはいけない

二、子どもに交換条件を出してはいけない。相手の条件も受け入れてはいけない。
三、他人を巻き込んではいけない。
(どのような悪い友だちだと思っても、その友だちやご両親のところへ抗議したり、また、電話をかけたりしてはいけない)
四、日常の挨拶は、子どもが挨拶しようがしまいが、「お早う」「お帰り」「お休みなさい」等、親の方から正しくする。子どもがそれに応じなくても、叱ったり文句を言ったりしないこと。
五、友だちからの電話、その他連絡があった場合、それがいかなる友だちからのものであっても、事務的に正確に本人に伝えること。

 5番目の「電話の取り次ぎ」は、今日で言えば「携帯電話を取り上げない」といったことになるでしょうか。いずれにしろ、親や教師がうっかりやってしまいそうなことばかりです。
 私は一行一行吟味しながら、その意図するところをしっかりと理解して援用して行こうと思いました。

「〜200日戦争」から多くを学びながら(その意味では穂積の「私たちの経験を世の中に役立てたい」は、意味のあることでしたが)、それと同時に、最初に目を通した瞬間から、この本が穂積家に及ぼす災厄について、かなり確かな予感がありました。こんな本を出版された13歳の少女が、素直に更生の道など歩めるはずがないのです。

 穂積夫妻は、本人の了承を得たと書いていますがそんなものは無効でしょう。
 13歳の少女に自分の将来を決定させてはいけないのです。ある事象が自分の将来にどんな影響を及ぼすかなど、中学1年生の子どもに分かるはずはないのです。 

                            (この稿、続く)