カイト・カフェ

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「教員の働き方改革に万民が納得する解決策を見つけた!」~教員の勤務を普通のサラリーマン並みにする

 学校に持ち込まれるのは「善きこと」ばかりだから仕事は絶対に減らない。
 日本は借金だらけだから、財務省は万単位の増員など絶対に認めない。
 志願者もいない。
 しかしそれなのに私は、教員の働き方の、万民が納得する解決策を見つけたのだ! 
という話。  

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(写真:フォトAC)

【教員の勤務を普通のサラリーマン並みにする】

 たいそうな表題を掲げましたが、私のアイデアはいたってシンプルです。ひとことで言えば、教員の働き方を普通のサラリーマンと同じようにするということです。
 普通のサラリーマンと同じように残業手当をつける。もちろん普通のサラリーマン同様、野放図な残業は許されません。そのつど理由を明記して許可を得るか、上司の命令を受けなくてはなりません。当然、残業時間の上限も設けられます。

 普通のサラリーマンの年間の休日は土日・祭日・年末年始休業を合わせて120日ほどです。だから教員もそのようにします。冗談じゃあない、春休みはもちろん、世間が羨む夏休みだって教員は勤務している、年間120日しか休めないのはほぼ同じだと、お怒りになる先生もおられるかもしれません。しかし夏休みの勤務は本来勤務に比べてずっと楽でしょ? そんなゆるいことをしているから世間からやっかまれるのです。7月・8月も1学期同様の勤務をしましょう。つまり児童生徒を登校させるということ、子どもにとっては夏休みがなくなるということです。

 その代わり一日あたりの授業時数を減らします。現在は5~6時間ある授業を4~5時間とか極端に言えば毎日4時間とか――。しかし学習内容は決まっていますし、これまでの歴史的経過もありますから、いくら何でも毎日3時間では365日授業をやっても教科書を終えることはできないでしょう。毎日4時間でも夏休みを潰した程度では収まらないかもしれません。


【1週間29コマはどこから計算されたのか】

 現状で小中学校の授業は週5日で29コマが普通です。なぜ29コマなのかというと、学習指導要領が年間の総授業時数を1015時間と決めているからです。気になる方は学習指導要領を確認してください(*1)。
 小学校は1授業時間45分、中学校は50分ですが、その授業時間を「1時間」と表現して、小学4年生から中学3年生まですべて1015時間です(小学1年生は850時間、2~3年生は980時間)。
*1 小学校学指導要領P.12 中学校学習指導要領P.14

 指導要領は1年間の授業週数を35週と計算する擬制の上に成り立っていますから、(1015時間÷35週)で1週につき29時間(29コマ)となるのです。それを6時間授業4日と5時間授業1日に配分し、5時間授業の放課後には職員会を入れるというのが一般的な扱いです。短い読書の時間とかドリルの時間とかは別枠です。
 しかしここで疑問が浮かびます。
「35週なら(5日×35)で年間175日の授業でいいはずじゃないか、ウチは登校日数が200日もあるぞ」
 まったくその通りです。200日が普通です(それ以上のところもたくさんあります)。
 ではなぜ25日も余計に登校しなくてはならなくなったのか。25日といえば学校五日制のもとでは5週間、ほぼ1カ月以上にもあたるのです。


【年間175日でいいはずの登校日がなぜ200日もあるのか】

 ひとつは特別活動のせいです。
 考えても見てください。年間35時間と決められている特別活動に含まれる内容は膨大(*2)。練習が必要ならそれも含めて、年35時間でやれといったってできるものではありません。運動会など1回の実施で6時間分も消費してしまいます。仮に2倍の70時間で収めると考えても、表向きの時間より7日間(1週間と2日分)も余計にやっているのです。
*2 入学式や卒業式・始業式や終業式といった[儀式的行事]、音楽会・合唱コンクール・演劇鑑賞などの[文化的行事]、体育祭・運動会・健康診断・身体測定・交通安全教室・避難訓練などの[健康安全体育的行事]、児童生徒総会・委員会活動・異年齢交流など[児童生徒会活動]、遠足や臨海学習・修学旅行・社会見学といった[遠足・旅行・集団宿泊的行事]、ボランティア活動・職業体験などの[勤労生産・奉仕的行事]など

 さらに指導要領の枠外の「特設の授業」というものもあります。平和教育・人権教育・性教育・キャリア教育・メディアリテラシー教育・食育・環境教育・ボランティア教育・命の安全教育等々のいわゆる追加教育が、授業時数をどんどん増やしていきます。いずれも1時間の授業で済ませることのできないものばかりです。
 卒業式のように半日で終わるものも「登校日」ですから、これも日数を増やす要因になります。その結果が年40週(200日)なのです。

 ではそのうちどのくらい減らせるのか――。
 行事の精選で修学旅行をなくしてしまえ、文化祭は1日でいいなど様々な意見がありますが、圧縮したところで大したことはありませんし、思い切って削り落とせば世間の不興を買います。新型コロナ禍で修学旅行なくなっただけでもあれだけの大騒ぎになるのですから、永続的に辞めるとなるとタダでは済みません。
 学校に依頼されるものはすべて「善きこと」です。悪いことならいくらでも捨てられますが善いことはなかなか捨てられないのです。


【学校五日制の5日間をすべて5時間授業にしてみる】

 現在の平均的登校日数200日というのは学校五日制で40週、時間にして1160時間に相当します(29時間×40週)。毎日の授業時数を減らしても、年間を通して同じだけの時数を確保すれば現在の水準が維持でき、どこからも文句は出ないはずです。では教師が一般サラリーマンと同じように働いて1160時間の授業時間を確保するには、毎週何時間(何コマ)の授業をすればいいのでしょうか?

 試みに学校五日制の5日間をすべて5時間授業にしてみましょう。毎日5時間ですから現行の計算より簡単です。(1160時間÷5時間)で232日。いちおう、この232日を教員の新たな勤務日とします。

 最初に申し上げた通り、平均的なサラリーマンの休日は土日・祭日・年末年始休業を合わせると120日ほどです。したがって勤務日は245日(365日-120日)。おやおや、偶然とはいえ、かなりいい数字が出ました。

 教員の方が13日も少ないですが、これは「子どもは登校しないが教師は勤務しなくてはならない13日」と考えて出勤させればいいのです。実際に3月末から4月当初は前年度の後始末と新年度の準備で、子どもが登校しなくてもかなり大変な時期です。会議も目白押しですので13日の勤務というのはかなり妥当な数字です。

 ほらね、完璧でしょ? 教員の新たな勤務日は345日で普通のサラリーマンと同じ、誰にも文句は言わせません。その代わり子どもの下校時刻は、休み時間も加味すると60分以上早まりますから、その分、教師が退勤時間を守れる可能性は高まります。残業手当もありますから、半強制的に帰宅させられるか、許可が出れば残業代となる、それも一般サラリーマンと同じです。
 あとはこの案を社会が受け入れてくれるかどうかだけです。

(この稿、続く)