カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「人間ドックに行ってきた」~毎年行っているのにいつも新鮮!

 人間ドックに行ってきた。
 毎年やっているのに必ず新たな発見がある。
 面白いこともいいことも。
 ただし歳が歳なので、新しく、面白くないことも確実にある。

という話。

f:id:kite-cafe:20200220092658j:plain(「医療イメージ―聴診器とカルテ」フォトAC より)

 

【人間ドックはこんなところ】

 先週のことですが、人間ドックに行ってきました。50歳を過ぎてから毎年1月末か2月の初めに行っています。学校が一番落ち着いている時期だからです。今の私には関係ありませんが。

 若い人は人間ドックなんてそもそも何をするところか分からないかもしれませんので簡単に紹介すると、
① 身体測定(身長・体重・体脂肪率・腹囲・血圧・心拍数・肺活量) 
② 血液検査 
③ 視力・聴力検査
④ レントゲン撮影
⑤ 超音波検査(内臓検査)
⑥ 心電図検査
⑦ 眼底・眼圧検査
⑧ 胃検診(胃カメラあるいはバリウム検査)
⑨ 尿検査
⑩ 大腸検査(検便)
⑪ 問診・内科検診
 それらを一日でやろうというものです。これが最低基準で、料金を出して二日検診にすると糖負荷試験だとか消化器がん検診などが入ってきます。さらにオプションで脳ドックとかPET検診なども選択できます。私はいつも最低の1日ドックです。

 今回、行ってまず気がついたのは“いつも通り、マスクをしている担当者が少ない”ということです。一週間前のことで参考にならないと思いますが、それで私は“ああ、新型コロナに関する情報は今はないんだな”と思ったりしました。もちろん今日行けば事態は変わっているかもしれませんが。

【コードブルー】

 いつもながら手際よくやっていただいているのは確かですが、それにしてもゆっくりと進む健診は待ち時間の方が長く退屈です。そこであちこちフラフラしたりキョロキョロしたりしているうちに、看護師の案内席の後ろに、小さい三色旗のようなステッカーがあることに気づいたのです。
 左から青・白・ピンク、そこには大きく「コードブルー」「コードホワイト」「コードピンク」と書いてあります。
 コードブルーは確か木村拓哉さんの出ていたドラマの題名でもあります。

 下の説明が小さくて見にくかったので近づいて読むと、「コードブルー」には「心肺蘇生の必要な患者がいる」とあります。
「コードブルー」がそれならと興味津々で「ホワイト」を読むと、「院内に暴言・暴力を行う人物がいる」。ナルホド、ナルホド・・・。
 では可愛い「コードピンク」は何かと思ったら、「明らかに犯罪が疑われる子どもの行方不明」とあります。子どもなんてすぐにどこかへ行ってしまいますから、それが「心肺蘇生の必要」「暴漢がばれている」と同じレベルというのは、ちょっと状況の読めない話です。
 あとで調べたら、実は三番目の「コードピンク」は「赤ん坊の連れ去り」を念頭に置いたものでした。それなら分かります。

 こうした「コード〇〇〇」のことをスタッドコールというのだそうです。
 病院内の全館放送で「コードブルー東棟2階」と流れたら、近隣の医師・看護師は器具をもって急行しなくてはなりません。一般の来院者にとっては関係ないことですし、「コードホワイト」の場合などで、普通に「中央棟1階で暴漢が暴れています」と言ったのでは、逃げる人と見に行く人とで大混乱になってしまいそうです。
「コードピンク、北棟2階」と放送があれば、犯人に気づかれることなく、あちこちの出入り口も抑えられるかもしれません。

 掲示が3つだけ、というのも気が利いていて、3つだけならいつも気にしていられます。これがイエローだのパープルだのと山ほどあったら、私などは覚えきれません。
 ただし、家に帰って調べたら、実はけっこうたくさんあって、
「コードレッド」――火災発生。
「コードイエロー」――緊急事態発生・手の空いた医師への応援要請。
「コードグリーン」――救急室に重症の外傷患者が多数搬送されてくる。
「コードゴールド」――脳死ドナー(臓器提供者)の発生。
などだそうです。
 しかし実際問題として、常に覚えていられるのはせいぜいが三つ程度でしょう。私の行った病院の見識です。

【うれしいけど、それでいいんか?】

 前にも書いたかもしれませんが、私は食道の下、胃の入り口あたりにちょっとした変形(ヘルニア)があって、ゲップを我慢できない体質です。
 胃カメラではときどき空気を大量に入れて胃袋を広げ、ひだとひだの間の異常を探すのですが、ゲップを我慢できない私の胃はここぞというときに派手な音を立てて空気を押し出してしまい、そのたびに再度、再々度、空気の大量注入を行わなくてはならなくなります。

 しかし胃に注入される空気は、全部がゲップになって口から出てくるわけではありません。一部は下に進んで腸をパンパンにします。それがいわゆる“おなら”となって胃検診のあとの私を悩ませるのですが、いつも不思議に思うのは、胃カメラの終了したその時点で腹囲(腹周り)の計測が行われるのです。一番お腹の膨れているときにです。身長や体重と一緒でもよさそうなものではありませんか。

 今年は特に腹囲を気にして臨んだドックだったので、担当看護師にひところブー垂れてから計測を始めました。
「ワタシね、毎年思うんですけど、これって卑怯じゃありませんか? 今の私のお腹、釣り上げられたフグとか、怒っているときのカエルと同じパンパン状態なんですよ」
 そう言ったら看護師が、
「不思議ですけど、このタイミングでやるように決まっているんです」
そう言って笑いながら専用のメジャーを腹に回し、キュッと絞って、
「はい、83.5cm。メタボにならないようにしておきました」
「・・・」
 をい、うれしいけど、そんなに締めて計っていいんか?

 【死に方の予定変更】

 15年ほど前に最初に心電図の異常を指摘されたとき、医師に、
「心電図を読んでくれた専門医がね、『この異常を発見して指摘できるのは日本でもオレだけだ』って自慢していましたよ」
と言われましたが、やがて誰でも指摘できる異常レベルになって、昨年は「要再検査」の一歩手前でした。

 けれど「要再検査」ではないのであまり気にしていなかったのですが、今年は検査の最中に看護師だか検査技師だかの女性が途中で検査室に戻ってきて、器具を調べなおしたうえで「肩の力を抜いて」などと言って出て行き、けっこう長い時間をかけて終わったかと思ったら、「Tさん、今、胸が締め付けられるような感じとか痛いとかいうこと、ありません?」とか訊きます。
 そのときは気づかなかったのですが、あとで総合評価の医師から「改めて心臓の専門医に見てもらいますが、再検査になるかもしれませんね」と言われて、検査の時の女性の戸惑いを思い出しました。よほどの異常な波形だったでしょう。

 私は一度経験しているので自分はガンで死ぬものと思い込んでいました。余命を宣告されて死期を見据えながら、しっかりと準備をして死ぬつもりだったのです。だから少々慌てました。
「あ、う、(バタン)」
であっけなく死んでしまうとしたら、いまから準備をしておかなくてはなりません。家に帰ってから思わず部屋を見回してしまいました。