1月末の人間ドッグで便に血が混じっていたようで、
それが看過できない量だったので大腸の内視鏡検査を行うことになりました。
先週金曜日のことです。
胃カメラはかなり一般的かと思いますが、大腸の内視鏡は経験者も少ないかと思います。
そこで体験談――。
【胃カメラでは苦労している】
胃カメラの方は毎年人間ドックに行くたびにやっているのですが、何年たっても慣れない、うまくいきません。
食道と胃をつなぐ部分にヘルニアがあるそうで、そこをカメラがうまく入っていかない。無理やり通そうとすると逆に押し上げる力が働いてせめぎ合いになり、よだれはダラダラ、涙もタラタラ、「オエー」「オェー」と吐き気全開でみっともないことこの上ない。
しかもようやくカメラが入っても胃を押し広げるために空気を入れると、今度はあれほど狭かった胃の入り口の締りが悪く、いくら「ゲップを我慢してください」とか言われても我慢できない――。最後には「ゲップを我慢する」ということが喉のどのあたりにどういう力を入れることなのか、それすらも分からなくなってただひたすら涙を流しているような酷いありさまです。それが毎回。
しかしその点、大腸の方は入り口(肛門)こそ狭いもののそこさえ通過してしまえばあとは広い空洞ですからスイスイ行くはず――と勝手に思い込んでいたのです。ところがとんでもない思い違いでした。
【とりあえず検査に行き着くまでが大変】
前日午後9時以降の飲食は控えてください。水やお茶はけっこうです。ここまでは胃カメラと同じ。
ゴボウなど繊維質の多いもの、コンニャクなど海藻類、タネのある食べ物は2日前から避けるようにというのが事前準備としては違うところです。
事前に「一日がかりのつもりで来てください」という話はあったものの、なぜそんなに時間がかかるのか考えもせずに午前9時病院に到着。すぐに待合室に通されます。そこで一緒に検査を受ける10名ほどと説明を聞きます。私より若そうに見える人は一人だけで、あとは高齢者ばかりです。女性は別室。何人いるのかもわかりません。
そこでの第一声は、
「検査を行うのは午後1時半からです」
(え?)
「午前中は腸の中をきれいにする仕事をしていただきます。
(ハイ、ハイ)
「こちらのテーブルにお名前を書いた下剤パックがありますので、それをお持ちください」
見ると透明のビニルパックがいくつも置かれています。
以下、簡単にまとめると、要するに3時間近くかけてその下剤を飲み干すわけです。その量、なんと2リットル。他にミネラルウォーター500mlを2本。計3リットルです。
下剤はスポーツドリンクみたいな味で不味くはないのですが旨くもない。2リットルとなるとさすがに飽きます。
前半の1リットルを飲み干したところで水500ml。それを終えたころから徐々に下腹が重くなってやがてトイレへ。
水様便というには「便」のイメージの全くない液体がピューピュー出て、7~8回もそれを繰り返すと次第に透明度が高くなってきます。
説明の段階で看護師さんが色見本のような写真を見せて、
「こんなふうにレモン色になったら呼んでください。私が確認します」
とか言うのですが、こんな時にも男というのはどうしようもないもので、やはり一番になりたい。そこでやたら歩いたり軽く体操したりで無事、早目の合格(順位は分からない)。午後は比較的早い順で検査室前の待合室に通されました。
「上半身は肌着だけ。下半身はすべて脱いでこの検査ズボンを履いてください。穴の開いている方が後ろです」
(ナルホド、ナルホド)
「その上から検査着を着てください」
(ハイ、ハイ)
ところがそのあとさらに小一時間、その変な検査着姿のまま待たされていよいよ私の番です。
【大腸内視鏡もやはりダメ、才能がない(?)】
「ベッドの上に左側を下にして寝てください。お尻をこちらに突き出して」
男性看護士がそう指示します。
(リョウカイ、リョウカイ)
「お尻に痛み止めのゼリーを塗ります」
今度は女性看護師。
(ウグッ!)
(それって、塗るんじゃなくて指で突っ込んだじゃないの!?)
「はい、それでは始めます」
女医さんのスタ-ト合図です。ところがこの先が簡単ではなかったのです。
肛門から直腸まではすんなりいったのですがS字結腸でうまく回らない。グイグイ押されて私も傷む。前進するために空気をガンガン送り込んで先を広げるのですが、それが逆流して肛門から外に出る。
「ああ、けっこうです。気にしないでオナラはいくら出してもかまいません」
(いや、それ、オナラじゃないと思うけど。それに我慢するとかしないとかいった問題じゃなくて、ダダ洩れに漏れていくんですけど・・・)
ようやく曲がってカメラの先端は大腸を一番上まで上がってそこから左折。横へ進みます。
「はい、それではゆっくり上を向いて、膝を曲げ、右足を上げて足を組むようにしましょう」
その間もグイグイ押されて、涙が出るほどではありませんがとにかく痛い。カメラがどのあたりを進んでいるのかよく分かる痛さです。
「ああ、すごく伸びやすい腸で、うまく入ってきませんね。では今度はゆっくり右を下にして寝てください。カメラを逆向きにします」
(カメラを逆向きに?)
何かよく分からないけど、どうやら180度ひねって先にねじ込もうということのようです。そしてまた、明らかに腸の襞をかき分けて進む痛み! モニターで見ていると「そのまま行けばいいのに」と思うところが前に行けない。
女医さんにもいよいよ「力仕事」と言った雰囲気が出てきて、やっと――、
「はい、盲腸につきました。あとは引き抜きながら様子を見ていくだけです」
確かに、そのあとは苦痛に感じることもなく、広く明るい空洞を見ながら引いていくだけでした。
私も余裕で、
「胆汁の色はここには残らないんですか?」とか「観察は抜きながらするんですねぇ」とか質問ができます。
「大腸の中ってきれいなものですねエ」と私。
「とても強い下剤を使いましたから。何もかもきれいに抜けてしまいます」
「腸の中って、いつもこんなふうに広がっているんですか?」
「胃は空になるとぺっちゃんこですが、腸の方はすこし空いた感じになります。でも人体図にあるようなきれいな形で置かれているのではなく、たいていは変に曲がったり押しつぶされています。あ、ほらここにポリープがありますよ。2ミリくらいですからこれは問題ないでしょう。
あ、また一個ありました。こちらは5~6ミリ。微妙で悩むところですね。Tさん(私のこと)はこういうの、さっさと取っちゃいたい人ですか?」
「いや、そんなこと、急に言われても・・・なんも考えずにここに来たので。でも今ここで取れるってものではないですよね」
「そうです。改めて手術という形になります。じゃあそのことはあとで改めて考えましょう。組織は取っておきます」
みると小さなラジオペンチの先みたいなものが出てきてポリープを摘まみ、軽く出血。
後ろの女性看護師に、
「採れた? 採れてる?」
私はその前に偶然、若い看護師の持つ細いチューブに向かって血の塊が流れていくのを見ていました。
「はい。採れています」
それから女医は再びカメラを引き、
「いよいよ終わりです。外に出ます。最後に肛門を・・・。あ、痔がありますね。便が硬いと切れる」
(ハイ、ハイ。そういうこともあります。あまり気にならないけど)
という訳でそれですべて終了しました。
その間なんと30分。他の人の出入りと比べると明らかに長い、すごく長い。
最後の待合室で小一時間も待たされたのも、私のブースで同じように時間のかかった被験者が続いたからなのかもしれません(女医さんが下手なのかもしれない・・・とは思いません。思わないようにしています)。
【すべて終わって】
採取した組織検査の結果は二週間後、改めて聞きに行くことになりました。悪性だったら考える余地はありませんが、良性だったらちょっと思案のいるところです。放っておけば癌になるかもしれない代物ですから。
朝9時に入って出たのはほとんど4時。7時間の長丁場となりました。しかしどんなことでも新しい体験というのは面白いものです。勉強にもなりました。
もちろん、しかしだからと言って「皆さんも経験してみたら」といった話ではありません。
尾籠な話、長々と読んでくださり、ありがとうございます。