カイト・カフェ

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「シャイでナイーブな文政権の匂い」~韓国は大丈夫か1

 日韓問題がいよいよ新しい段階に入った
 業を煮やした日本政府が
 韓国の産業に必須の原材料に輸出制限をかけたのだ
 しかしなぜこんなことになってしまったのだろう
というお話。

f:id:kite-cafe:20190705113753j:plain(「ソウルの夜景」phtoAC

 

【驚いていることに驚く】

 6月30日、産経新聞
「政府は、韓国への輸出管理の運用を見直し、テレビやスマートフォン有機ELディスプレー部分に使われるフッ化ポリイミドや、半導体の製造過程で不可欠なレジストとエッチングガス(高純度フッ化水素)の計3品目の輸出規制を7月4日から強化する。いわゆる徴用工訴訟をめぐり、韓国側が関係改善に向けた具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置」
とすっぱ抜き、翌7月1日、経済産業省より正式の発表がありました。実施は昨日7月4日からです。

 フッ化ポリイミドとレジストについては知りませんでしたが、エッチングガス(高純度フッ化水素)については前々から“輸出制限をするならこれだろう”ということで噂がありましたからそれ自体は驚きません。
 びっくりしたのは韓国の反応です。

japanese.joins.comjapanese.joins.comwww.chosunonline.com
 まるで晴天の霹靂といった感じです。
 しかしそれはおかしい。

 

【予告された輸出制限】

 これを報復と呼ぶかはそれ自体が問題ですが、徴用工裁判に関して韓国政府が何の動きも見せず、日本政府が日韓請求権協定に基づく仲裁委の設置を要請しても「慎重に検討する」と言うだけで何もしない。そうした状況に対して日本政府が何らかの非常手段を使うに違いないというのは以前から言われていたことです。

 引用した保守系2紙もここ数カ月、
「徴用工裁判で差し押さえた株が換金されたら、日本は必ず報復するぞ」
「その前に何とか対話しろ」
「G20の席で打開策を探れ」
「このままだと日韓首脳会談もできないぞ」
「何とかしろ」

と、ほとんど悲鳴に近い記事を毎日のように掲載し続けていました。その声が政府・財界に全く届かないはずはありません。

 また今年に入ってからの日韓関係の冷え込み具合、特に日本側の異常な反応は繰り返し韓国にも伝えられていました。
 韓国の当選4~5回というベテラン議員団が国会を訪問したところ、日本側は一年生議員がたった一人で対応するだけだったとか、日韓で伝統的に行われてきた政財界の行事が片っぱし延期になったとか――今回に限って日本は今までと決定的に違うというシグナルは、大量に届いていたはずです。
 それなのにまったく対応せず、今になって驚いている――。

 G20直前に、“日韓両国の関係企業が資金を出し合って、元徴用工に支払う”といったアイデアが出されてきましたが、それはもう8カ月も前に韓国政府自身も不見識と否定し、日本政府が絶対に受け入れないと分かっている案です。
「出せというから出してみた」
 その程度のものでしかありません。

 

【シャイでナイーブな文政権の匂い】

 文政権が反日か否かと問われればやはり反日的だというしかありませんが、しかし考えてみるとさほど攻撃的に反日政策を行ったわけでもありません。

 スローガンである「積弊清算」は国内の政敵を倒すための手段であって、親日というレッテルを張られて政府中枢から遠ざけられたのは韓国の政治家・官僚です。

 慰安婦合意の実質的破棄も、日本の拠出金の穴埋めは税金でやると言って勝手にやめてしまっただけで、我が国に対して何か詰め寄ってきたわけではありません。日本に再交渉は求めないと言い、宙に浮いた10億円も浮かせたまま、日本に突き返すための努力もしてきませんでした。
 考えてみると慰安婦像も積極的に建立しようとしたのではなく、放置しただけです。徴用工像についても政権は何もしていません。

 レーダー照射問題はこれとは別ですが、威嚇低空飛行問題を捏造していわば抱きつき心中みたいに問題を消そうとしただけで、日本に賠償を求めてきたわけでもない。そして現在焦眉の急である徴用工問題も、韓国政府が最高裁判所に対して“何もしなかった”結果でしかありません。

 さらに言えば今回の日本の輸出制限に関しても、世界貿易機関WTO)提訴や技術開発を通じた半導体材料国産化(そのため毎年1兆ウォン相当の投資を行う)、日本の輸出制限によって被害を被る関係各国との連絡調整など、いずれも日本と直接、向かい合わないで済む方策しか出てきません。

 こうして並べてみると、文政権が反日政策といった能動的なことをどこまで追求してきたのかだいぶ怪しくなります。その意味で「加害者と被害者の関係は1000年経っても変わらない」と言った朴槿恵政権よりも、はるかに反日的ではないとも言えます。

 文在寅政権の対日外交を振り返って感じるのは、反日といった強いメッセージではなく、悪く言えば無策、少し良く言っても南北関係以外のすべての外交に関する無関心、そして多少寄り添った言い方をすれば、それはシャイでナイーブな素人集団の匂いです。

                       (この稿、続く)