カイト・カフェ

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「最善を尽くすと約束する」~発達障害を持つ子の、母を救う四つの言葉 ②

 ADHDの子どもを持つ母親として、「えじそんくらぶ」の理事(?)の方が救われた四つの言葉についてお話しています。
 その第一は小学校の養護の先生のおっしゃった「この子はとってもいい子です」から始まるアドバイス、2番目が発達障害の専門医の「お母さん、よく育ててこられましたね。ほんとうに大変だったでしょう」という言葉、ここまで紹介しました。
 三番目は、ADHDの診断結果をもって校長先生を訪ねたときの言葉です。

3 「学校を挙げて面倒をみます」

 ADHDの診断結果受け取ったあとで小学校の校長先生にお会いすると、
「私はこの障害のことはよく分かりません(注:10年以上前の時代ですから)。けれどこの子がいつも困っている、本当に困っている、そのことは分かります。そしてとても担任の先生一人では支えきれないことも分かります。ですからこのお子さんのことは、学校全体で支えていきます。皆で面倒を見ていきますから、どうぞ安心してください」
 実際にその子がパニックになるとクールダウンをするのは校長室で、しばらく校長先生が遊んでくれて落ち着いたあとで教室に戻ります。また別の先生が散歩に連れ出すなどして気分を変えてくれること多かったようです。ほんとうに“学校全体で”対応したのです。

4 「おもしれェ!」

 ADHDの特徴である衝動性と多動性をコントロールできるようになるまでに、かなりの時間がかかったみたいです。その間、母親は本人に障害名を告知していません。診断が下りたとき、一方で“誰も悪くなかった”と安心しながら、他方で自分の息子に障害があるという事実を受け入れられなかったからだと言います。極めて人間的な姿です。もちろん実生活では繰り返し問題が出てきますから「あなたにはこういう傾向がある」といった言い方で障害特性を受け入れさせては行きましたが。ただし明確な障害として告知することはためらわれたようです。
 高校生になってある活動に参加しようとしたとき、どうしても障害名を伝えなくてはならなくなり初めて告知しました。その時の息子さんの答えがこれ、「おもしれェ!」です。
 それがどういう意味なのかラジオ放送の中では説明がありませんでした。しかし現実をむしろ喜んで受け入れた様子が感じられました。それが母親を救います。

 「普通学級に通う公立小中学生の6.5%に発達障害の可能性がある」という報道からこの話は始まりましたが、その他の障害も含めると、おそらく1割以上の子どもが何らかの課題を抱えてこの世に出現してきます。医学の進歩はさらにその可能性を高めていきます。そして一定の割合で出現するなら、その障害が“現われた家族”に対して“現れなかった家族”は一定の負債を追っていることになります。

 障害を持つ子を支える家庭の苦労は、並大抵ではありません。“現われなかった家族”の私たちは、積極的にこの親を支えて行かなくてはなりません。
 幸いなことに“学校”には多くのノウハウがありますし、支えていく態勢もあります。私たちは最もそれをしやすい環境の中にいるのです。

 ところで、先の母親は訴えたいことを問われてこんな話をしていました。
「とにかく人的な充実を計ってほしい。ウチの子は水遊びがしたいと思うとパアっと教室を飛び出してしまうのですね。当然、先生は追いかけていきます。するとそのあと教室は先生が誰もいなくなってしまうのです」

 発達障害の子の指導で一番難しいことがこういう単純な問題だということ、私たちも強く訴えていく必要があります。