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「教育が政治の手段であることについて」~おかげで柔道の授業は3年間、受け身だけになるかもしれない

 一昨日のNHK「クローズアップ現代−“必修化”は大丈夫か 多発する柔道事故」について昨日、職員室で話題になりました。火をつけたのは白井先生です。
クローズアップ現代」の主な内容はこうでした。

  1. 柔道部の練習で死亡した中学生がいた。原因は“加速損傷”という、頭蓋骨の中で脳が揺さぶられることによって起こる事故だった。しかし指導者たちは頭さえ打たなければ大丈夫と考えており、「振り回すこと自体に問題がある」という認識がまったくなかった。
  2. 学校体育の中で柔道による死亡事故は突出しており、過去28年間に中学・高校で114人の子どもたちが死亡。重い障害を負った者も275人に及ぶ。
  3. 体育科の教師の中には、受身もほとんどやったことがないといった人もおり、文科省の認識の甘さが指摘される。
  4. 柔道人口が日本の3倍もあるフランスでは、指導者に国家資格制度を導入し少なくとも380時間のカリキュラムを修了しなくてはならない。さらに生理学やトレーニング法、救急救命の方法も学び、最低2段の段位も必要である。
  5. 然るに日本の柔道界は競技に勝つことにのみ力を注ぎ、安全に対する配慮を怠ってきた。
  6. 必修化の上は、3年間受身だけで終わりにするとか、専門家の指導を仰ぐといった工夫が必要である。警察では要請さえあればいつでもOBを送る用意があるといっている。
  7. また、不幸にして事故が起こった場合は、速やかに第三者機関を設置し、教訓を生かすようにしなければならない。

  武道必修化によって柔道しか選択できない学校(土俵がない、剣道の防具が高価で買い揃えられない)は恐怖したはずです。柔道が危険なスポーツだということは誰でも知っていますし、特に不得意な教員は震え上がったでしょう。
 そうした恐怖は文科省の役人にもあったはずです。学校体育で柔道など始めたら大変なことになる―しかし官僚たちにそれを言いだす権利はありません。

 体育における武道の必修化は、安倍晋三内閣で教育基本法が改正され「教育の目標」に
「五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」
等が入れられた時点でほぼ決定していました。官僚のああだこうだ言える世界ではありません。政治家が理念を提示してしまうと、官僚はそれを具現化するだけです。

 したがって武道として柔道と剣道と相撲を入れ(この三つは外すわけにはいかないでしょう)、そのあとで様子を見ているのです。柔道による死傷者の突出というのも文科省のリークかもしれません。

 いずれにしろ一連の報道によって多少予算に余裕のある地方自治体は一斉に剣道の防具を買いに走り、ないところは警察署に駆け込むことでしょう。あとは訳のわからない人たちが「武道必修化は、警察の天下り先確保の陰謀だ(OBが顧問に雇ってもらえるから)」などと言いださないことを願うばかりです。
(ちょっと今日の私はイライラしています)