学校が始まったら子どもたちに話すこと

 いよいよ今日から平成23年度そして23年度の一学期が始まります。

 風も温かくなり、まもなく桜も咲き、いつもならなんとなくウキウキしてくる時期ですが、私の23年度はそんな気持ちにはなれないでいます。

 理由は分かりますよね。先月11日起きた東北関東大震災福島第一原子力発電所の事故のためです。

 地震津波の被害については、いまだに何人の方が亡くなったのかもわからない状態で、食べ物や飲み物、服や毎日使うものなどがいまも避難している人に届いていない様子があります。ほんとうに気の毒です。

 また原子力発電所の事故の方は、これもなかなか解決がつかず、一体いつになったら安心して住めるのかまったく分からない様子です。こちらもたいへんです。地震津波のために原子力発電所の機械が故障して、放射能というものが飛び出しているのです。

 皆さんは放射能というものが何なのか、何となくでも分かりますか?

それは原子力発電所の中から飛び出してきた小さな粒から出る、一種の毒なのです。

 ちょっと話が変わるみたいですが、皆さんはテレビがなぜ遠い東京の画面を出したり、携帯電話で人と人とがお話できるか知ってますか?

そうですね、電波という目に見えないものが画面や声を遠くから運んでくるからです。

 放射能もこれに似ています。同じように目に見えず、匂いもせずに、すごい速さで小さな粒から飛んできます。そして外から体の中に入る強い毒なのです。

 もちろんほんの少しなら大したことはないのですが、今度の事故のように大量の放射能が出てくる場所となると、その場で亡くなってしまったり、何年もあとになってガンという病気になって死んだりと、それはたいへんなことになるのです。

 先月の12日、福島第一原子力発電所の1号機が爆発し、続いて3号機、そして動いていなかったはずの4号機でも爆発が起こりいました。大量の放射能を吐き出す粒が空中に飛び出し、そのあとも煙はモクモクと放射能を出す粒を出し続けました。

 そこで、これ以上の被害は出してはいけないということで、何をしたか覚えていますか?

 まず自衛隊のヘリコプターで水を落としたのです。全部で4回やりました。しかしそれでは足りないというのでまず警察の放水車(水を飛び出させることのできる自動車)が水をかけに行き、次に消防庁の特別な消防車が水をかけに行き、自衛隊の放水車も水を入れに行きました。そして最後には高いビルにコンクリートを流し込む機械で水を入れるようにしたのです。これは原子力発電所の社員の人たちがやっている仕事です。

 考えてみてください。あたりには放射能を撒き散らす粒がいっぱいあるのですよ。そこへ立ち向かっていくのです。

 ある東京電力の社員は地震のあった11日にはバリ島という日本のずっと南の島に新婚旅行に行っていたのです。バリ島で結婚式もするつもりだったのです。それが福島第一原子力発電所で聞いて、新婚旅行を切り上げて福島に戻っています。この人はお父さんやお母さんに福島原子力発電所に言えば心配するというのでウソをついて福島に行きました。結婚したばかりの奥さんには正直に話しましたが、今福島に行かなければ一生後悔すると言ったら、奥さんも「行った方がいい」と言ったそうです。そんな人がたたくさんいるのです。

 事故が起きてから今日まで、800人も1000人もの人々が、福島原子力発電所に、放射能と戦うために出かけています。

 この人たちが考えていることはただひとつ、これ以上放射能を広げてはいけないということです。一日でも早く原子炉を静かにさせないと、放射能は世界中に広まってしまいます。福島第一原子力発電所を静かにさせるのは日本の義務ですし、これを止めることに日本人の名誉がかかっているのです。

 さてところで、日本人と世界の人々、日本の名誉のために自分の命をかけて戦いに行く、そんなことが皆さんにできますか?もしかしたら自分は死ぬかもしれない、けれど自分には世界を守ることができるかもしれない、そんなときに進んで自分を犠牲にして、日本や世界のために頑張れるでしょうか。

 そう考えたとき、私は自信をもって言うことができます。私は全く疑っていません。君たちも同じ立場に立てば、絶対に同じことができますし、絶対にそれをするということです。

 自分の力で日本を救える、世界を救えるとなったら、平気でどこへでも出かけるに違いありません。

 実は卒業式の夜に、私は市村先生とこの話をしたのです。「先生が警察官や自衛隊員で、福島第一原子力発電所に行けといわれたら行きますか」ってね。すると市村先生はたちどころに「行きますね」と答えました。

 私だってもちろん行きます。警察官でも自衛隊員でも消防士でもなくても、自分にやれることがあって日本を救えるのなら、どこにだって行きます。

 今、兵庫県で開かれているセンバツ高校野球の選手宣誓で、創志学園高校の野山主将はこんなふうにいいました。

「人は、仲間に支えられることで大きな困難を乗り越えることができると信じています。私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱい元気を出して戦うことです。がんばろう!日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」

 君たちはまだ子どもで、今は日本や世界を救うなどといった大きな仕事のできるときではありません。しかし一生懸命勉強し、力をつけ、必ず世の中の役に立つ人間になってほしいと思うのです。君たちはそれをやる勇気と意志を持っています。しかし今はその意志を生かす知識や力がないのです。その知識と力を手に入れてほしいのです。役に立つ人間になってもらわなくては困るのです。

 がんばろう、日本。

 今はまさに日本の実力が試されている時です。

 がんばろう日本。

 世界を変えるのは君たちなのです。