カイト・カフェ

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「百姓とは何か」~百姓の裔①

 日本人の姓(苗字)はどれくらいあるのか。これに関する正確な数は分かりませんが、平成9年(1997年)発行の「日本苗字大辞典」本には291129件載っているのだそうです。およそ30万件。それに対して姓の本家中国の場合は4100件ととんでもなく少ない数になります。儒教の国は家系を重要視しますので姓が無闇に増えるということはなかったのです(それに対して日本は、全国民に苗字がつけられた明治初期、そうとうに怪しい姓まで勝手につけられたみたいです)。

 中国の場合、一口に「姓は4100」と言いましたが実は12億の人口の87%はわずか129件の姓に集約されますから、ものすごい数の同姓が存在することになります。その数は(私の計算ですから多少違っているかもしれませんが)最も多い「李」さんが8880万人、2番目の「王」さんで8640万人、第3位の「張」さんは8160万人と推定されます(以下、劉・陳・楊・黄・趙・周・呉・徐・孫が多い姓)。上位2件だけで1億7000万人と日本の人口を軽く越えてしまいますから、日本に当てはめると全国に二つしか姓がないような感じです。

 現代の調査によって初めてここまで詳しく分かりましたが、古代中国の人たちは直感的に「国民の姓はおよそ百」と考えたようです。なかなかいい数字です。そしてそこから「国民」のことを「百の姓を持つ者=百姓」と呼ぶようになり、当時の「国民」のほぼすべてが農民であることからいつしか「百姓」と「農民」は同一視されるようになったのです。
 日本では一時期差別語として使われた「百姓」ですが、元を質せばただの「国民」です。侮蔑の意味をこめて「百姓!」と叫んでいた人たちがそれを知ったら、どんな顔をするでしょう。ちょっと愉快ですね。

 さて、私の家系は父方が藤原氏、母方が平氏ということになっていますが、日本人の大部分は「源平藤橘(げんぺいとうきつ:源氏・平氏藤原氏橘氏)」を名乗っているそうですからもちろん家系そのものがウソなのでしょう。子どものころはそれでも貴族か武士の子孫と思いこんでいてけっこう気分がよかったのですが、考えてみたら貴族といえば収奪者ですし武士といえばつまるところ殺人集団です。いずれにしろ、ろくなものではありません。長じて自分の家系はどうやら農民らしいとわかって少しほっとしました。農民といっても5代くらい前の祖先が庄屋をやっていたことがわかっていますので、戦国時代まで遡ればたぶん地域ボス、もしくは野党の頭目といったところです。あるいは半農の野武士が土着して農業を専門にやるようになり、江戸時代の大半をすごしたと思われます。

 それからだいぶたってから、今度は多少の傷はあるものの(何しろ地域ボスか野党の頭目ですから)農民の子孫であることに高い誇りを持つようになりました。
 それについてはまた別の機会に書きます。