雪かきひとつを考えても、
学校のさまざまな問題が見えてくる。
尋常でない災害、あるいはそれ以上の危機に際して、
誰が本気で地域や子どもを守るために働いてくれるのか、
――という話。
(写真:フォトAC)
【校内の雪かきは全部、教師がやります!?】
昨日は20年ほど前の大雪の日、当時の私の勤務校では早朝からPTA会長が保護者に緊急招集をかけ、200~300人が学校まで雪かきをしながら来てくれた、それなのに校長が、
「ありがとうございました。校内は職員がやりますのでどうぞお帰りください」
などと調子の良いことを言って帰してしまった、おかげで職員がとんでもなくたいへんな思いをした、という話をしました。
この件からはさまざまな教訓が得られます。
「校長が地域ポピュリストだとなかなか大変だ」も一つの教訓ですが、一度管理職を経験してしまうとここは意外と微妙な話で、地域や保護者にゴマをすっておくことは校長個人の問題としてではなく、学校運営の問題としてかなり重要だと分かってくるのです。「すべての問題は程度問題だ」という言い方があってこれも程度問題なのですが、一概に愚かだとも言い切れない面があります。ただし私があの時の校長だったら断らなかったというのも確かです。自分自身があれ以上疲れるのも嫌ですし、先生たちから嫌われるのも嫌ですから。200~300人もいたのですから、私たちの2時間の仕事も、計算上で10~20分、実際には30分程度で終わったはずですから、その程度は甘えてよかったはずです。
【校長は休日の教職員を呼び出して雪かきをさせてもいいのか】
「休日に教職員を呼び出して雪かきをさせること自体に問題はないか」という項目立てもできそうです。しかしこれは「問題ない」だと思います。
教員に残業代を払わない代わりに調整額を払うことを決めた「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」では、いわゆる「定額働かせ放題」にならないよう、校長が命じることのできる超過勤務を別の政令で定めるとされ、政令は四つの例外を示しています。これを超勤四項目といってその四番目に、「4. 非常災害や児童生徒の安全確保など、緊急でやむを得ない業務」が入っているからです。
週明けの児童生徒の登校や学習活動に影響がありそうなほどの大雪は当然「非常災害」に当たりますし、法令は四項目の超勤に対しても残業代を支払う必要ない、代休を与える義務もないと規定しています。もちろんこれも程度問題で、文科省も、
「日曜日又は休日等に勤務させる必要がある場合には、代休措置を講じて週一日の休日の確保に努めるようにすること」(文科省:資料3 教育公務員の勤務時間について)
としていますから気の利いた校長ならなんとかしてくれたかもしれません。
しかし見た通り努力義務でしかありませんから、一般的には「今日明日二日間、早めに帰ってもいいよ」程度が関の山でしょう。良い悪いの問題ではないのです。法令上そうなっているというだけのことです。
【ふたりのPTA 会長】
大雪で私が意識せざるを得なかった二人のPTA会長――自分の勤務校の会長と息子が在籍する小学校のPTA会長、この二人を比較検討するという項目立てもできます。
100年に一度の大雪という非常時に際し、私の勤務校のPTA会長は(おそらく校長と相談の上で)朝のうちに連絡網を使って保護者に緊急招集をかけ、おかげでかなりの通学路の雪かきができました。「雪の朝(あした)の裸(はだか)洗濯」の言葉通り、大雪のあとの土日二日間は好天と高温が続いたため雪解けが進み、歩道の除雪をした部分はアスファルトも渇いて、月曜日の児童は安全に登校することができました。
一方、息子の通っていた学校のPTA会長は何の指示も出さなかったので、地区では私たち地区指導部の役員が死ぬほど頑張ったのに十分な雪かきはできませんでした。そのために除雪のできなかった場所では二日の間に雪が踏み固められ、融けては凍り凍っては融けを繰り返すうちにアイスバーンになって、逆に危険な通学路となってしまいました。
PTA会長となる人の危機管理能力、センスの問われた事態でした。息子の在籍校の会長が甘かったというより、私の勤務校の会長が優れていたということでしょう。
【雪かきや、それ以上に大切なことは今後どうなるだろう】
現在は多くの学校でPTAがなくなっていますからPTA会長の指示で通学路の雪かきが進められるということはありません。かつての私のように地区の役員が自動的に動き出すということもない。
今は「学級連絡網」の代わりに「メール配信システム」や「学校連絡アプリ」があって一斉連絡には非常に都合いいのですが、これを使って校長が保護者に雪かきを依頼することもありません。権限がないからです(自宅前の通学路の確保程度は頼めるかもお知れませんが)。PTAに指示を出すのはPTA会長、保護者に指示を出せるのは(あるとしたら)保護者会長――それが道理です。
もちろんPTAに代わる「学校サポーター・チーム」のような組織があったり雪かき専門のボランティアチームが編成されている学校もあると思いますが、各地区にまんべんなく指示が出せるものでもないでしょう。人数だって限りがあります。
火曜日の当ブログに「どんど焼き」がなくなった話をした際、すぐに「雪かき」のことを思い出したのはそうした過去の経験があったからです。しかしそんなふうに考えていくと、「どんど焼きができない」だの「雪かきが難しいだの」と言ったことさえどうでもいいような最悪の事態も浮かんできます。
例えば学校で不祥事があった場合も、保護者の意向を集め、学校に突きつけて隠蔽や責任回避を許さない、それができる、正統性をもった保護者代表がいないわけですから、ある意味で学校や行政の言いなりです。児童生徒が大勢巻き込まれるような事件・事故があっても、ただ校舎前で怒鳴って叫ぶしかないのでしょうか?
なんだか本当に不安になってきました。
(この稿、終了)