カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「年寄りの好きなみっつの話」~子どもたちはなぜ結婚しなくなったのだろう①

 変化の少ない年寄りの日々、
 だから話題も広がらない。
 病気・子・孫、ときどき政治。
 しかし口に出せないことも増えた。
 ――という話。(写真:フォトAC)

【年寄りの好きなみっつの話①――家族の話】

 一か月ほど前のことです。民生委員・児童委員(民生児童委員という言い方はないらしい)になって初めての打ち合わせ会があり、新旧二名ずつの委員が集まって先輩の指導を受けました。
 私以外の3人中、旧委員のおふたりとは以前会っており、新任でこのさき相棒となるひとりだけが初対面だと思っていたのが、自己紹介の最中に、昔の知り合いであることに気づきます。20年以上前に息子どうしが小学校の同級生で、保護者として何回か会ったことがあるのです。子どもどうしはかなり仲が良くて、一度その方に釣り堀に連れて行っていただき、けっこうな数のアユを持ち帰ったことがありました。
 それを言うと相手も、「やっぱりね」という感じで、
「さっきからどこかでお会いしていたと、思っていたんですよ」
 そこから再会を喜び合ってお互いの子どもたちの近況を紹介し合います。
 ウチの子は3年前に結婚して首都圏に住んでいるがまだ子どもはいないと言うと、向こうは息子が近くに住んでいて最近ふたり目の子どもが生まれたばかりだという話になります。
 上に女のお子さんもいたのですが、その子は同じ県内で母親として暮らしていると言います。私にも息子の姉に当たる女の子がいて、これは東京都内にいます。息子も娘も地元に戻る予定がないので本当にお宅は羨ましいですねと言うと、脇から前任の女性民生委員が割って入ってきて、「ウチもふたりの息子が都会で結婚していて、こちらに帰る気配もない」と嘆きます。
 そこで年寄りの好きなみっつの話の第一幕「こどもの話」が終わります。

【年寄りの好きなみっつの話②――病気の話】

 民生委員・児童委員について一通り説明を受けた後、これから一緒にやっていく新任の方が、「健康に自信がないが、やっていけるだろうか」という話を持ち出します。第二幕「病気の話」の始まりです。
 数年前に胃がんを患って全摘出。食が細いため、いまも力が出ないのだそうです。私も30年近く前に肺がんに罹った経験があり、そこで病気談議に花が咲きます。しばらく和気あいあいと話していると、先ほどの女性が、今度は意を決したように割り込んできて、
「実は私も3年前に乳がんで――」

 年寄りは年じゅう病気や体調の話をしていますが、それが楽しいからでも同情を引きたいからでもありません、ほぼ確実に共通の話題として取り上げられる無難な話だからです。軽い病気や問題の少なそうな不調なら「その程度なら元気でよかったね」と笑い合い、重篤な様子だったら励ませばいいのです。さらに深刻な人はそんな場にいないのが普通ですし、仮にいたとして悲しい思いをさせることがあっても、社会的コストですから仕方ありません。自分もいつかどこかで同じ思いをすればいいのです。老人から病気の話を取り上げてはいけません。

 これで年寄りの話題のふたつ目が始まり、終わりました。みっつ目の話題は「孫」ですが、その前に新旧打ち合わせで集まった4人のうちひとりだけが忙しく立ち振る舞っていて、家族の話にも病気の話にも加わってこなかった点を気にし始めます。そこで気を利かせたつもりで、
「Kさんは、病気はないの?」
と訊ねると、
「あるよ。高血圧だとか、糖尿の疑いだとか、普通に体調は悪いよな」
と言ってそれから、
「子どもは三人いるけど、ひとりも結婚していない。みんな35歳以上、ひとりは40代だというのにな――」

【年寄りの好きなみっつの話③――孫の話】

 うかつでした。息子が結婚していない、娘が独身といった話はいくらでもあるのです。
 10月に行った大学時代のゼミの同窓会では参加した8人のうち、若いうちに離婚して子どももいない人がひとり、結婚はしているが子どもがいないというのがひとり、ひとり乃至ふたりの子どもがいるが結婚はしていないというのが4人。子が結婚していて孫までいるというのは私を含めてふたりだけでした。
 そう言えば二カ月おきに飲み会を開いている高校時代の同級生10人についても、子どもがいて、少なくともそのうちのひとりでも結婚していて孫もいる、というのは半数の5人だけです。だから“孫”の話の出るためしがありません。どうしても話す必要のある時は陰でコソコソやっています。

 ひとに聞けば、
「そこまで気を遣うのはかえって不遜だ。気にせず話せばいい」
と言いますし、実際に相手の立場に立って考えれば、大して気にならない――入っていけない話題が会話の中心になることはよくあることだし、聞くだけの話がつまらないわけでもありません。しかし遠慮は生まれます。

【なぜ若者は結婚しなくなったのか】

 「年寄りの好きなみっつの話」のうち、ふたつがやりにくい時代になっています。だからと言って病気の話も、面白おかしく話すには限界があります。年寄りでいることがさらにつまらなくなりました。
 若者はなぜ結婚しなくなったのでしょう?
(この稿、続く)