カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「美しい馬群の疾走を見るだけでもいい」~2025年秋ドラマのここがすごい①

 前評判の高かった今年の秋ドラマ。
 競馬に超能力に芝居に様々なカップル。
 演出家と脚本家が腕を競う極上料理、
 どこがいいかを見て行こう。
――という話。
(写真:フォトAC)

【2025年秋ドラマの様相】

 10月から始まった2025年の秋ドラマ。ほぼ出そろって一か月近く経ち、次第に様子がわかってきました。
 前評判の高かったトップ3、『ザ・ロイヤルファミリー』『ちょっとだけエスパー』『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(略称『もしがく』)はやや評判倒れの低視聴率スタート。
 天海祐希主演の『緊急取調室 第5シーズン』や水谷豊主演の『相棒 season24』のような定評のあるシリーズものは、昔の『水戸黄門』のような手堅さで今回も視聴率を集めているようです。
 ダークホースは竹内涼真主演の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』、間宮祥太郎・新木優子W主演の『良いこと悪いこと』といったところでしょう。

 ほんとうはあまたある連続ドラマをすべて見て、次第につまらないものを切り捨てて行けばいいのですが、東京のキー局(NHK日本テレビ・TBS・フジテレビ・テレビ朝日テレビ東京)だけでも新作が30本もあるのでそういうわけには行きません。したがって見る前から選別しなくてはならないのですが、その場合の基準として、私にはふたつの観点があります。

 ひとつは私自身が制作者(プロデューサー)、演出家(ディレクター)、脚本家(ライター)、そして稀に俳優で選ぶというやり方。もう一つは「BGD(バック・グランド・ドラマ)」とも呼ぶべき「ながらテレビ」のすご技を持っている妻が、各シーズン20本以上のドラマに目を通しているので、その勧めに従って数本、VTRで遡って見直すというものです。

 この秋で言えば私が選んだ作品は、前述のトップ3に加えて『小さなころは神様がいて』の計4作。妻に勧められて見ているのが、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』『良いこと悪いこと』ということになっています。ほかにも草彅剛主演の『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』などを勧められているのですが、大河ドラマも朝ドラも夜ドラも見てのことなので、そこまで手が回りません。

【美しい馬群の疾走を見るだけでもいい】

 『ザ・ロイヤルファミリー』は演出が塚原あゆ子だということ、その一点で迷わず選択しました。彼女が手掛けた過去の作品、『Nのために』『リバース』『アンナチュラル』『グランメゾン東京』『MIU404』『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』『最愛』『海に眠るダイヤモンド』、こんなふうに並べると、それだけで目くるめく思いです。おまけに原作が「第33回山本周五郎賞」と「2019年度JRA賞馬事文化賞」受賞の小説ですから、面白いこと間違いありません。

 中央競馬を舞台とする物語ですが、昨夜までの回で言うと、これまで1勝もしたことのない馬主(佐藤浩市)が、優秀な税理士(妻夫木聡)をアシスタント(秘書)とすることで、次第に運を開き、わずか4回の放送で2勝もしてしまうところから始まります。
 普通なら「苦労に苦労を重ねて1勝」となるところを早くも2勝もさせていいのか、とか、今のままで行くと最終回は来月28日の夜ということになるが、その日は主人公たちが最大の目標としている有馬記念の当日、ドラマと現実のレースの整合性はどうするんだとか*1、さまざまに心配しながらも、そしてたかがテレビドラマの一場面であるにもかかわらず、レースの場面では馬が第3コーナーを回ったあたりから、夫婦でギャーギャー叫びながら「差せー!」「逃げろー!」と大騒ぎをしています。

 競走馬はそれ自体が人類の作り上げた芸術品です。その走る姿も美しい。
 私は日本初の五冠馬シンザンからの記憶がありますが、テンポイントトウショウボーイオグリキャップナリタブライアンサイレンススズカディープインパクト、名馬とは言い難いのかもしれませんが人気で圧倒したハイセイコー、地方(高知競馬)では絶対勝たないお姫様のハルウララ(113戦0勝)などが記憶に残るところです。そうした名馬・人気馬の走る姿を重ねて鑑賞すれば、さらに面白さも増すかもしれません。昨夜から目黒連君も重要な人物として登場しています。本来ならもう少し評判になって良さそうなドラマですが、小説も後半に行くにしたがって面白さが増すそうですからこれからを楽しみにしましょう。塚原あゆ子には独特の匂いがあります。

【いまだ未知数の二作品】

 私が選んだ秋ドラマ4作品のうち、残りの3作品は脚本家で決めたものです。
 『ちょっとだけエスパー』は野木亜紀子。『重版出来!』に始まって『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』『海に眠るダイヤモンド』など。劇場映画では何と言っても『図書館戦争』シリーズと昨年の『ラストマイル』。非常に緻密な脚本で、おなじ作品を二度三度と楽しむことができます。

 『ちょっとだけエスパー』は秋ドラマとしては少し遅れて始まり明日が4回目ですが、あまり大したことのない超能力を使える中年の男女4人が、あまり大したことのない事件を解決しているうちに、前回(11月4日)、超能力を得るための薬を主人公の同居人(宮崎あおい)が飲んでしまうという“大事件”が起こり、謎の大学生(北村匠海)も出現して、いよいよこれから本格的な物語が始まるか、といった段階です。
 すでに高い評価を与えているドラマ評もありますが、まだまだ未知数といった感じ。主人公役の大泉洋をはじめとして高畑淳子ディーン・フジオカ宇野祥平といった芸達者が共演していますから、これも期待して見ていきたいと思います。

 『小さなころは神様がいて』は『最後から二番目の恋』シリーズの脚本家、岡田惠和の作品。男女の軽妙な、そしてどうでもいいような会話が延々と続けられる中で、ふたりの関係性や感情の機微が浮かび上がってくる、その様子はいつもながら見事です。ただし今回は少々同じところをぐるぐる回っている感じがあって、物語がどういう方向へ行こうとしているのか、よくわかりません。これも今後に期待です。ユーミンの歌が随所で使われている点も私好みですが、果たして一般的と言えるかどうか――。

 私が選んで見ることにした四つの作品の最後は、三谷幸喜脚本の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』。これについては言いたいことがたくさんありますので明日に回します。
(この稿、続く)

*1:のちにドラマの舞台が2014年~2015年だと分かってとりあえず問題回避