カイト・カフェ

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「犬も歩けば棒に当たるが、当たって楽しいこともある」~うまくいかなかった(だからこそ勉強になった)大阪物語③

 犬も歩けば棒に当たる、キジも鳴かずば撃たれまい。
 何かをすればなにかが起こる。しかし、
 何も起こらない方がいいわけでもない。
 うまくいかないことも、面白がればいいのだ。
という話。(写真:フォトAC)

【帰途:待ち合わせはどこに】

 昼食に注文した「豚バラ丼」が出てくるのを待つ間に、家族との待ち合わせ場所を決めます。シーナは旅行の事前学習と計画立案は好きでもあり得意でもあるのですが、現場での対応となると肝が据わり過ぎて、緻密でないところがあります。その点で私の方が気が小さくて神経質ですので、早めの対応ができます。
 ここまで“いかに自分が杜撰でいい加減で”という話をしてきて、「今さら“気が小さくて神経質で”と、どの口が言うとるんだ」といった話にもなるのですが、私とシーナ以外は全くの他人任せで、困らないと何も始めない、いや、困っても何もしないといったふうがあり、だから私が下支えです。
 とは言っても、スマホでChatGPTに質問する程度のことですが―――。

新大阪駅で新幹線に乗る。待ち合わせ場所でいいのは?」
(ChatGPTの答え)
 新大阪駅はとても広いので、待ち合わせ場所を決めておかないと迷いやすいです。わかりやすくて人がよく利用する待ち合わせ場所をいくつか挙げますね。

◎ 新幹線に乗るならおすすめの待ち合わせ場所

  1. 新幹線改札口前(中央口):在来線から新幹線に乗り換える人が必ず通る大きな改札。待ち合わせに最も使われる定番スポットです。
  2. 新幹線中央口改札横の「時の広場」:大きな金の時計・銀の時計がシンボル。広くてベンチもあり、待ち合わせしやすいです。
  3. 新幹線南口改札前:混雑を避けたいならこちら。人は中央口より少なめ。

 さっそく家族LINEに送るとすぐにシーナから返事。
シ:時の広場にしよう
S:目標2時、遅刻可でお願いします。
 簡単に話はつきました。しかしこのとき何が起こっていたか、大阪に詳しい人ならすぐに気づくはずです。

【朝、いかにして私は改札を通らずに構内に入ったのか】

 昼食が終わってスーツケースの回収へ。しかし朝とはずいぶん雰囲気が違います。当然といえば当然ですが、スーツケースを抱えて並んでいる列はもうありません。クロネコヤマトの「手荷物預かり所」の看板があるのは改札の内側で、係員もいない。

と、看板の横(写真では右の端)のドアからヤマトの制服の人が出てきたのでフェンスの外から大声で、
クロネコの一時預かりって、ここだけですか?」
と言って預かり証を振り回す。すると、
「そうですよ」
 そう言って近づいて預かり証を確認、奥へ持って行きそうになるので私は、
「今、私から中に行きます。待っていてください」
 そう言って改札から回り込みます。
 ん?改札の中?

 そうです。朝はフェンスの一部が開いていて、順番が来た時に招かれて向かった先が駅の構内。そこで手続きをして通路に戻ればよかったのを、事情が分かっていないのでそのままホームに向かって歩いて行ってしまったのです。だからSuicaに入場記録がない。
 改めて手荷物預かり所の紹介サイトを見ると、わざわざ「本町駅改札内出張所」とあります。しかし現場にそんな表示はあったかどうか?

 改札内へ案内されて、知らずにそのままホームへ行ってしまうといったヘマをするのは、私一人ではないでしょう。駅でスーツケースを預けるような人で地元民なんて何割いるのか――。もしかしたらほとんどがホームに向かって歩き始め、出口で引っかかっているのかも知れません。
 クロネコヤマトの臨時手荷物預かり所は4月13日から10月13日まで期間限定で営業しています。今日まで5カ月あまり、まったく対策が取られていないというのも大らかなものです。

【最も大事な場面でもチャッピー(ChatGPT)に騙される】

 さて、何とかスーツケースを手に入れた私は再び地下鉄に乗って新大阪駅へ。ほどなく中央改札口に到着して「時の広場」を探すのですが見つからない。
 若いころならしばらく一生懸命探すところですが、年寄りに見栄はありません。新大阪駅の新幹線改札口でスーツケースを持ってウロウロしている人間の大半は非大阪人と決まっていますから、人に聞くもの恥ずかしくはないのです。そこで迷うことなく、目の前で大阪関西万博のボランティア・ガイドをしていたグループに近づいて、
「あの、『時の広場』って、どのあたりです?」

 すると若い女性の一人は「さあ」と首を傾げ、しかし隣の30代くらいの男性は、
「ああ申し訳ないけど、時の広場はここではなくて大阪駅なんですよ」
 大阪駅がどこにあるのかも分からないのですが「申し訳ない」ほど遠いのでしょう(後で調べたら電車と徒歩で6分、徒歩だけだと56分も離れた場所でした)。

 そこで慌てて家族にLINEで連絡。
S:「またチャッピー(ChatGPT)にだまされた。『時の広場』は新大阪ではなく、大阪駅だそうです。待ち合わせ場所を『新幹線中央改札口の正面。ミャクミャクのボランティア・ブース横に変更します』
 ちなみに時の広場は下の写真のような場所でした。名前も「時」ではなく「時空(とき)の広場」だそうです。私は何度ChatGPTに騙されたら確認の習慣が身につくのでしょう?


【しかし旅行全体がダメだったわけではない。すこぶるよかった】

 しかし物事は総合的に見るべきであって細かな点を恣意的に取り上げてはいません。人も細かな欠点をあげつらっていては、とても好きになれるものではないでしょう。私の大阪行もたくさんの失敗があって、思うに任せないところもあり、イライラすることも少なくありませんでしたが、それは今後の教訓となるもので、旅行全体の楽しさ面白さ、豊かさを些かも毀損するものではありませんでした。

 シーナやアキュラが子どものころ、私たち夫婦はいつも忙しがって、ほとんど旅行にも連れて行っていません。それなのにシーナはたびたび私たちを誘ってくれます。今回は孫3号のドリの面倒を見るのが主たる目的でしたが、私たちもまだまだ家族の役に立つことがうれしくて仕方ないのです。

 しかしやがては私たちも衰えます。孫1号のハーヴも小学校の4年生ですから、そろそろ年寄りとの付き合いを面倒がるかもしれません。そうなったらもう家族で一緒に旅行に出ることもないでしょう。もともと好きではないのですからそれで構いません。
 けれどいましばらく、体の十分に動くあと2~3年、ということは1回か2回くらい、こんな旅ができるといいなと今は思っています。
(この稿、終了)