9月になりました。
農繁期が近く、これといった行事のない月。
新学期の始まる月。子どもにとっては足の重い月。
そして災害について考える月、
という話。
(写真:フォトAC)
【9月になりました】
日本では旧暦9月を「長月」と言い、現在でも新暦9月の別名として用いることがあります。語源は「夜長月」であるとするのが定説ですが、実際のところ、朝も5時をすぎないと明るくなりませんし、夕方も7時前にすっかり暗くなって、ひところに比べるとずいぶん夜が長くなりました。
英語での月名 September は、ラテン語で「7番目の」を意味する septemに由来しているものと言われています。紀元前153年まで1年の始まりの月がMarchだったため、そこから数えて「7番目の月」という意味です。現在はJanuaryが最初の月ですが、数の違いを修正できずに来ています。暦のずれという点では、日本で、桃の季節でもない3月に桃の節句をしたり、8月の中旬に、露地栽培では絶対に咲いていない菊の花を持って墓参りに行かなくてはならないのと同じです。
日本では学校の年度や会計年度が4月始まりなのに対して、欧米や中国など、世界では多くの国々や地域が9月を年度の最初の月としています。民族の文化と密接に結びついたものですから、こういった点も容易に変えることはできません。
現在、稲刈りのシーズンと言えば、一般的に9月下旬から10月上旬。これは新暦で言っても旧暦で考えても「9月」が絡む時期です。したがって今月は大きな祭りや行事もなく、勤労にいそしむ月と言うことになります。落ち着いて生活しましょう。
【9月1日のハードルが高い子がいる】
全国的にみると昨日までが夏休みで今日から新学期、あるいは前期の続きが始まるという学校が大部分です。しかし子どもたち全員が、久しぶりの学校に勇んで登校してくるわけではありません。「新学期」という言葉の清新な雰囲気とは違って、大勢の子どもたちがどんよりとした表情で、重い足を引きずって登校してくるのです。
それはそうでしょう。猛暑続きの中、朝から外にも出られず、一日中家にいて、ただゴロゴロしていたわけですから、歩いて学校に来ることだけでも大変なのです。
学校は、「友だちと会って、楽しく遊んだり会話をしたりするところ」と感じられれば素晴らしいところですが、もう一面で「学習や集団生活が強制される場」でもあります。したがって勉強や友達付き合いが苦手な子、あるいは長い夏休みの間に、何となくやり方を忘れてしまったような気分になっているような子にとって9月1日のハードルはずいぶんと高くなっているのかもしれません。
子どもの自殺は9月1日が最も多い*1という話と重ねて、心に留めておきたいことです。
【防災の日と二百十日】
私は、新学期の始まりと「防災の日」が同日であることを、とても残念に思っています。夏休みの真っ最中にある「終戦記念日」とともに、国家のあり方を根本的に揺るがすような大きな人災と天災(戦争と大自然災害)にかかわる授業が、十分な準備のもとで行えないのが口惜しいのです。
歴史的事象は学校の年還暦を見て起こるわけではないので仕方ありませんが、ほんとうは十分な事前学習を経てから当日(終戦の日と防災の日)を迎えれば、学習も飛躍的に効果的なのでしょうが――。
防災の日はいうまでもなく関東大震災の起こった日(1923年〈大正12年〉9月1日)ですが、奇しくもこの日は立春(2月4日頃)から数えて210日目にあたる日――つまり「二百十日(にひゃくとおか)」に極めて近い日です。
二百十日は現代の暦で、だいたい8月31日~9月1日頃にあたります(今年は昨日8月31日でした)。農家の三大厄日のひとつ(他は「八朔」「二百二十日」)とされ、稲の開花期なのに台風の襲来が多くなるとされる時期です。昔から強風や暴風雨による被害が懸念され、注意喚起の意味で暦に記されたものです。
地震とともに台風に対する備えについても、ひとこと、話しておきたいものです。