私自身が子に与えた本を、いま、孫たちにも贈る。
それは世代を越えて価値を共有することだ。
三世代が同じ物語を聞き、
同じ思い出を持つことになる、
という話。
(写真:フォトAC)
【え、知らないの?】
娘のシーナ一家や、シーナにとっては義妹・義弟にあたるエージュの妹・弟夫婦が我が家に来ていた時のことです。義妹が孫1号のハーヴに、
「夏休みの宿題はもう終わったん?」
と訊ねると、
「うん、あとは自由研究と日記だけ」
「自由研究はやってもやらんくても自由なんでしょ? じゃああとは日記だけやね。楽勝やん」
そこに私がチャチャを入れます。
「その日記だって今のうちにぜんぶ書いておけばいいじゃないか」
ハーヴは「エヘヘ」と笑います。
「日記を先に書いておいて、あとはその通りにすればいい。『今日はプールに行って2時間も遊びました』って書いたら、お父さんにそう言って連れていってもらって、きっかり2時間遊んでくればいい」
「そんなの変だよ」
「だって『はれ ときどき ぶた』でもそうなってるでしょ?」
と、その瞬間、周囲の空気が固まります。
え? 知らないの?
話を聞くと、ハーヴはもちろん、私たち夫婦とシーナ以外は一人残らず、あの有名な児童書を知らなかったのです。
【はれ ときどき ぶた】
「はれ ときどき ぶた」(岩崎書店)は1980年に発表された矢玉四郎さんの代表作です。
小学校低中学年くらいを対象にしたユーモア童話で、「はれぶた」と短縮されて呼ばれるシリーズは10冊を越え、1990年前後にはアニメにもなって大人気でした。シーナが生まれたのがちょうどそのころで、10歳になった2000年あたりに、読んであげたはずです。
主人公は小学生の則安くんは、母親が自分の日記を盗み見たことを知って、「どうせ読まれるなら、うそっぱちのことを書いてやろう」と思いつきます。「お母さんがえんぴつをてんぷらにした」とか「金魚がへやをとびまわる」とか……。ところが翌日から書いたことがすべて現実になってしまう――。おびえた則安くんは、うそが実現しないように、絶対に起こらないことを日記に記すのです。
「はれ、ときどきぶたが、ふる」
(さて、どうなるのか……)
【だいぶ忘れられた、私からも忘れられた本】
この有名な話をエージュの一族が知らない――たまたま一家がその本に触れなかったにしても、その配偶者たちも知らないというのはちょっと信じられない事態です。
そこで調べてみると、SELECTというサイトの「児童書の売れ筋おすすめランキング15選|懐かしい人気のロングセラー名作も大公開」でこそ12位ながら、「Yahoo低学年向読み物その他ランキング」では22位。“子どもの本総選挙スーパーデータベース1000”ではなんと273位なのです。これでは知らない人も出てきて不思議はありません。これは由々しき事態です。
私の家は夫婦がともにかつて小学校教師だったこともあって、家にはかなりの児童書があります。「はれ ときどき ぶた」も必ずあるはずで、私の大好きな本、わずか十数分で読める楽しい物語、皆に見せて自慢しよう――そう思って探したのですが、不思議なことにどこにもありません。下手をすると2冊くらいあって良さそうなほど繰り返し手にした本で、ないはずはないのです。しかし、ない。仕方ないのであきらめて、改めて買ってあげることにしました。
「はれ ときどき ぶた」を探している最中に、これも大好きな児童書「ルドルフとイッパイアテナ」(斉藤 洋:講談社)に気づきました。こちらは二匹の猫の放浪物語で、ひょんなことから東京行のトラックに乗ってしまい、都会に迷い込んだ黒猫ルドルフと、着いた先の地域のボスネコ「イッパイアッテナ」の友情物語です。考えてみると昨年から「ドリトル先生」シリーズを愛読しているハーヴには、分量的にこちらの方が向いているかもしれません。
そこで、
「これ面白いからあげるよ」
そう言って渡すと喜んで受け取りました。私の終活にも役立ちます。「はれぶた」の方は直接送ってやればいいでしょう。
【シーナから報告が来る】
Amazonで「はれぶた」の第一巻をチェックし、それから孫3号にファーストブックを渡していなかったことを思い出して、私の定番「いないいないばあ あそび」(木村祐一:偕成社)もカートに入れます。
ハーヴとドリに本が送られてきてイーツにないのは可哀そうです。保育園の年長組にちょうど良い本の当てがなかったのでシーナに聞くと、「ばばばあちゃんのアイス・パーティ」(さとうわきこ:福音館書店)を紹介してくれました。さまざまな食品をいろいろな容器に入れて凍らせて食べる、そういう本のようです。何となく知っているような気もしましたが、よく思い出せません。しかしシーナの選ぶ本です。間違いないでしょう。
十日ほど経って、シーナから報告が来ました。
『はれときどきぶた、届いたその日に読んでました。
面白かったけどルドルフのほうが好みだったそうです。
「かなり古い本なんだね、バーコードが無かった」と言っていて視点の多さにびっくり。
イーツは、本が届いた日からやたらあらゆる物を凍らせています(ばばばあちゃんのアイスパーティ)。
今日も、ぶとう、りんご、バナナ凍らせてました。
チョコレートもお花を水に浮かべて凍らせるなど、いろいろ実験しています』
『今日ガチャガチャコーナーいったらまさかの!
今も人気なのかな?」
(この稿、続く)


