明日は夏至。冬至・春分・秋分に比べて、
あまりにも地味な日。
しかし明日を境に、
さまざまなものが変化していくのだ、
という話。(写真:フォトAC)
【夏至と夏至日(げしび)の話】
現在、太陽は真東よりやや北側から昇り、真西よりやや北寄りの位置に沈んでいます。明日、その太陽が最北に近い位置から昇り、午前11時42分にこれ以上は行けないほどに北に寄って、今度は目に見えないほどわずかずつ南にずれながら、沈んでいきます。その2025年6月21日午前11時42分が、今年の天文学的な夏至です。天文学ではその瞬間だけを「夏至」と呼び、夏至の起こる日を夏至日(げしび)というのだそうです。ただしもちろん一般的な暦の夏至は明日21日で日中の時間が一番長くなる日として知られています。
整理すると、天文学的な夏至は明日2025年6月21日の午前11時42分、
一般的な暦での夏至は明日2025年6月21日だということになるのです。
【いちばん夜明けが早く、日没の遅い日ではない】
一年で一番日中の長い日なのに、一年で一番暑い日にならないのはなぜか、盛夏が一か月も遅れてくるのはなぜかという問題については今月の当初にお話ししました*1。
今日は、
「夏至は一年で一番日中の長い日だが、必ずしも太陽の昇る時刻が一番早く、太陽の沈む時刻が一番遅い日ではない」
ということについて確認しておきたいと思います、これまでも何回か書いた内容ですが、いちいちリンクをたどっていただくのは面倒なので、改めて記録しておきます。
それは日本の国土が北緯20~46度付近に存在するため、太陽の南中時刻(正午の時刻)が季節でズレるからです。これが赤道付近の国々だとずれが生じないため、(夏至)=(日中が一番長い日)=(日の出が一番早い日)=(日の入りが一番遅い日)ということになります。
では2025年の日本で日の出が一番早い日はいつかというと、東京の場合、6月9日の4時25分。日の入りが一番遅いのは、同じ東京で6月29日19時01分ということになるようです。つまり夏至の10日ほど前に朝が一番早い日があって、夏至の10日後に日の入りが一番遅い日が来ると思えておけば大雑把な見通しがつきます。
私は朝が早くて4時前に起きることもしばしばですが、きのう今日についていえば、もう4時と言えば外に出て仕事ができるほど明るくなっています。困ったことに午後は19時半近くになっても農作業ができますから、ほんとうに疲れ切ってしまいます。
子どもたちにしても、まだ明るいうちに公園を出て家に戻ったのに“遅すぎる”と叱られるのは今だけのことです。中学生だと“学校の部活が終わってから家に帰ったのにまだ明るい”というのは今だけのこと、12月の部活などは大急ぎで着替えをしても、学校を出る段階ですでに辺りは真っ暗ということもあります。ずいぶん違うものですね。
【これといった行事も食べ物もない日】
二至二分(夏至・冬至・春分・秋分)の中で、春分と秋分は昼と夜の長さが同じことから此岸(現世)にあって彼岸(黄泉の国)を思う日、冬至はこの日を境に日が長くなって待ちわびた春に向かう転換点ということでいずれも重視されるのに、夏至は「これを境に夜の支配が長引くようになってくる日」「太陽が衰退に向かう転換点」ということで、あまり重視されていません。実際のところ農繁期で、じっくり考えたり、何かをしている余裕がないということもあるのでしょう。
冬至だと「冬至かぼちゃ」だの「冬至がゆ」だの、あるいはゆず湯だのといった全国に通用する行事・習慣がありますが夏至にはこれといったものがありません。調べると「例えば、関西地方ではタコ、関東地方では新小麦の焼き餅、愛知県尾張地方ではいちじく田楽、福井県では焼き鯖、三重県ではみょうが、滋賀県では若鮎の塩焼き、京都府では水無月(和菓子)」(生成AI)などと出てきますが、どれもピンときません。
夏至から11日目を半夏生(はんげしょう)といって、田植えはこの日までに終わらせることとなっていたようです。ですからとにかく半夏生まで一生懸命働いてあとは休む。それまでは夏至も何もあったものではない、というのが本音だったようです。
とても影の薄い日ですから、せめて子どもたちには教えておいて、家庭で話題にできるといいですね。