カイト・カフェ

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「政権を担う気のない野党はいらない、世界を担う気のないアメリカは偉大じゃない」~総選挙と米大統領選、ふたつの選挙の憂鬱

 日本の衆議院議員選挙は二日後の10月27日、
 米大統領選挙は翌週の11月5日、
 いずれも気が重い話だ。
 日本には見たい顔がない、米国には見たくない顔がある、
という話。 (写真:フォトAC)

【憂鬱な2週間】

 日本の衆議院議員選挙(総選挙)は明後日の10月27日、米大統領選挙は翌週の11月5日、いずれも日曜日が投票日です。双方とも接戦が予想されていますが、総選挙は遅くとも28日未明には大勢が判明し、しかし大統領選挙の方はおそらくその日のうちの決着というのはなさそうです。予想外の大差となって得票の少なかった方が早々と敗北宣言をすれば別ですが、そもそも集計に時間のかかるシステムである上に数え直しが繰り返され、あるいは訴訟と言ったことになれば前回と同様に1月までもつれ込む可能性もあります。いずれにしろそう簡単に決まらない――やきもきする日々が続きます。

 もっともどう転んでも来年1月半ばにはアメリカ大統領も決まっているわけで、今のところ予想されているのは、将来の日米首脳会談が《石破=トランプ》間で行われるという何ともむさ苦しい光景です。何の花もない。それなのに何が起こるか分からない不安な会談になりそうです。石破さん、大丈夫でしょうか。

【できもしないことを言い続けた王様は裸にされた】

 今回の総選挙の、私が持つ石破総裁のイメージは「裸の王様」です。
 “十分な討議を経て内閣を知ってもらい、そのあとで衆議院を解散”という納得の話はもうとっくに反故になりましたが、夫婦別姓同性婚などに対する自民党の煮え切らない態度をスパッと切り、日米地位協定の見直しでアメリカと対等な関係を築くとともに、東アジア版NATOを創設してアメリカに対抗できる新たな機軸をつくるといった大胆な構想など、一部の人々を熱狂させた政策は急激にしぼんでいきます。
 (党内)野党として言いたい放題を言って人気を博してきた人が、政権をとったら自分の言葉に縛られて身動きが取れなくなる。そんな様子は15年前の民主党政権と一緒です。

 鳩山由紀夫氏は「(普天間の代替基地は)最低でも県外」とか「東アジア共同体構想」とか、大した目算もないのに政府を批判したいがために使った言葉がすべて自分に返って身動きが取れなくなり、菅直人氏も「官僚政治打破」「政治主導」と言い過ぎたために原発事故では実際に福島に行って陣頭指揮を執る羽目になりました。あの頃の民主党は、本気で政権を取る気持ちがあったのでしょうか?
 個人的な恨みとしては、後出しで「分かりにくくなった高速道路料金体系を整理し、利用者の利便をはかる」とか言って休日の「1000円走り放題」をやめてしまったことです。料金体系なんてどんなに複雑でもかまわないので安いままにしておいてくれればいいのに、余計なことをしてくれたものです。
 
 私は引き算の答えとして自民党を支持してきた消極的支持者です。消極的ですから頼れそうな政党が出てきたらいつでも鞍替えしていいのですが、
「消費税減らします、教育費や医療費は無償にします」
みたいな野党が目白押しですので、票の持って行き場がないのです。

【偉大な国を潰してしまった男の再登場】

 アメリカ大統領選挙についていえば接戦洲でドナルド・トランプが優勢だそうで、カマラは総得票数ではトランプを上回ったのに激戦州で勝てなかったために大統領になれなかったヒラリー・クリントンの二の舞になりそうです。
 別にカマラがいいとも思わないのですが、これも引き算の答えで、とりあえずトランプでなければ誰でもいいと思っているのです。あの下品な顔をこの先4年間も、毎日のように見せられるのはたまりません。カマラの高笑いの方がよほどましです。

 私がトランプのことを蛇蝎のごとく嫌うのは、トランプが私の大好きだったアメリカの幻影を、完全に打ち砕いてしまったからです。
 アメリカは公明正大な国です。正義の国でした。もちろん国家ですから汚いことも危険なことも山ほどしますが、表向きは違いました。昔のアメリカにはナマの欲望を覆い隠そうとするカッコウ付けの精神がありました。
アメリカ人と口げんかになって押し込まれそうになったら、とりあえず、『これはフェアじゃない(It’s unfair)』と叫んでみればいい、一旦は止まって考えてくれる。それがアメリカだ」
とそんなふうに教えられたことがあります。

 正義や公平のためなら相当なことも我慢できる――そのやせ我慢の姿がアメリカのカッコウ良さで、あの直情型短気人間ばかりのアメリカで、ジョン・ウェインクリント・イーストウッドチャールズ・ブロンソンリー・マービンも、みんなギリギリまで我慢して頑張ったのです。
 それに比べたらトランプなんてまるで子どもで、ハリー・ポッターアナキン・スカイウォーカーのように人のいうことをきかない上、すぐにカッなって全てを台無しにしてしまう危険極まりない人物と言えます。

アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」とか言っても、世界を守ろうとせず、欲望をむき出しにするアメリカなんて、「強大」であっても「偉大」であるはずがありません。

 いずれにしろ、日米で気分のよい結果の予想しにくいふたつの選挙。目前にして実に不愉快です。