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「副操縦士(Copilot)とのやり取り:私は騙されない」~生成AIと仲良くできるようになってきた話②

 AIのおかげで、長年ナゾだかった物語の題名を知った。
 しかしAIの情報はいちいち確認する必要がある。 
 絵も描かせてみたが思い通りにはならない。
 いずれも、最後の決め手は人間なのだ――
という話。
(写真:フォトAC)

【聞いた時の状況が何も思い出せない物語】

 印象深い話、心動かされた物語、あるいは使い勝手がよかったりたくさんの人に伝えたくなるような智恵、そういったものを手に入れたときの「いつ」「どこで」「誰から」といった周辺情報は何かしら残っているものです。ところが先週お話しした「ムカデのジレンマ」に関しては、まったく何も思い出せないのです。しかも20数年前に1度聞いたきりで、誰かが引用するのを、テレビでも書籍でも見たことがありません。生きることや生活することがままならなくなった状況を、誰かに説明するのにすごく的確で便利な寓話だと思うのですが、二度と遭わなかったのも不思議と言えば不思議です。遭わないので題名や作者について新しい情報が入ってくることもありませんでした。

 そこで「調べる人」は調査に入るのですが、昨日も申し上げた通り「あれなんて言ったっけ」といった感じで聞きたい「もの」「こと」「ひと」に関する知識を、従来の検索で調べるのはとても大変です。Google先生を相手に「ムカデのジレンマ」について、何十回となく「ムカデ 歩けない」とか「ムカデが歩けなくなる童話」とか「ムカデ 歩き方が分からない」とか、あれこれ言葉を変えて繰り返し調べたのですが、結局わからずじまいでした。本格的にムカデの歩き方について説明した生物学書、そんなものを読まされてはかないません。
 ところが、先週、歩き方の分からなくなったムカデの話を引用するにあたって、題名や出典に触れないまま書き始めようとして、ふと思いついたのです。
「そうだ、生成AIに訊いてみよう」

副操縦士(Copilot)は仕事が早い】

 訊くと言ってもChatGPTとは相性が悪いので、最近すこし親和的になっているMicrosoftのCopilot(コパイロット)*1に訊いてみることにしました。
『つぎの寓話の題名を調べてほしい。
「ある日ムカデが歩いていると、意地悪な動物が声をかける。
ムカデくん、ムカデくん、キミはそのたくさんの足を、どんな順番で動かして歩いているんだい? するとムカデは少し考えて、やがて考え込んで、ついに歩けなくなってしまったのです」
以上』
 Copilotは1秒足らずで応え始めます。
この寓話は「ムカデのジレンマ」として知られています。この話は、考えすぎることで自然にできていたことができなくなるという心理的な現象を表しています。
他にお手伝いできることがあれば教えてくださいね。

 そんないかにも心理学者が考えそうな題名だとは想像もしなかったのでびっくりしました。グリムやアンデルセンにあるような、普通の題名だと思ったのです。もしかしたら初めてその話を聞いた時に題名は告げられなかったのかもしれません。
 ただしAIの言うことですから信用なりません。少し眉にツバをつけながら、Copilotが紹介してくれたネット上のブログや記事を確認します。「ムカデの寓話」という名前で紹介しているページもありますが、どうやら「ムカデのジレンマ」が大勢のようです。これで長年の疑問の半分ほどが解けました。ただしどの資料を読んでも作者や出典に関する記載がありません。
 そこで改めに質問を続けます。これがチャット形式の良いところです。

副操縦士(Copilot)とのやり取り:私は騙されない】

私:「ムカデのジレンマ」の出典は何か調べてほしい。
(Copilot:webを使用しています 回答を生成しています… と表示されたあとで)
Copilot が送信しました:
「ムカデのジレンマ」(Centipede’s Dilemma)は、心理学や行動科学の分野でよく知られている概念です。(中略)この概念の出典は、1920年代にイギリスの心理学者ジョージ・ハンフリー(George Humphrey)が提唱したものです。彼はこのジレンマを使って、熟練した行動が意識的な思考によってどのように妨げられるかを説明しました。
何か他に知りたいことがあれば教えてくださいね。
 ここで満足してもよかったのですが、生成AIにはもう何十回も騙されてきているので素直になれません。そこで参考資料として提示されたサイトに行ってみると――、
ジョージ・マゴフィン・ハンフリー(英語:George Magoffin Humphrey、1890年3月8日 - 1970年1月20日)は、アメリカ合衆国の政治家、法律家、実業家。1953年1月から1957年5月まで財務長官を務めた。
 ほら見なさい。私が多少信頼するCopilotと言えどGPTの末裔、ウソもつけば愚かな間違いもします。そこで聞き直し――。  

私:知りたいのは財務長官のジョージ・ハンフリーではなく、心理学者のジョージ・ハンフリーです。
Copilot が送信しました:
申し訳ありませんでした。20世紀初頭に活躍したイギリスの心理学者ジョージ・ハンフリーは多くの分野で多大な貢献をしており、彼の研究は行動主義や認知心理学の発展に大きな影響を与えました。彼の著書や論文は、心理学の基礎的な理論や実験方法に関する重要な知見を提供しています。 
 説明が不十分のような気がしますが、細かな点は関連サイトを読めばいいだけですからさっそく調べに行ってみると、
イギリスの心理学者。2008年までロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授とニューヨークのニュースクールで非常勤教授を務めていた。ハンフリーは意識と超自然現象への信念に対するダーウィン主義的アプローチによる研究を行い、霊長類の研究によってマキャベリ的知性仮説の基盤を作った
 あれ? 何か違うな、と思って最初から読み直すと――、
「ニコラス・ケインズ・ハンフリー(Nicholas Keynes Humphrey、1943年3月27日 - )はイギリスの心理学者。2008年までロンドン――」
 あわや騙されるところでした。そこで再度、問い合わせ。

私:私が知りたいのは同じイギリスの心理学者ハンフリーでも、ニコラスの方ではなく、「ムカデのジレンマ」を提唱したジョージ・ハンフリーの方です。
Copilot が送信しました:
申し訳ありませんが、検索結果からは「ムカデのジレンマ」を提唱したイギリスの心理学者ジョージ・ハンフリーに関する具体的なWebページを見つけることができませんでした。
「ムカデのジレンマ」についての詳細な情報をお探しの場合、心理学の専門書や学術論文を参照することをお勧めします。また、図書館や大学のデータベースを利用すると、関連する文献を見つけやすいかもしれません。
他にお手伝いできることがあれば教えてくださいね。
 そこで諦めることにしました。これ以上追及しても埒があきません。これが生成AIとの、私の当面の付き合い方です。調査はAI任せても、確認と判断は私自身のところに置いて確実に実行しなくてはなりません。まだまだ安心できる状況ではないようです。

【絵も描かせてみた】

 ついでですが「ムカデのジレンマ」を題材に、ブログ内で使えるような絵を描いてもらうことにしました。
私:「ムカデのジレンマ」を主題とした絵を描いてほしい。
 描画は多少時間がかかるみたいで、数秒後、

 何か気味が悪いので、「もう少しアニメっぽく」と注文しなおすと――。

 今度は方向が違ってきたようなので、「もっとムカデをもっとかわいくして」と再注文すると――。
  

 思ったようなイメージにならないのですが、これ以上やり取りしても行きたい方向に行けそうにないので諦めました。AIとのやり取りは、どこかに諦念がないと今のところはやって行けないみたいです。

(この稿、続く)

*1:因みにMicrosoftの生成AI(Copilot《コパイロット》)は、いちばん簡単なところでMicrosoft社の提供するブラウザ「Microsoft Edge」の画面右上、青く短いリボンが風に舞っているようなアイコンをクリックすると無料で使えます。