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「日本は10年(20年)遅れているのだろうか」~「ゲーム・オブ・スローンズ」の性と暴力について

アマゾン・プライムで「ゲーム・オブ・スローンズ」を観はじめて、
忙しさでたいへんなことになっている。それはいいとしてこのドラマ、
とんでもなくおもしろいが、
さて、中における性と暴力の横溢をどう考えればいいのだろう。
という話。(写真:フォトAC)

【退屈な日につまらないことをした】

   三連休もあったのに(と”毎日が日曜日“の私が言うのも変ですが)、この半月あまり、実に忙しい日々を送っています。ほぼ毎日5時間以上テレビで映画鑑賞をしなくてはならなかったからです。

   ことの始まりはこうです。
 先月の末、雨続きで畑仕事もできない日が続いて、さらに見るべきテレビもなくなった私は、アマゾンのプライムビデオで面白そうな映画はないかとあれこれ探し始めたのです。レンタルはイヤなのでプライム会員特典で無料のものだけを見て回ったのですが、なかなかこれはというものがない。そこであまり興味はなかったのですが、中世ヨーロッパ騎士物語風の「ゲーム・オブ・スローンズ」という映画のタイトルをクリックしたのです。「シーズン1エピソード1」とあって、先が長くなりそうなので敬遠していたものです。
 ところがそれがいけなかった。

【「ゲーム・オブ・スローンズ」】

 知っている人に言わせれば「そりゃダメだろう(夢中になるに決まっている)」といったことなのかもしれませんが、とにかく面白い、幾人かの登場人物はとても魅力的で、物語の複雑さはむしろ集中力を高めます。
 あとで調べるとこのシリーズは、
「2018年現在、プライムタイム・エミー賞では通算で132賞にノミネートされそのうち47賞を受賞し、史上もっとも多くを獲得したドラマとなっている。特に2015年、2016年、2018年と三回にわたって作品賞ドラマシリーズ部門を受賞している」Wikipedia
ということです。
 日本では2016年からHuluで配信が開始され、2017年からはAmazonビデオでも配信されている、つまりこれまでもずっと見る機会はあったのに、なぜか私のアンテナに引っ掛からなかったのです。テレビドラマだからとバカにしていたのかもしれません。

【始めたばかりなのに締め切りが目の前】

 いま見始めたことは、ある意味で痛恨のできごとでした。というのはいよいよのめり込み始めた今月初め、いきなり(だと思う)画面に「Primeでの配信は14日以内に終了」と出て、リストの方でも「見放題が終了するTV番組」に名前が載せられるようになったのです。今月14日で無料ではなくなるのです。
 その時点で私が見終わっていたのはシーズン1のエピソード5程度。全編はシーズン8まであって1~6は1シーズン10話ずつ、シーズン7が7話、8が6話の全73話ですから68話も残っていることになります。2週間で観ようとすると1日およそ5話ずつ。約1時間の番組ですので毎日5時間見続けてようやく間に合う計算です。
 
 5年間も放っておいたものにギリギリで気づくのも私らしいし、有料になったら200円足らずでも払いたくないのも私らしい。――かくして「娯楽なのに必死に取り組む」という本末転倒が始まり、毎日5時間以上をこのドラマに費やすようになってしまったのです。そしてよく頑張ったので昨日までにシーズン8のエピソード2まで終了。あとわずか4時間、そうと思うともったいないような気持ちにもなります。良くやりました、しかし誉められた話でもありません。*1

アメリカの放送倫理はどうなっているのだ?】

 とりあえず今のところ感想など記すつもりはないのですが、ただアメリカ製のテレビドラマになじみのないない私にとって、とても首を傾げる側面があるのでその点だけ記録しておこうと思います。それはアメリカの放送倫理規定(というものがあればですが)は、どうなっているのかということです。

 とにかく残酷な殺戮場面が現実的で多すぎます。首を切り落とす、頭を縦に割るは序の口で、喉を掻き切る、生皮を剥ぐ、血しぶきが飛ぶ、内臓がはみ出る、と文字に書いているだけでも胸がワサワサするような場面が際限なく繰り返されるのです。
 また、性的な場面の制限も相当にゆるく、全裸の男女が絡み合う場面もやたら出てきますし、何より驚いたのは立小便をする男の姿を正面から撮影したカットもあったのです。私の見た日本語吹き替え版ではボカシが入っていましたが、アメリカ版ではそんなものはなかったでしょう。別に正面から映す必要はなく、そもそも立小便をする必要もない場面でしたからそれが平然と表現されるのは、むしろまったく無頓着だからかもしれません。私たちとは根本的な倫理観が違います。

【日本は10年(20年)遅れているのだろうか】

 日本のテレビは電波放送なのでどこの家にも侵入して誰でも見ることができる、それに対してアメリカは衛星放送やケーブルテレビが主流なので、比較的規制が緩やかなのだ、という話を聞いたことがあります。実際に「ゲーム・オブ・スローンズ」を配信したHBO(ホーム・ボックス・オフィス)はそうした企業です。
 しかし衛星放送であろうとケーブルテレビであろうと、親が見ることのできる番組は子どもも見られるはずです。画面の左上には「飲酒」「暴力」「肌の露出」といった注意書きがあり、「13+」といった年齢制限も表示されていますが、実際にそれを見て制限できるのは親だけでしょうし、それをしない親だって少なくないはずです。
 
 マスメディアやネットメディアを見たり聞いたりしているとよく「日本は10年(20年)遅れている」といった言葉に出会うことがあります。世界でもっとも発展した大国アメリカと比較して、性表現も暴力表現も10年~20年、遅れているとして、こうした表現の自由がやがて我が国にも訪れるとしたら、それはそれでかなりの恐怖です。
 中間選挙で妊娠中絶禁止法が大きな争点となる彼の国の様子を見ながら、私は「進んでいる」とか「遅れている」とかの価値がよく分からなくなってきました。

*1:あとで気づいたのですが、エピソード3以降は1時間20分ほどの番組になっているので4時間では済まない話でした