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「高齢者用健康スマートウォッチは人間を幸せにするのか」~高齢者:俺たちに明日はない④

スマートウォッチは、どうやら個別化されるべきものなのだ。
スポーツ用、デスクワーク中心の生活者用、そして高齢者用。
いずれも可能性は大きいが、
果たして人間はそれで幸せになるだろうか。
という話。(写真:フォトAC)

【お金を積めばできること】

 5万円~6万円の価格帯で迷ったが結局2680円のスマートウォッチを買って「けっこう使えるじゃないか」と感心したお話をしました。

 では本来買おうとしていた高価格帯のスマートウォッチだとどんな機能が加わるのか、ざっと見ていきたいと思います。

  1. スマホを取り出すことなく、スマートウォッチを通して通話ができる。
  2.  音声入力などでSNSなどの返信ができる。
  3.  音楽をストリーミングして聞くことができる。選曲や音量調整はスマートウォッチから行える。
  4.  電子マネーの利用ができる。
  5.  Suicaと連携すればかざすだけで改札を通ったり自動販売機を使ったりできる。
  6.  スマホのカメラを遠隔操作(盗撮用、じゃなくてたぶん記念撮影などで使える)。
  7.  水深50m以上の防水機能、高度な防塵機能。
  8. 電池が長持ちする(2週間以上)。
  9. 常時表示(ボタンを押さなくても表示が見える。もちろん日中の屋外でも)。
  10. 心電図アプリに対応。
  11. 高心拍数や低心拍数、不整脈の通知を出す。
  12. 持ち主の転倒や衝突を感知(感知してどうしてくれるのかは不明)。
  13. GPS機能がついている。ただしbluetoothスマホと繋ぐため、位置確認には使えない。
  14. その他。

 この中で1万円以上出してもいいと思える機能は8~12までです。私の場合スマホで音楽を聴くことはありませんし、頻繁に買い物をしたり電車を乗り継ぐということもありません。通話も、腕時計に向かってしゃべらなくてはならないほど忙しくもないからです。つまりフル規格のスマートウォッチは必要ないということです。

【スポーツマンに最適らしい】

 実はここまでに触れて来ませんでしたが、スマートウォッチは日常的にスポーツをやる人にとってものすごく便利な機器のようです。走った距離や消費カロリーの計測ができますし、私の安物でさえランニングやウォーキング、サイクリングやテニスと、スポーツの分析もできるからです(してもいないサイクリングの記録が出たり、結果はメチャクチャですが)。
 また、運動中の体温や脈拍・血圧・血中酸素濃度なども記録しますから、それを参考に運動の内容の検討などもできます。先ほどお話ししたGPS機能も、実は主としてランニングやウォーキングの経路を記録するものなのです。

 しかし“スポーツに最適”という部分だけに注目すると、メールやSNSの送受信あるいは電話の機能というのはなくても良いということになります。電子マネー決済だの改札通過だのはさらになくてもいい機能です。もちろん5万円~10万円という支出が苦にならない人はフル規格を買えばいいのであって、スポーツに関する機能だけでもかまわないというに人はもっと安価なものがあるのです。
 そしてそう考えていくと、私のような高齢者のために専用スマートウォッチというのも当然見えてきます。

【高齢者のためのスマートウォッチ】

 現在あるいは近い将来の私にとって必要なスマートウォッチとはどういうものか。
 
「時間を知ることができる」「心拍数や血圧、血中酸素濃度などを調べて異常があれば教えてくれる」「適度な運動ができているかどうかをチェックしてくれる」。
 当面必要なのはそういう機能です。だとしたらほぼ今の安物でいい。さらに「日中の屋外で時計の文字盤が読めること(現在の手持ちは読めない)」「血圧などの数値がもう少し正確に出ること」を求めるなら、もっと値の張るものに代えてもいいでしょう。モニターの性能や電池の容量に関わる「常時表示」を希望すると、だいぶ値が張るようです。

 将来に向けて必要な機能は――これはネット上でもしばしば話題になるのですが、スマートウォッチを装着したまま行方不明になった徘徊老人を家族のスマホで調べられる、そういう機能があればかなり便利です。現在の一般的なスマートウォッチはGPS付きと書かれていてもBluetoothで繋がる仕組みですから、遠く離れると人を捕捉できません。高齢者の徘徊対策となったら別の仕組みを考える必要があります。
 さらに言えば、心拍数や血圧・血中酸素濃度など、健康に関する数値を拾って異常があれば知らせる仕組みも大切でしょう。私に通知するだけでなく、例えば心停止の際は小型スピーカーで「心臓が止まっています。急いで心臓マッサージをしてください」と周囲に知らせ、同時に予め指定した家族の元にも緊急信号を送る、そういうものであれば完璧です。転倒や衝突に対しても対応できるとなお、いい。

 そう考えて改めて調べると、理想に近い製品はないわけではないのです(右の製品)。カメラまで組み込まれていて家族とビデオ通話もできます。ただし脈拍の計測などはできませんから健康管理という点では不十分です。それに見るからに重そう。
 今後さらに進む高齢化社会。需要は増え続けるに決まっていますから、この種のスマートウォッチはさらに進化することでしょう。

【高齢者用健康スマートウォッチは人間を幸せにするのか】

 さて、高齢者用健康スマートウォッチをつけて常に健康を管理し、行方不明になってもすぐに連れ戻される、高齢者にとって事故や危険の少ない社会・・・そう考えたとき、ふと思い出したのが2005年のアメリカ映画「アイランド」です。

 近未来、核に汚染された地球上にコロニーと呼ばれる閉ざされた空間があり、そこで人々は同じような服装で、同じように暮らしている。
 腕につけたデジタルブレスレットで24時間監視され、朝、目を覚ますと壁のモニターから女性の声で「おはようございます◯◯さん」「神経が乱れていますね」などと体調に関する注意が促される。ベッドから起き上がって用を足すと自動的に検査され、「ナトリウムが多いので今日から食事制限を」と再び音声が伝える。もちろん彼の食事はその日から薄味になる。
 
 コロニーで健康管理が徹底されているのは、実は核汚染という前提自体が欺瞞であって、住民全員は金持ちたちによって委託生産されたクローン人間だからです。支払い主の身体に万一のことがあれば、彼らは臓器を提供したり代理出産したりすることになります。そのための健康なのです。

 私の考えた高齢者用健康スマートウォッチ、それを通して病気や事故にいち早く対応し、徘徊してもすぐに戻され、つつがなく送る長い長い余生・・・そう考えるとまたITがどこまで人間を幸せにするか、疑問が浮かんできたりするのです。