カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「今日は夏至です」~体験すれば学べるというものではない

 今日は夏至
 信じがたいことだが、今日を境に日がだんだん短くなっていく。
 しかしそんなことも意識させないほどに夏至は地味だ。
 忘れやすい節気だが、学校では扱う価値がある。

という話。

(写真:フォトAC)


【2022年の夏至】 

 今日、6月21日は夏至です。
 天文のことなので毎年6月21日が夏至と決まっているわけではありませんが、2020年から2055年まではずっと6月21日だそうですので、大雑把な見通しとして6月21日と覚えておいてもよさそうです。
 ちなみに夏至は20日の年も22日の年も、23日の年もあるようです。

 1年の中で最も昼間の長い日(夜の短い日)として知られ、今日の日の出は東京で午前4時25分、日の入りは19時だそうです。日照時間は14時間35分になります。
 「狭い日本」とは言ってもそこそこ大きな国ですので、札幌の日の出は午前3時55分、福岡の日の入りが19時32分と、東京と比べてもかなり開きがあります。
 昼の時間が最も長いというと、日の出が早く日の入りも遅いように感じますが、日の出が最も早いのは夏至の一週間ほど前、日の入りが一番遅いのは夏至の一週間後あたりと、これも私たちの感覚とは異なっています。
 けれど最も感覚と合わないのは、6月の下旬に差しかかる今日を境に、だんだん日が短くなっていくということです。
 信じられませんよね。


夏至の行事と、日本ではそれが地味なわけ】

 ヨーロッパではイングランド南部のストーンヘンジで行われる夏至祭りが有名だとか。また夏の短いスウェーデンフィンランドでは、キリスト教以前の太古から盛大に祝うのが習わしだったようです。

 日本では伊勢の二見浦にある二見興玉(ふたみおきたま)神社の夏至祭りが有名だそうで、今朝も3時半ごろから祭祀が行われたはずです。
 二見浦では6月初めから7月初めにかけて、太陽は夫婦岩の間から昇ります。中でも6月10日~15日と6月28日~7月2日の期間(多少の誤差は生じる)は、遠く200キロも離れたところにある富士山の背後から陽が昇り、「王冠富士」と呼ばれるその姿を見るために、多くの観光客が集まるそうです。もっとも梅雨の時期にも重なるため、よほどの幸運でもない限りなかなか見ることはできないとも言われています。

 その他、静岡県では冬瓜(とうがん)、大阪付近ではタコを食べる習慣があるといいますが、何しろ「田植えは夏至から半夏生(はんげしょう:夏至から11日目の節気)までに済ませること」といった言い伝えのある農繁期。カボチャや粥を食べて柚子湯に入る冬至や、お墓参りの習慣のある春分秋分に比べ、扱われ方はずっと地味になって全国的な行事もないのです。


【体験すれば学べるというものでもない】

 学校教育ではよく「体験に勝るものはない」とか「子どもは体験から学ぶ」と言ったりしますが、ただ体験すればいいというものではありません。解釈されなければ身につきません。

 例えば教室にあるカーテン。子どもたちの目にはいつだって映っているはずですが、
「あのカーテンが役立つ季節はいつ?」
と訊くとたいていの子が戸惑います。春や秋の曇った日に質問するとさらに効果的で、多くの子が「夏」と答えるのです。日傘と同じ発想なのでしょうね。もちろん不正解です。

 あれは窓から日差しが入って、机の上の教科書やノートが見えにくくなるのを避けるためですから太陽の低い「冬」が正解なのですが、ボーっと生きていると大人でも間違えます。せっかくの夏至ですので給食を食べながら、窓に差し込む陽の浅さを確認するのもいいでしょう。