カイト・カフェ

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「目的集団と烏合の衆」~魔の11月をどうしのぐか①

「魔の11月」という言葉があるらしい。

学級崩壊を起こしやすい三つの月、6月・11月・2月のうちのひとつだとのこと。

しかしなぜこの月なのだろう。

そして崩壊を凌ぐ方法はないのだろうか。

という話。

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(写真:フォトAC)

 

【魔の11月】

 「魔の11月」という言葉があるそうです。学級崩壊を起こしやすい月らしいのですが、まったく知りませんでした。やはり現場にいないとダメですね。
 しかし11月がとても困った月だという自覚は、かなり早くからありました。学級崩壊との兼ね合いは気づきませんでしたが、不登校の指導の現場として、とてもやりにくかったのです。

 それまでは半年以上、さあ新年度だ気持ちを切り替えよう。1年生を迎える会だ、児童・生徒総会だ、巡回音楽があるぞ、観劇教室もあるぞ、小学生には陸上競技会があって中学校には部活の大会がある。旅行行事もあるぞ、それ!少し頑張れば夏休みだ、明けたら写生大会があるぞ、文化祭も近いぞ、運動会も待っている、音楽会も残ってる・・・と、ところが11月の声を聞くとパタッと吸引力のある行事がなくなってしまうのです。その上、4月から半年以上もがんばってきた子は、すっかり息切れしてしまいます。
 読書の秋だ学校に行こう、勉強が待っているぞ学校に行こう、などと言っても動けるものではありません。
 ですから11月以降はとても大変だったのです。

 

【実は魔の月は三つ】

 ついでに調べたら、「魔の~」と呼ばれる月は11月だけではありませんでした。6月と2月にも「魔」がつくようで、2月なんかカレンダーに×をつけているだけでも3学期終業式に逃げ込めそうなものを――と思うのですが、やはりそれはかなりいい加減になった年寄りの考えることで、若い担任にはやはり負担なのでしょう。うるさい舅・小姑みたいな先輩がたくさんいますから、ストレスもハンパではないというところなのでしょう。
 しかし考えて見てください。6月・11月・2月――どれも一年中でもっとも安定した、落ち着いた月のはずではありませんか。

 6月は有名な「のび太の嫌いな月」で丸一カ月祝日がありません。実は前後もけっこう祝日のない期間が長くて、5月は5日に子どもの日が終わると月の大部分は祝日のない日々で、7月は海の日(第三月曜日)になってようやく祝日です。しかもそのまま夏休みに入ってしまう学校もあります。したがって6月を挟んで丸2カ月以上祝日がないことになります。中休みができないのですね。

 11月は2回も祝日がありますが、この間、クラスをひとつにまとめて頑張るというような行事はひとつも残っていません。2月も同様です。
 そんなところから昔は「落ち着いて勉強のできる月」として6月・11月・2月は重宝がられていたのですが、いまやそれが学級崩壊を心配しなくてはならない月なのです。
 やはり子どもたちの鼻先には、常に行事というニンジンをぶら下げていなくてはならないのでしょうか。ストレス発散の機会を、あちこちに置いておかないと無理なのでしょうか。

 

【目的集団と烏合の衆】

 わざわざ鼻先にニンジンを置かなくても、学校には子どもたちが一年中頑張り続ける場があります。中学校の部活動です。これは分かりやすい世界で、参加してくる子のほとんどすべては選手になりたい、レギュラ-になりたい、なったらなったで大会で勝ちたい、ひとつでも上の大会に進みたいとみんなが思っています。
 部活の特徴のひとつはそれが最初から目的集団であって、個人の目標と集団の目標がほどよく調和していることにあります。よほど不的確な指導をしない限り、部活崩壊なんて起こりようがありません。

 ところが“学級”はその対極にあって、同年齢で同一地域に住んでいるという以外の何の統一性もない“烏合の衆”です。もちろん私立や国立などの特殊な小中学校は、大部分の子どもが(少なくとも保護者が)目的意識をひとつにしていますから、学級崩壊の可能性は極めてすくないと言えますが、その意味で、一般の公立は最初から崩壊へ向かう指向性があると言えるのです。

 各種行事への取り組みは、そんなバラバラになり易い“学級”を繰り返し目的集団に構成し直す行為だ、そう考えると分かりやすい気がします。
 そうなると“魔の月”にも学級崩壊を起こさないためには、学級独自の行事を置くか、行事の関係しない最低一年間は有効な目標を別につくり、それを不断に意識させるという方法が考えられます。
 そして気づくのは、
「そんな目標は最初からあるじゃないか」
ということです。

(この稿、続く)