カイト・カフェ

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「子どもをペストのネズミにしてはいけない」~今すぐ二学期を閉じよ、そして始めるな!

 いよいよ本格的に二学期が始まろうとしている。
 しかしそれでいいのか。
 新型コロナの感染状況は今やまったく違った局面だ。
 ここでは子どもたちが無自覚の親殺しになってしまう可能性がある。

という話。

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(写真:フォトAC)

【日本中の多くが今日から新学期】

 確認済みの話ではありませんが、全国的に見れば今日あたりが二学期始業式のピークのようです。
 夏休みの工作や給食袋などの日常使いを山ほど抱え、ふうふう言いながら登校してくる子どもたちの姿が目に浮かぶようです。いつもなら無関係な私までも浮き立つ光景ですが、今年の夏はそれでいいのか迷っています。

 昨日まで新型コロナ新規感染者は、全国で連続5日間2万人を越え、いまだに感染のピークが見えてきません。おまけにこれまでの新型コロナと違って、デルタ株は子どもにも感染しやすいことが知られており、校内感染が始まったら手が付けられない可能性があるからです。
 
 

ノロとの戦い、ピンポン感染】

 感染症の専門家と言えばもちろん医師です。しかし感染が広がる現場での防疫実務で言えば、難民キャンプや重大な感染地域で支援活動といった特別な場合を除けば、案外、小学校の先生あたりが特別な経験者ということになるのかもしれません。
 何しろ毎年のようにインフルエンザ対策に追われ、ロタ・ウイルスと取り組み、“ノロとの戦い”に明け暮れているのですから――。そしてほとんどの場合、完全勝利を収めたことがないのです。

 毎年、なぜか真っ先に感染者を出して学級閉鎖に追い込まれるクラスの担任は、
「ウチのクラスの子なんて、毎日手の皮がむけるほど手洗いをして、マスクも外さないんですよ。なのになぜ、ウチばかりが最初にかかるのかしら!」
と嘆きますが、こればかりは理由がわかりません。

 そうかと思うと校内数クラスに及ぶ学級閉鎖を経て、何とか封じ込めに成功したと思ったのもつかの間、二週間を経ずして再び感染が広がるという永遠の繰り返しみたいなのがあって、なぜかと思っていたら他校と合同のリトル・リーグで毎週末、子どもたちが同じ保護者の車で移動をしていたことがわかった、というようなこともありました。
 まるっきり性感染のようなもので、両方が一緒に治療を終えないとピンポン感染みたいになってしまうわけです。

 学校はこうしたことを何十年も前から繰り返してきました。終戦直後のシラミの移し合いから数えても70年近く解決できなかった問題を、いま完全に解決しろと言ってもできるはずがない。つまり学校が始まってしまったら新型コロナ、特に感染力の強いと言われるデルタ株の校内感染は、絶対に防ぎきれないということです。
 
 

【子どもをペストのネズミにしてはいけない】

 もっともそれがインフルエンザやノロウィルスのような感染症の場合はいいのです。なぜなら体力的に劣る子どもたちは感染するとすぐに症状が出る――インフルエンザなら風邪のような症状があって急激に熱が上がる、ノロやロタならすぐに嘔吐したり吐いたりする――それを見て、周囲や家族は対策をすればいいのですが、新型コロナは症状が出る前にウイルスが拡散し、多くの場合、子どもや若年者が無症状のまま終わってしまいます。
 まるで黒死病と呼ばれたペストにおけるネズミのように、子どもたちは元気に走り回り、嬉々として家庭にウイルスを持ち帰るわけです。そして家には、ワクチン未接種の40歳代・50歳代の親たちがいます。

 1年前もそうやって子どもが同居の親や高齢者にうつす可能性が取りざたされましたが、実際には子どもはかかりにくく、祖父母と同居の家も多くはありませんでしたから、心配されたようなことは起こりませんでした。
 しかしデルタ株は容易に子どももかかり、しかも重症化せず、大人が警戒する間もなく感染を広げてしまう可能性があります。感染を心配する対象者も今や高齢者から中年層へと移って、保護者が子どもからうつされる可能性について本気で考えなくてはならない状況です。同居する祖父母のいない家庭はあっても、両親ともにいない家庭というのは数多くありません。

 両親のいずれかが子どもから感染し、その一部が重症化し、さらに一部が不幸にして亡くなってしまう――今となればそれも大いにあり得る事態であって、家庭に新型コロナを持ち込んだ子どもは、今は因果関係がわからなくても、将来、自分が親を殺してしまった可能性について考えざるを得なくなるでしょう。それは避けなくてはいけない――。
 
 

【今すぐ二学期を閉じよ、そして始めるな】

 昨年春に安倍元総理が出した全国一斉の休校措置が空振りに終わり、その際たいへんな非難を受けたことが後の政策の遅れに繋がったと言われています。政府は及び腰になり、外国人の受け入れ制限や日本人の出国制限は時機を逸しました。新型コロナワクチンも国内での治験を経ずに接種するといった英断を下せず、形ばかりでもやっておかないと怖くて実施できないという有様です。
 そして今、市中感染がこれほど広がっても、子どもがかかると分かっていても、新学期の始まりを遅れさせることができないのです。

 しかし今回は昨年と異なり、一斉休校にしたところで先の見えない話ではありません。政府の言うことを信じれば、ワクチン接種が10月末には、希望する人のほぼ100%となり、状況は各段に良くなっているのです。つまり最大2か月の休校と相場が決まっています。
 さらに昨年と違って、今回は曲がりなりにもリモート学習の準備ができています。何を恐れて躊躇っているのでしょう?

 今すぐ二学期を閉じてください。まだのところは始めないでください。
 子どもを無自覚の親殺しにしてはいけないのです。今は分からなくても、いつかきっと知るところになります。