「校則はこうして変える(その1)」~東京都議会ツーブロック問題⑤


 池川東京都議は「校則は換えていける」とおっしゃった、
 それは間違いではない。しかし簡単なことではない。
 東京都の条例だって予算の枠組みだって、そう簡単には変えられないだろう。
 校則だって同じだ。変えるためにはそれなりの手続きが必要となる。
 それはこんなふうにやるのだ。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200728073546j:plain(「東京都議会1」 フォトAC より)

【ルールは換えられるが容易ではない】

 池川東京都議は3月の予算委員会で、都立高校の多くが髪型の規制をしており、特に大人社会では一般的なツーブロックが禁止されていることに異議を申し立てました。のちにこの質問の趣旨について、
「校則は変えていけると知っていただきたい。今あるルールを受け入れることが全てではなく、ルール変えていくこともできるのだと議論になればと思います」
とおっしゃっています。しかし校則を変えるのはそう簡単なことではありません。東京で条例を改正するのが大変なのと同じです。

 条例改正を試みるには、まずそれが価値のあることだ、必要なことだと証明する必要があります。その上で都民が納得できるもの、受け入れ可能なものであることもはっきりさせなくてはなりません。理念的あるいは論理的にどれほど価値のあるものであっても、都民が支持しないとできないでしょう。どれほど立派な提案であっても、議案として提出したとたんにそっぽを向かれるようではダメなのです。
 校則も同じです。
 
 

【作戦会議①――多数派工作】

 私が私でなく、もっと生徒寄りのいわゆる“理解ある教師”で、しかもツーブロック禁止を変えたがっている生徒に力を貸そうというなら、次のような手順で改正を試みると思います。

 まず当該の生徒を呼んで作戦会議をします。
「校則改正というのは容易ではない。まず、オマエたちの熱意が本物であることを確認したい。
 オレも職員会議で並みいる先生方を向こうに回して、ツーブロックを許可しても何の問題もないこと、オマエたち生徒が今まで通りきちんと生活すること、一般的なツーブロックの枠を越えてとんでもない髪型にする生徒は簡単には出て来ないことなどを、偉そうにブツ以上は途中でハシゴを外されても困る。
 あとで“こんなに面倒ならボクたち辞めます”と言い出すくらいなら、今のうちに引っ込めてほしい。どうだ?」

「第二に、これがごく一部の生徒の我儘な言い分だとなると絶対に通らない。例えば生徒総会にかける段になって、『ツーブロック許可に賛成の者は手を挙げて』とやったら全校の四分の一も挙がらなかった――そんなことになったら、オマエらも恥ずかしいと思うけどオレも立場がない。
 いいかい、この問題は少なくとも女子にはほとんど関係ないんだよ。野球部や卓球部の丸坊主の連中だって許可が出たところでツーブロックにするわけがない。つまり半分以上の生徒にとってはどうでもいい話だ。『賛成の者は手を挙げて』と訊ねても『反対の者は手を挙げて』と訊ねても、どっちみち少ししか手の挙がらないそういった性質のものなのだ。
 いやいや、だから諦めろと言っているのではない。説得しろということだ」

「ただそうなると全校生徒が相手だから大変だぞ。クラスの仲間は義理で賛成票を入れてくれるかもしれないが、他のクラスや低学年だとままならない。時間も手間もとんでもなくかかる。

 え? 他のクラスにも賛同する仲間がいるって?
 それはいいことだ。まずそいつらを糾合することだ。あ、しかしクラスの中である程度人望のあるヤツじゃないとだめだよ。オマエみたいに皆に好かれているヤツなら同級生も協力してくれるけど、教室の嫌われ者だったりバカにされているようなヤツだったりするとかえって逆効果だ。アイツの言うことなら絶対に賛成したくないなんて変な団結をされても困る。人気者でなくてもいいが、“まあ、コイツが真剣に頼んでくるのだから手を挙げるくらいはいいかな”と思えるくらいの、あるいはそれ以上の生徒でないと先がない。そのあたりの人選は丁寧にしてくれ」
 
 

【作戦会議②――大義が大事】

「そしてこれが一番大切なことだが、校則を変えるには大義がいる。“ボクがツーブロックにしたいから校則を変えてほしい”では話にならんだろう。ここは一番『表現の自由』と『自己決定・自己責任』の問題として扱っていく。
 簡単に言えば、もう高校生にもなって(中学生にもなって)きちんと自己判断・自己決定できるのに、髪のかたちまでとやかく言われるのはおかしい。これは“自分の在り方は自分で決める”という『表現の自由』の問題であり、責任は自分で取るという『自己責任の問題』なのだ。いつまでも子ども扱いでは困る、子ども扱いされている限りボクたちは大人になれない、責任を取らなくて済むのだから、とそういう趣旨でやるんだな。
 まず、仲間を募って、それを核として全校に呼びかけ、署名を集める、そこから始めてみよう。くれぐれも言っておくけど、大義が大事だよ。署名してくれと言えばたくさんの人が書いてくれるけど、いざというとき、例えば生徒総会の議決のとき、そんなハンパな賛同者は何の役にも立たないからね」
 
 

【教師は本丸を攻める】

 一方、私は私で職員の説得に当たらなくてはなりません。
 しかし池川議員もおっしゃっていますが、最終的に校則を決めるのは校長の権限です。職員会議も議決機関ではなく校長の諮問機関のようなものですから、本丸を抑えておかないとどんな努力も一瞬にして水泡に帰します。
 そこでいきなりトップの折伏、もしくはご意向伺いということになります。校長先生は受け入れてくれるでしょうか?

 ここはもう校長先生のお人柄次第というしかありません。だたし、たいていの教師は民主主義者ですしそのなれの果て(?)の校長先生も多くが民主主義者ですから、「とりあえず先生方の意見を聞いておいてくれ」といったところに落ち着きます。つまり職員会議の議題にしていいということです。

「私が私でなくもっと生徒寄りのいわゆる“理解ある教師”だったら」という前提で始まった話ですから、ここも都合良く、理解ある校長先生だったということにして話を進めましょう。
「そんなのダメに決まっているだろう」と一蹴してしまう(本来の私のような)校長先生は案外少ないのでムチャな設定ということにはなりません。

(この稿、続く)