カイト・カフェ

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「自分の子どもを東大か医学部に入れる(ほぼ)確実な方法」~佐藤ママとボーク重子さんの話

 優秀な子どもを育てた母親の持てはやされる昨今
 しかし私は疑問だ
 まったく違う育て方で
 同じように優秀な子が育つというところがわからない
 もっとも 答えは案外 簡単なのかもしれない
というお話。f:id:kite-cafe:20190916190604j:plain (オックスフォード クライストチャーチ 写真ACより)
 

 【秀才を育てた二人の母親】

 少し古い話ですが、先週のテレビバラエティ「さんま御殿」に佐藤ママこと佐藤亮子さんと、ボーク重子という女性が出ていました。

 佐藤亮子さんは4人のお子さん全員を東大医学部に進学させたことで有名な教育アドバイザーで、『3男1女東大理IIIの母 私は6歳までに子どもをこう育てました』など多くの著書があります。

 ボーク重子という方については今回初めて知ったのですが、2017年に一人娘のスカイさんが全米最優秀女子高生に選ばれたとかで、こちらも『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』『「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育』といった著書をお持ちで、講演会などでも引っ張りだこだそうです。

 ただ両者の考え方はまったく異なっており、番組の中でも佐藤さんが、
「小学校に上がるまでにはひらがなとカタカナを書けるようにして、掛け算九九くらいは覚えさせておきたい」
というのに対し、ボークさんは、
「小さなころからの勉強なんて必要ない。大切なのは非認知能力、パッション! そのためにもたくさん遊ばせ、経験させなさい」
といった調子です。

 両者の意見を聞いていたタレントのくわばたりえさんは、
「おっしゃっていることが正反対でどちらを信じたらいいでしょう。お二人とも子育てに成功していらっしゃるんだから・・・」
と困惑顔です。

 しかし答えはまったく簡単――両方正しい。

【親たちの学歴】

 佐藤ママとボークさん、ふたりはまったく異なっているように見えて、実はそっくりなところがたくさんあります。

 お子さんがとても優秀だったこと、子育ての成功者として多くの著書を持ち、講演会でも持てはやされていること(悪く言えば子どもの名声で食っていること)、この二点はすぐに了解できます。しかしもうひとつ重要な点があります。
 それは二人とも“夫婦揃って頭がいい”ということです。

 佐藤ママのご主人は東大卒の弁護士。ママご自身は津田塾大学英文科卒、高校は大分上野丘高校です。上野丘は作家の赤瀬川準や評論家の林房雄を輩出した大分県屈指の進学校で、タレントの宮崎美子さんも1年生まで在学していました(2年生に進学する際、父親の転勤で熊本高校に転出)。

 ボーク重子さんの学歴については不詳ですが、中学校時代福島県で5位以内の成績を取っていたと言いますからかなりのものです。最終学歴はロンドンの大学院で現代美術の修士号を獲得と紹介されています。
 ご主人のティムさんは、重子さんの話によれば、
「弁護士をやっていたのがイヤになって、外交官になって・・・」
ということで、現在は会社社長です。
 弁護士、外交官、企業経営、どれひとつとっても普通の人間には達成しがたい職業です。それを「飽きたから」で取り換えられるのですからただものではありません。

 つまり佐藤夫妻もボーク夫妻もメチャクチャ頭が良くて、その二人から生まれた子どもたちは当然頭がいい。
 頭がいいから就学前に九九を教えてもどんどん覚えて楽しいし、楽しいからさらに勉強してどんどん成績が上がっていく。
 一方、頭のいい子は勉強しなくたって平気。好きなだけ自由に、好きなだけ遊んで、時が来たらそこから頑張って十分に間に合う、それが頭のいい子の世界です。
 ですから佐藤ママの教育法もボーク重子さんの教育法も両方間違っていない、ただし頭のいい子が前提です。

くわばたりえさんたちがこれからできること】

 より良い高校からより有名な大学に進学させたいという気持ちが分からないわけではありません。ただし少なくとも東京大学や医学部と名のつく学部は、努力だけで入れるところではありません。とんでもなく優れた地頭(じあたま)が必要なのです。

 常識的な親は生まれてきた子どもを見て、この子をオリンピックのマラソン選手にしようとか、NBAのバスケットボール選手にしようとか、Jリーグのサッカー選手にしようとか考えません。考えるのはある程度運動に長けた親だけです。プロスポーツだのオリンピックだのといった話になると、本質的な運動能力が必要だとみんな知っているからです。

 しかし勉強に関してはなぜか“本質的な能力”のことは忘れられ、「がんばればなんとかなる」と思ってしまいます。
 そうではありません。カエルの子はカエル。身も蓋もない話ですが、ガマガエルに生まれるかアマガエルなのか、そのあと優秀なカエルに育つかダメなカエルのまま終わるかの違いはあっても、しょせん龍になることはないのです。

 しかしそれでも子どもを東大か医学部に進学させたいとなったらできることは何か。

 それにはまず今の夫を追い出して頭のいい夫に乗り換えることです。そして生まれた子が自分に似ないよう、ひたすら祈るだけ。
 ただしすべてがうまくいっても、それで子どもが幸せになるとは限りません。

 耳鼻科の医者になって一生他人の鼻の穴を見て暮らすより、私はさんま御殿の出演者になりたいと思いますね。もっとそちらの方がはるかに難しいかもしれませんが。