「『腐女子、うっかりゲイに告る』が残したもの」~ネタバレだらけ

 4月スタートのドラマが ここにきて続々と最終回を迎えた
 今回は特に心打たれる物語があり
 私は人生をもう一度考え直した
というお話。

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【4月スタートのドラマが終わる】

 4月スタートの連続ドラマのいくつかが最終回を迎えました。
 私は特にこの二か月間、さまざまに忙しかったためにテレビもきちんと見られなかったのですが、NHKのドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』と夜ドラ「腐女子、うっかりゲイに告る」、そしてフジテレビの「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」の三つだけはしっかり見ようと、VTRまで撮って最後まで見続けることができました。

 「ミストレス~」はイギリスでつくられ、その後アメリカ・ロシア・スロバキア・韓国でリメイクされたという鳴り物入りのドラマで、「ラジエーションハウス」は放射線技師が主人公という医療物としては今までない視点からのドラマ、そして「腐女子~」は主演の藤野涼子さんが女優としてかなり期待している人なのでと、それぞれ違った理由からの選択です。

 終わってみるとどれもなかなか良かったのですが、「ミストレス」は最後があっけなさ過ぎて、「ラジエーションハウス」は細部で脚本に納得できない部分があり、結局、中で一番良かったのは「腐女子、うっかりゲイに告る」だったかな、と感じています。

 【腐女子、うっかりゲイに告る】

 これは浅原ナオトという人の『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を原作とした物語で、ゲイをひた隠しに生きる18歳の高校生安藤純(金子大地)と同級生で腐女子ボーイズラブ《BL》と呼ばれる男性同士の恋愛を扱った小説やマンガを好む女性)の三浦紗枝(藤野涼子)を中心に、ある時はコメディ風に、ある時はシリアスに、高校生の性と恋愛と同性愛者の世界を描いた青春ドラマです。

 タイトルの通り、腐女子の紗枝は純が同性愛者だとは知らずに恋をして、“うっかり”告白してしまいます。本来なら断るべきなのに、純は「自分はいつでも普通になれる、みんなと同じように生きることができると自分に証明したい」という欲望に駆られてこれを受け入れてしまうのです。

 しかし純が同性愛者であることは紗枝の知るところとなり、さらにひょんなことから全校に知れ渡って、純は校内で孤立することになります。

 6月1日の第7回の放送は、終業式の表彰の場を借りて、紗枝が純の苦悩を全校に知らせる場面が中心となりました。そこで紗枝はこんなことを語るのです。

 【壁の向こう側で】

 彼はいつも自分の目の前に透明な壁をつくっています。壁の向こう側から私たちのことを見ている。
 でもそれは自分を守っているんじゃなくて、私たちを守っているのです。

“ぼくがここから出たら、君たちはきっと困ってしまう。(物理の授業で)摩擦をゼロにするように、空気抵抗を無視するように、ぼくをなかったことにしないと、世界を簡単にして解いている問題を解けなくなってしまう。だからぼくはこっち側でおとなしくしているよ”
 そう言ってるんです。

 彼は自分が嫌いで、私たちが好きなんです。
 でも私は、彼のことが本当に好きです。

 “ああ、その通りだ”と私は思います。
 それは私の良く知っている世界でしたが、言葉にされて初めて、しっかりと摑まえることのできたことです。

 人が障害や問題を隠そうとするのは、もちろん幼いころは恥ずかしいということもあるかもしれませんが、ある程度の年齢になると違う。その秘密が暴露されると相手の心が乱れてしまい、どう対応したらよいのか困ってしまう。それが誠実な人間であればあるほど悩みは深くなる、それを避けたいのだ。大切な人たちをそっとしておきたいのだ、だから壁のこちら側にいる。孤独でいる。

 私はそういう生き方があることを知っていましたし、ある時期までは私自身がそうでしたからよくわかるのです。しかし紗枝の言葉を聞いて初めて、その「分かること」は、意識の中にしっかり定着します。

 だからそうした人間のそばには誰かがいてやらなければならない。無理に壁から引き出すことはないが、彼の孤独に寄り添って、いつでも声をかけてやれるようにしなければならない――それが今の私に言えることです。
 私はそういう人間になりたい。

【もう一つの大切なこと】

 第7回の「腐女子~」にはもうひとつ重要なセリフがありました。
 それは言うべきことをすべて語った紗枝が、ステージ上で涙を流しながら立ち尽くしている姿を見て、純が心の中で叫ぶ言葉です。

 世界を簡単にする。
 たったひとつ、大事なことを残す。
 大好きな女の子が泣いているのだ。

 そうして純はステージに向かって走り出します。

 そうです。世の中は複雑で人の心は判断が難しい。しかしそれを簡単に解く方法がある。それは純が言う通り、「最も大事なことを残し、あとを捨てること」です。

 私の残りの人生は、自分自身がそれを生かすほどは長くはありませんが、人に伝えるには十分だと思います。
 世の中には自分で壁をつくって、みんなのためにひとり孤独に沈んでいくような人がいる、だから誰かが彼の傍らにいなくてはならない。
 世界は複雑かもしれないが、それを解くカギはある。それは大切なものを残し、あとは捨てることだ。
 その二つを。