「今日はドレミの誕生日」~ドラミちゃんの話じゃないよ

 今日は音階「ドレミ」の誕生日
 そこでドレミのウンチクと
 その周辺について語ろう

というお話。

f:id:kite-cafe:20190624071934j:plain(ローレンス・アルマ=タデマ 「サッポーとアルカイオス」)

 

【ドレミの誕生日】

 今日、6月23日は「ドレミの誕生日」だそうです。
「今日は何の日?? カレンダー」によると、
 イタリアの僧侶ギドーがドレミの音階を定める(1024)
とあります。
 
 ドレミについては30年近く前に「どういう意味か」と生徒に聞かれ、それなりに一生懸命調べたのですが手がかりさえ見つかりませんでした。
 書店に行っても図書館を訪ねても、音楽のコーナーは極端に狭く、「ドレミの意味は?」みたいな基本的なのに特殊な質問に、答えてくれる書物に出会えなかったのです。音楽の先生に訊いても、
「そんなの・・・意味あるの?」

 しかしネット時代はあっという間です。「ドレミの意味」で検索すると即座にとんでもない量のページがヒットします。
 私がネットで初めて「ドレミの意味」を調べたのはだいぶ前のことですが、昨年4月にNHKの「チコちゃんに叱られる」で扱われてからはかなり数のページが追加されたみたいで、さらに検索しやすくなっています。
 それらによると、

 

【ドレミの成り立ち】

 11世紀にいたるまで、西洋音楽は主として耳で覚え、次から次へと伝承するものであって楽譜に書かれることはなかったようです。長年、不便を感じる人も多かったのですが、誰も解決策を見つけることができませんでした。
 ところが1024年、イタリア人の僧侶グイード(ギドー)・ダレッツィオは200年以上歌い継がれてきた「聖ヨハネ賛歌」の中に、素晴らしい秘密を発見するのです。

 それは曲の各小節の最初の音が、今で言う「ドレミファソラ」に一致して一段ずつ高くなっているという事実です。
 その「聖ヨハネ賛歌」の歌詞は以下の通り(別に読めなくてけっこうです)。

Ut queant laxis 
Resonare fibris
Mira gestorum
Famuli tuorum
Solve polluti
Labii reatum
Sancte Johannes

 そこでグイードはそれぞれの小節の最初の音「Ut」「Re」「Mi」「Fa」「So」「La」で音階を表す方法にたどり着くのです。6音しかありませんが、当時は基本的に6音階の中で曲がまとめられていたので7番目の「シ」は必要なかったのです。実際「聖ヨハネ賛歌」の7行目「Sancte Johannes」は「シ」ではなく「ファ」の位置から始まっています。

 「シ」は16世紀になって音楽の幅が広がってから必要に迫られて作成されました。その際「聖ヨハネ賛歌」の7行目の「Sancte Johannes(サンクト・ヨハネ)」の頭文字「Sj」の異体字「Si」をあてて「シ」と発音させるようにしたと言います。
 またイタリア人には発音しにくい「Ut」に替えて、「主」を表す「Dominus」の最初の音「Do」をあてるようにしたともいいます。

 

【音名ハニホとツェー・デー・エー】

 私たちはまた、階名の「ドレミ」以外に、「ハニホヘトイロ」で表す“音名”についても勉強させられました。「ハ長調」とか「ト短調」とかいうアレです。
 「イロハ」が使われているところから明らかなように日本独自の表現ですが、では諸外国はどうしているのかというとアルファベットで表しているのです。

 高校生のころ、女子にモテたい軽薄な男の子たち(もちろん私を含む)はみんなギターに手を出し、「C(シー)で始めようか?」とか「E(イー)マイナーの曲っていいよね」とか言っていましたが、クラシックの素養があってバイオリンの弾ける子などは「ツェー」だとか「ハー」だとか訳の分からない音名を使って私たちを混乱させていました。しかしこれは彼らの方が正しい。

 日本の「ハニホヘトイロ」にあたる「CDEFGAB」は「ドイツ音名」と呼ばれるようにドイツが発祥の地で、したがってドイツ語で読まれるのが正しく、(たぶん)そちらの方がカッコウ良かった。ドイツ語では「C(ツェー)」「D(デー)」「E(エー)」「F(エフ)」「G(ゲー)」「A(アー)」「H(ハー)」となります。
 そういえば有名なバッハの「G線上のアリア」は「ゲーせんじょうのアリア」と発音するのが正しいようで、NHK・FMなどでそう発音しているのを聞いたことがあります。

 だからこう私たちはこう言うべきでした。
「C(ツェー)で始めようか?」「E(エー)モルの曲っていいよね」
 たぶん知っていてもやらなかったと思いますが。

 

【ドの音はどの音?】

 そうなると次に出てくる疑問は「なんで階名と音名のふたつが必要なの?」ということになりますが、これは「階名は可変」「音名は不変」で説明します。

 例えば、
「C(日本音名では『ハ』)の音を出してください」
と言われれば世界中の音楽家が一斉に「ハ長調のド」にあたる音を鳴らします(不変)。
 しかし「ドの音を出してください」と言われたら、それぞれが好き勝手な「ド」を出してくるかもしれません。

 たった今「ハ長調のド」と言ったように、「ト短調のド」とか「ヘ長調のド」とかは全部音が違うのです(可変)。つまり「ドの音を出してください」と言われると音楽家は「どの音?」と迷うことになるのです。

 もともとが歌詞の最初の音ですので「ドレミファ」階名は口で歌うのに便利、しかし音名の普遍性も捨てがたい――そこで両方が同時に使われるようになった、ということなのかもしれません。

 

【さらに深まる謎】

 ここまでくると次に出てくるのは当然、
「子どものころ『シャープもフラットもつかないのはハ長調イ短調』って教えられてこれが基本だと思うんだけど、どうして基本のハ長調ニ短調の『ドレミ』は『ハ(C)』から始まるの? 『イ(A)』から始まらないのはなぜ?」
という疑問ですが、これについてはさらに話が複雑になるので機会があれば改めて考えたいと思います。