(アルフレッド・ギユ「さらば!」)
この記事を書いている現在(30日21時30分)は台風が紀伊半島に上陸したばかりですが、大きな被害を及ぼすことなく、一刻も早く遠くに去ってほしいものです。
今回の台風24号に際してはこれまでなかった対応がいくつも見られました。関西空港は早やばやと閉鎖し、首都圏JR在来線は青空の下であるにもかかわらず午後8時以降の運転取りやめを発表してしました。新幹線はそれ以前に運転を停止しています。
日曜日ということもあって各駅それで混乱があった様子は見られません。仕事のあった企業も可能なところは時間短縮で社員を帰宅させ、ディズニーリゾートなどでも鉄道の利用者は滞在を切り上げて帰宅を急いだみたいです。
日本全国で開設されている避難所にも、続々とひとが集まっています。
もちろんこうした異常に速い対応と混乱のなさは、ここのところ続いた自然災害が背景としてあります。
台風21号の際の関西空港の惨状を思い出せば、今回早やばやと閉鎖を決めたことに不満を持つ人は少ないでしょう。首都圏の運転見合わせも新幹線の停止も、そして各地における避難所の開設も、おそらく今回もほとんどが空振りになるはずですが、それで文句を言う人はいないと思います。私たちは懲りているからです。
何回むだ足になっても万全の対応を取っておくことには意味がある――それが今年学んだ大いなる教訓です。
そしてこれほどまでの大規模かつ迅速な対応が一度でもできたということは、今後に良き前例となることは間違いありません。
これからは大型の台風が近づきつつあるとなれば、少なくとも関西空港はためらうことなく閉鎖し、進路に関東地方があればJR在来線はすべて運転停止になる可能性が高いのです。
そしてそれが常識となれば官公庁や企業の対応も違ってきます。前もって分かっているのですからできることも少なくありません。可能なところ前日までに休業を決めてしまうでしょうし、できないところでも「いざとなれば業務を切り上げます」と取引先に予告することができます。旅行客がキャンセルした分、ホテルも押さえやすくなるでしょう。企業同士、お互いに了解しているだけでも済むこともたくさんあります。
忘れてはならないのはそうしたことがすべて、尊い犠牲の上に成り立っているということです。多くの人たちの死や困苦が、早めで過剰な準備の必要性を訴え、実現しているのです。
この国で生きて行く以上、自然の猛威に曝されるのは当然のこととして引き受けざるを得ません。しかし犠牲を最小に留めることは可能です。
多くの人々の命と引き換えに手に入れた災害対応の知恵、ぜひとも無駄にしたくないものです。