「1年の四分の一は勉強のできない国」〜何とかならないか、夏の授業

(ジョセフ・ライト「ナポリ湾の島々が見えるヴェスヴィオ火山の噴火」)

【空調の偏り】

 灼熱の三連休は終わりましたが暑さだけはこのまま続き、天気予報は「7月末には多少和らぐでしょう」などとふざけたことを言っています(7月末は普通、暑さの本格的になる時期です)。もちろん天気予報に罪があるわではなく、予報官に八つ当たりしても仕方のないのも事実ですが、それにしても暑い。

 おまけに日本の公立学校の冷房普及率はわずか41・7%(普通教室)。しかも都道府県でまったく事情が異なり、北海道の0・3%から東京都の99・9%まで、千差万別でこれを同様に語ることはできません。

「北海道なんか涼しいんだから冷房なんてなくてもいいじゃない」

とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、しかし北海道とて暑いときは暑い。暑さ慣れしていない分、少々の暑さでもダウンしてしまうのが北海道です。無碍に「必要ないだろう」などと言ってはいけません。

 それに、奈良県なんて逆にそこそこ暑そうですが、それでも冷房の普及率はわずか7・4%、高知県長崎県などは暑いに決まっていますがたった19・0%、8・6%です。(H29文科省「公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果について」

 要するに都道府県の考え方と財力の問題なのです。

【気合いだ! 気合いだ! 気合いか?】

 「蛍の光、窓の雪」とは言っても「灼熱の夏、厳寒の冬」というフレーズがないのは、古来、暑さ寒さは勉強しない理由にはならないからだ、この程度の暑さが何だ! 

「心頭を滅却すれば火もまた涼し」というではないか。火でも涼しいんだから夏の太陽くらい何とでもなる、勉強というのはもともと艱難辛苦を得て行うべきものだ――ということであれば当然冷房なんて入りません。

 逆に「子どもの健康を守ろう。少しでも良い環境で勉強させたい」となれば普及率は上がります。

 それにしても同じ日本国内で333倍の格差というのはいかがなものでしょう。

 私の県は “圧倒的に普及率の低い県”のひとつなので、かつての同輩や後輩、そして児童生徒諸君の、ご苦労やいかにと、心から同情するとともに心配しています。

【1年の四分の一は勉強のできない国】

 ところで、私自身はもう半世紀近く前、入学したばかりの大学で先生から、

「日本の、特に東京の夏は異常だ。12カ月しかない1年の中で7月・8月・9月と丸3カ月も暑くて勉強できない。だから諸君、テレビなんてくだらないものを買うならクーラーを買いなさい。クーラーの涼しい風の中で、1年の四分の一を無駄にすることなく、勉強に邁進したまえ!」

とか言われたのを真に受けて、当時テレビの4〜5倍はしたエアコンを買って快適な夏を送ったような人間です(勉強はしなかったけど)。暑さに対してはまるで根性がありません。

 ですから教員になって夏場、冷房のない教室で授業をするのはほんとうに苦痛で、目の前がふわふわと陽炎のように揺らめくことしばしばでした。何しろ教室というところ、37度の熱源が40個もあって、もうもうと湯気を立てているような場所なのです。

 もっともこちらは立って授業を進めている分、やや有利。気の毒なのは子どもたちで、私の授業が体育の水泳のあとだったりするともうだめ。必死に持ち上げている瞼の裏の方に、黒目が上がって隠れよう隠れようと必死にもがいている感じで、ずいぶん不気味な顔つきの生徒が何人もいました。あれなどももっと涼しい環境だったら、少しぐらいはマシな表情になっていたのかもしれません。

 夏休みを減らして授業時数を増やしていこうとする昨今、だとしたらまず空調を入れ、環境を作った上で授業を進めるようにしていただきたいものです。

 でないと子どもたちは、授業時数ばかり増えて知能はまったく高まっていないということになりかねません。