カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「色にいろいろある」〜青と緑のウンチク

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【決戦の朝】

 ブログ記事はいつも前日に書いて深夜の予約投稿にし、私自身は10時半に寝てしまいますので、今朝のビッグイベント、ワールドカップ、日本対セネガルについてはまだ結果を知らない状態です。
 簡単に勝たせてくれる相手ではないでしょうね。

 ポーランド戦などを見てるとセネガルの選手の足の速さは別格で、2点目を取ったニヤンなど、ボールを奪われたポーランド選手の目には “突然、目の前に現れた”といった感じだったかもしれません。テレビで見ていた私たちでさえもそうでしたから。
 あとからVTRで見るとニヤンはエンドラインの外から入ってきたのであって、ちょっとズルいような気もしないではありませんが、それでもポーランド選手の不注意は否めないでしょう。どうしてあそこまで迂闊でいられたのか――。
 もしかしたらフィールドの緑に同じ緑のユニフォームが溶け込んでいたのかもしれません。肌が目立たない黒でしかもあの速さですから、よほど注意していないと見失ってしまう、そんなこともあるのかもしれないと本気で思っていました。

【青信号はなぜ緑?】

 ところで色繋がりの話なのですが、先週の金曜日のNHKチコちゃんに叱られる」では「青信号はなぜ緑色?」という問題を扱っていました。

 私は『日本では「青」と「緑」の区別が非常に曖昧だから』という答えを知っていたのでさっそく近くにいた妻にウンチクを垂れ、すぐにも分かる例をいくつか挙げようとしたのですが、呆れたことに何も浮かんで来ない――。たぶん五つや六つは覚えていたはずなのですがまるで出てこないのです。
 典型的な老人性物忘れ。思い出そうとアワアワしている私の目の中で、妻の尊敬の表情はどんどん軽蔑に変わっていきました。

 あとで番組で紹介されたものは「青菜」「青虫」「青りんご」「青のり」「青汁」等々、いくらでもあります。いずれも「青」と表現されているのに実態は緑色、それなのに平気で「青」を使っています。「青虫」などは言われて初めて「緑だった」と気づくくらいです。
 調べると他にも「青葉」「青野菜」「青田」「青蛙」・・・。
 
 青と緑が区別されなかったことについて番組は「日本にはもともと“色”は白・黒・赤・青しかなく、後にそこから緑が派生した」といったを説明していました。万葉集のころには植物の葉の色はすべて「青」で表現され、10世紀初頭にようやく「みずみずしい」を語源とする「緑」が現れ、平安末期から鎌倉時代にかけてようやく定着したというのです。
 一応納得します。
 しかし一方で、私たちは色に関してものすごく繊細で多様な「色の和名」というものがあることも知っているのです。色彩に対するいい加減さと繊細さ、それはどう整合するのでしょうか。

【色の和名】

 「和色大辞典」などを見ると、無彩色である白と黒の間だけでもなんと29色もあります。「乳白色」のほか「銀鼠(ぎんねず)」「鼠(ねずみ)色」「灰色」「鉛色」「鈍色(にびいろ)」などはきっと一再ならず聞いたことがあるでしょう。
 全465色、彩色の方も見ると「薄紅色」「朽葉(くちは)色」「撫子色」「柿色」「亜麻色」「瑠璃紺(るりこん)」・・・読んでいるだけで楽しくなります。

 特に私が好きなのは「萌黄色」。「黄」という漢字が入るので「黄色」の仲間かと思うとそうではなく、もともと“萌えいずる葱(ネギ)の色”、つまり「萌葱色」と書いて黄緑系統の暖色を表しています。「ライムグリーン」に近い色です。
 『平家物語』には平敦盛那須与一が萌黄や萌葱匂い(萌葱色のグラデーション)の鎧を着て活躍する場面が描かれているそうですから、緑が青から離れた瞬間(平安末期から鎌倉はじめ)、色彩が一気に分化していった様子がうかがえます。
 江戸時代になるとさらに別種の「萌黄色」も現れてこちらの方は緑系の色、その近くの「浅黄色」となるとむしろ青に近くなるから複雑です。

 かつてあんなに鈍かった色彩に関する意識が、鎌倉時代になって急速に高まったのはなぜか――。織物が関係するようにも思いますが、分からないので改めて勉強しようと思いました。

【半分、青い】

 ところで「青」や「緑」は若々しさや未成熟を表す言葉としてもよく使われます。
 春の初々しさの表現は「青春」、しかし実力がないのは「青二才」。「尻が青い」というのは「青色」の持つ若々しいイメージとは無関係で、「モンゴル斑が消えていない」という意味でしょうか――。

 「青々とした緑」と言えば葉の一斉に出始めたころの様子を言いますし、そのそも「青葉」というのは「若葉」と同じ意味で「新緑」を表すことが多いように思います。
 「緑の黒髪」と言えば「みずみずしい美しい髪」のこと。
 「赤ちゃん」はおそらく生まれてきたときの様子や湯あみをさせるとすぐに真っ赤になるところからそう言われると思いますが、幼子は同時に「嬰児(みどりご)」とも呼ばれたりします。「みずみずしい子ども」という意味でしょう。赤と緑は反対色なのに何の抵抗もなく併存するところが不思議です。

 「緑のおばさん」と言えば最近さっぱり姿を見なくなった学童擁護員。「緑のたぬき」はマルちゃんのカップソバ。小池都知事は選挙の時にさかんに「緑」を振り回しましたが、「緑のおばさん」とも「緑のたぬき」とも関係なかったみたいです。もちろん今検討している「みずみずしい」という意味の「緑」とも関係ありません。

 いずれにしろアフリカの「緑の軍団」、今日はどうなったのでしょうね。

*(追記)引き分けでした。f:id:kite-cafe:20211127091905g:plain
  セネガルはユニフォームが白だったので不利だったかな?