カイト・カフェ

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「桜、桜」2 〜サクラ咲く、おとりのサクラ、桜色

 昨日の続きの「桜」ウンチクです。

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【サクラ サク】

 おそらく一定の年齢以上でないと分からない、すでに死語です。
 今では大学入試の合格発表もネット上で見られるようになりましたが、かつては発表の日に直接大学に赴くか入学書類の到着を待つしか方法がありませんでした。都会の人はそれでもいいでしょうが、田舎の人間にはたまったものではありません。受験のたびに前泊で出かけ、合格発表のたびに出かけるのでは、金もかかりますが体力的にも大変です。かといっていつ着くか分からない書類を待っていたのでは、受けなくて済む大学まで受験しなくてはなりません。そこで自然と合格電報という方法が生まれたのです。

 たいていはその大学の学生によるアルバイトなのですが、試験日に受験者から費用と受験番号、電話番号を受け取り発表の当日に確認して知らせてやる、という仕事なのです。
 電報は(これももはや説明が必要だな)電文の字数で値段が決まりましたから、できるだけ少ない文字で送った方がいい。しかも「オチタ」だけでは切ないですから、合格の場合は「サクラサク」、不合格の場合は「サクラチル」とするのが一般的だったようです(「サクラサク」の方はもらったことがないのでわかりません)。

 しかし今思うと、そんな学生アルバイトをよく信用したものです。金だけ取ってしまうニセ学生だっていたかもしれませんし、見間違いということだってあり得ます。
 それにも関わらず使っていたわけですから、おおらかな時代だったと言えます。

【サクラ(おとり)】

 死語の「サクラ」と言えば、店に雇われる偽物の客を「サクラ」と言いましたが、これも今はいそうにありません。
 イメージで言うとテレビショッピングで「ワー凄い!」「これ絶対欲しい!」と騒いでいる元タレント、というか「今でもタレント」が一般客の中に混じっているといった感じです。もちろん一般人に見せかけて場を盛り上げ、販売を促進しようとします。
「私、それ三つちょうだい! あら、あと二個しか残らないの? 残念ねえ」

 もともとは歌舞伎や芝居小屋で、無料で見せてもらう代わりに見せ場で掛け声をかけたりして座を盛り上げる仕事で、花見は無料、ぱっと派手に咲く、と言ったところから来た隠語だと言います。しかし店頭販売や街頭販売の少なくなった今日、目に見える姿での職業としては成り立たなくなっているようです。ただし口コミサイトやネット通販で販売店に対して異常に有利なコメントを書き込む怪しい人はたくさんいるわけで、概念としてはこの人たちも「サクラ」には違いありありません。
 もしかしたら今でのこの人たちのことを「サクラ」と言ったりするのでしょうか?

【その他のサクラ】

 桜と名のつく植物でも「芝桜」や「秋桜」は桜ではありません。ともに淡いピンクの花をつけますが、大きさは全く違います。また「秋桜」を見てすぐに「コスモス」と読めるのは山口百恵世代だけかもしれません。
 ついでですが「桜桃」をぱっと「サクランボ」と読める人も一般的ではありません。「桜桃」は「おうとう」と読みますが、「さくらもも」→「さくらんも」→「さくらんぼ」となったのでしょうね。

 かつてコニカ株式会社(コニカミノルタの前身)が出していたカラーフィルムは「サクラカラー」の名で愛されました。サクラクレパス株式会社の「サクラクレヨン」は現在も小学生の定番です。入学式の必需品と言えます。桜の花の微妙な色合いが、カラーフィルムやクレヨンのイメージによくあったのでしょう。

 「桜色」と言えば薄いピンクのことですが、赤の食材にその名がつけられることがあります。サクラエビサクラマスがそれですが、ともにピンクとはいいがたい色の濃さです。さらに馬肉を桜肉と呼ぶのは、色合いあまりにも違いすぎてピンときません。むしろ「蹴飛ばし」と呼ぶ方がピンときます。

 馬肉の話をした後では言いにくいのですが、三歳のサラブレッド系牝馬(ひんば:メス馬)の重賞レース「桜花賞」は今週末の日曜日開催です。

 同じスポーツ繋がりで、今回調べていて初めて知ったのですが、Jリーグセレッソ大阪」のセレッソスペイン語で桜のことだそうです。桜は大阪市の市木なのです。