カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「男の子ってヘビ、好きだよね」〜毒蛇はどこじゃ?

 兵庫県伊丹市で小学校5年生の男児がヘビに噛まれ、一時期意識不明になったというニュースがありました。
 朝日新聞「男児かんだヤマカガシ?強い毒性 死に至る恐れも」2017年7月30日)によると「ヘビは一緒に遊んでいた友人らが捕まえてリュックサックに入れていたが」ということで、おそらく理解できな人は理解できないと思うのですが(私もホントは理解できない)、一部の男の子はホントにヘビが好きで困ったものです。

【ボクの大好きな生ごみ

 思い出すのは教員になったばかりのころ、当時赴任していた中学校で行われた「地域清掃ボランティア」です。地域清掃といっても単に町をあるいてゴミを拾うだけなのですが、その最中一人の男の子が近づいてきてこう言うのです。
「せんせー! 生ごみも拾ってきていいですかぁ?」
 そしてビニル袋を振り回すので何かと思ったらヘビが入っていました。“生”には違いありませんが“ごみ”かどうか・・・。
 要するに人に見せて、相手が嫌がるのがとてもいいらしいのです。
 私が嫌な顔をして「捨ててこい」と言うとう、「うふふ」と笑いながらまた別の餌食(驚かすための相手)を探してどこかへ行ってしまいました。

 もっとも男の子がヘビを好むのは単に人を驚かすというだけでなく、男らしさを誇示したいという子もいればさらに単純に“滅多に出会えないものに出会えてうれしい”というだけの子もいます。ニュースになった伊丹市の5年生――特にリュックに入れて保管していた子など、その最後の典型的なタイプなのかもしれません。

【毒蛇はどこじゃ?】(←大昔のテレビCMのセリフ)

 私自身はヘビなんてちっとも好きではないのですが、あるとき、必死にヘビを探し捕まえたことがあります。小学校で担任をしていて、クラスの子が噛まれたときです。
 3年生の男の子で、休み時間に校舎のテラスで20cmほどのヘビを見つけ、捕まえてしっぽを持ちグルグル振り回していたら、ヘビが首を反転させて手首に噛みついたというのです。
 私は室内で児童の日記を読んでいたのですぐに気がついて保健室へ連れて行ったのですが、養護教諭の第一声が、
「救急車を呼びましょう。先生! そのヘビを捕まえてきて!」
「え?!」

 それでヘビを捕まえに行くハメになったのです。好きでもない、というか基本的には見るのも嫌なヘビを、です。

 無知だったのですが、ヘビに噛まれたとき、一番最初にやらなくてはならないことは当のヘビを捕まえることなのです。ヘビの種類が分からないとそれが毒なのか、毒だとして何の血清を打てばいいのか分からないからです。
 特に海外の場合、それが決定的な生死の分かれ目になることがあるのだそうです。

 幸い、児童が噛まれた瞬間に私は近くにいましたのでヘビを目撃しており(なのに捕獲しなかった)、逃げた方向も見ていましたので一緒に探してくれた同僚にも詳しく説明することができました。
 またさらに幸いなことに捜索の結果、先にその同僚が発見・捕獲してくれたので私はビニル袋に入った「生ごみ」をもって病院に駆けつけるだけで済みました(それもすごく嫌だったけど)。
 ただし残念なことに、その「生ごみ」はまだ子どもでマムシかどうか判定できなかったようです。 「マムシらしいが違うかもしれない、そのうえ子どもヘビだ(だから毒はないかもしれない《?》)」 ということで血清は取り寄せたものの使うことはなく、一晩病院で様子を見て翌日には元気で家に帰ってきました。

「毒を持ったものもいるので、ヘビは見つけてもやたら捕まえてはいけません。遊び相手にしてもいけません。そもそも生き物のしっぽを持って振り回すのはイジメです!」
 翌日の私の学級指導ですが、内心、(だから田舎は嫌なんだ!!)とか思ったりしていました。

【三種の蛇器】

 そのとき調べたのですが日本には毒ヘビは三種類しか生息しておらず、沖縄のハブを別とすれば本土にはマムシとヤマカガシくらいしかいないようなのです。

 マムシは生息数も多く、ハブのほど好戦的ではありませんがその三倍の猛毒を持ち、毎年死亡例があるような危険なヘビです。気がつかずにうっかり踏みつけて逆に噛まれたりするのはたいていがマムシです。
 今回ニュースになったヤマカガシは毒性も低く(かといって死亡例がないわけではない)、臆病な性質で人間から攻撃されない限り噛むことはないみたいです。
 ただし被害例が少ないというのは困った面もあって、事例がないので血清を置いてある病院もほとんどないのです。以前調べたときには「全国に三か所しかない」ということだったと思うのですが、今回ネットで調べ直したら「ジャパンスネークセンター(群馬県太田市)に置いてあるだけ」という記述がたくさんあって、どうやらここに連絡して空輸してもらうのが一番確実な方法のようです。
 またヤマカガシは個体差もものすごくあって、赤い斑点のあるものからアオダイショウにそっくりなものまで千差万別。したがって噛まれても、無害なヘビと勘違いすることが少なくないみたいです。

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 やはり「噛まれたら、まず最初にすることに一つは当のヘビを捕まえること」のようです。
 私はもう真っ平ですが。

 *写真は「ヤマカガシ−危険生物 MANIAX」からお借りしました。

*8月1日追記
 今朝のニュースで「ヤマカガシの毒はマムシの4倍」とか言っていたので慌てて調べ直したらやはり「マムシの3〜4倍の毒性で国内最強」だそうです。  訂正し、お詫びいたします
(しかしとんでもないところで間違いを犯してしまった・・・)