カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「それですべての子どもたちが幸せなわけではない」~超売り手市場の狭間で①

 トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言したことについてはアメリカ産業界からも危惧する声が出ていて、そのひとつは「省エネ産業の発展は80万人の雇用を生み出す可能性がある(それを見逃す手はない)」というものです。現在合衆国で石炭採掘に従事する労働者は5.5万人、製鉄業の従事者は13.5万人、合わせて19万人の雇用を守るために80万人を手放すのは合理的ではないという議論です。

 ただし(トランプさんの肩を持つわけではないのですが)だからといって採炭・鉄鋼業従事者がすんなりと省エネ産業に移行できるわけではありません。わずかな投資でソーラーパネル生産の技術者に再教育できるという話もありますが、19万人を吸収できる規模はないでしょう。
 大統領は「私はパリ市民でなく、ピッツバーグ市民を代表して大統領に選ばれた」と言い(本当は鉄鋼の街ピッツバーグ有権者の7割はクリントンに投票したらしい)19万人を守るべく戦いを始めたわけですが、彼の政策を実直に推し進めると、アメリカの産業構造は20世紀中盤まで戻らざるを得なくなるわけで、それで"Make America Great Again"が実現するとはとても思えません。しかし今しばらく、様子を見て見ましょう。

 さて、翻って日本。

【超人手不足の時代】

 先月の末、仲間と飲み会の席を持ったという話を書きました。

kite-cafe.hatenablog.com 私が幹事で出欠を確認して店の予約をしなくてはならなかったのですが、実はちょっとしたトラブルがありました。予約を入れようとしたいつもの店に、何度電話をかけても繋がらなかったのです。携帯の登録からかけているので番号違いはないはずです。電話口で何回もコールしてますから電話そのものがなくなったという感じでもありません。
 時間を変え日を変えて10回近くもかけ直して繋がらないので、さすがの私も不安になりWebサイトを探して番号を確認しました。驚いたことにそのホームページにはこんな記載があったのです。
「4月9日より当分の間、休業といたします」

 理由も説明していなければ「いつまで」といった期日の指定もない突然の休業です。
 さびれた店というならそれも分かりますが、駅前の便利な場所にある格安店で、いつ行っても満席で、だからこそ1か月も前から予約を入れなければならないほどの店でした。休業しなければならない理由がありません。
――と、そこで思いついたのが人手不足です。そう言えば前回利用したときも、なんだか注文したものが出て来なくて困った記憶があります。
 しかしほんとうに人手不足のためにこれほどの店を閉じるとしたら、これは大変なことだなと改めて思った次第です。
 ファーストフード業界やコンビニ、運送関連ーー今話題になっている業界だけでなく、給与や時給をいくら上げても人が来ない実態があるのです。

【売り手市場の中身】

 今年もつい先日大学生の就職活動が解禁となり、昨年に引き続き空前の売り手市場だそうです。しかしこの「売り手市場」も数字上の話で、実際には一流企業や有名業界には求人をはるかに上回る希望者がきていて、必ずしも売り手の思い通りになるものでもないのです。

 私は高校への進路指導はやったことがありますが就職指導の経験はなく、したがってその方面での知識はほとんどないのですが、いくら売り手市場だと言っても生徒・学生がみんな満足できる就職をしてなどということはあるはずがありません。就職状況が良ければ良いだけ希望は高くなり、それが達成されなければ失望も大きいーーそれが常だと思うのです。
 今の学生は売り手市場で恵まれているねと単純に言えない理由がそこにあります。

 さて実は私は、先ほどから同じ場所をグルグル回りながら、考えが全く前へ進んで行かないことに苛立っています。
 本当に書きたかったのは、これほどの売り手市場でありながら、そうした就職状況からまったく取り残されている子どもたちがいる、ということです。
 どんなに人手不足でも、たとえ店を閉じなければならないほどの深刻な人材不足の状況であっても、決して呼んでもらえない子たちです。
 もう1日あいだを空けて、心を静めて、あらためて原稿に向かいたいと思います。