カイト・カフェ

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「71年目の夏に戦争について考える」③

 アメリカ大統領選挙ではほぼトランプ氏の目はなくなったと言われています。ただしまだ3か月ありますから何が起こるか分かりません。
 私はクリントンではだめだという人たちの論拠がイマイチ分かっていないのでこの件に関して何ごとかを言う権利もないのですが、できもしないことを平気で言うトランプ氏のような物言いが大嫌いなのでとりあえずクリントン派ということにしておきましょう。
 しかしだからと言ってトランプ氏の功績をまったく評価しないわけでもありません。何と言っても彼は“物言わぬ少数派”の本音を暴き出し、煽り、大きな力として育てたからです。

 今回の選挙(まだ終わっていませんが)を通して私が非常に驚き、思考を根本から組み立てなおさなければならないと思ったのは、余りに多くのアメリカ人たちが国際社会や国防、世界の将来に関して無知ないしは無関心だということです。
「メキシコ国境に高い塀をつくり費用はメキシコ政府に支払わせる」
「韓国や日本は自前で国防をすべきで、そのためなら核武装も認める」
 そんな発言にアメリカ人はドン引きするかと思ったら逆に喝采なのです。
“日本が核武装をして軍事大国化し、太平洋戦争の仕返しに来る”――そんな妄想を抱く人さえ出そうな内容なのに誰も言い出さない。
“日本の核武装、いいじゃないか、やれ、やれ!”といった感じです。
 それに対して日本国内からも喝采の声が上がっています。
憲法改正は面倒だが、核武装憲法違反でないからまずこちらから手をつけよう!」

 まだまだ夢物語のような話ですが一応警戒しておく必要があるでしょう。今回トランプ氏が大統領にならなくても4年後の大統領選では再び同じ話が蒸し返される可能性があります。なにしろ“トランプでもかなりやれた”のです。“同じ流れで、俺ならもっとうまくやれる”――そう考える政治家が出てこないとも限らないからです。

 さて4年後、トランプ氏と同工異曲みたいな政策をもった大統領がアメリカに生まれたとします。
アメリカ軍が駐留するための十分な金を払う気がないなら、もう韓国も日本も守らない。両国とも自分で勝手にやればいい」
 そう言われたとき日韓はどうするのか。、 日本はまだしも、不必要なほどの核兵器をもった中国・ロシアが目の前で、4年の間にすっかり成長して核大国となった北朝鮮と国境を接する韓国は、その状況に耐えられるのか?
 数百万ドルを越えるの駐留経費を全額支払ったうえに指揮権まで譲渡しなければならないなら、むしろ北朝鮮と同じ一点豪華主義核武装で対応した方がいいのではないか、アメリカだってそれでいいと言っているのだから――そんな話の出てくる可能性は十分にあります。

 さらにそうなったとき、中・ロ・南北朝鮮半島がすべて核保有国になって、日本は果たして耐えて行けるのか。素直にアメリカに頭を下げ、「駐留経費および“みかじめ料”は全額支払いますからどうぞ守ってください」とお願いできるのか、お願いした上で有事の際は必ず守ってもらえると信じられるのか(あのトランプのような男が大統領であっても)。それくらいならいっそ他の国々がやっているように日本も核武装すべきではないか――。

 昭和から平成に移って日本はすっかり変わってしまいました。20世紀から21世紀に入って世界そのものも様相を変えてきました。
 そうしたことを前提にして、私たちはものごとをどのようにとらえ、子どもたちにどう伝え、未来に対してどんな準備をしなければならないのか、ここが踏ん張りどころかもしれません。

(この稿、続く)