「『ポケモンGO』〜ピカチュウは医療費問題と引きこもりを救う(かもしれない)」

 土日は原則的に更新しないつもりなのですが以前にも申し上げた通り、この国だけでも1憶2600万人もいるのです。私が考えそうなことは他の誰かも必ず考えてどこかで発表してしまうので、あとから書いてパクリだと思われるのもシャクだし、だからといって書かないと忘れてしまう(老化)ので土曜日ですが書き留めておきます。

 話題の「ポケモンGO」が配信され始めました。日本発祥のポケモンが日本で使えないというフラストレーションに晒された一週間、さぞかしイラついた人も多かったことでしょう。そのせいか海外からもたらされるニュースはやれ交通事故にあっただの崖から落ちただの、とどのつまりは勝手に写真を撮られたと勘違いした男に銃で撃たれたとか、とんでもない話ばかりです。
 しかし似たようなニュースばかりが掘り出されるのは結局メディアの担い手が働き盛りの報道マンばかりであって、普通の仕事についている人とか老人だとか、つまり一般に属する人々の感じ方・考え方を反映しないからなのかもしれません。
 とりあえず高齢者の入り口にいる私としては、“あんなものにとりつかれて10時間も屋外を歩かされたらかなわない”と思い、そのあと“案外、これいいかもしれない”と思い直したりもしています、寝たきり老人が減るかもしれないからです。

 10年近く以前、近隣で「寝たきり老人をなくす運動」というのが盛り上がって皮肉屋の私なのどは「年寄りを叩き起こすのかよォ」とか思っていたら本当に「叩き起こす運動」だったことにびっくりしたことがあります。
“寝たきり老人”にはもちろん病気で起きられない人もいれば全身が弱って体を起こせない人もいます、しかし多くは体がしんどいので起きるのを面倒くさがっているうちに起きなくなった人たちなのです。ですから彼らを叩き起こし、適切な運動をさせるとまた動けるようになったりします。それを促進しようというのです。

ポケモンGO」が巷間言われるように「50代・60代・70代でもみんな夢中になる」ようなものだとしたら、半分寝たきりの老人に渡せば生き生きと歩き始めるかもしれません、そんなふうに思いません?いや、それ以前に60代・70代が毎日ポケモンを探して3時間も4時間も歩くとしたら、成人病の患者など飛躍的に減って「寝たきり」の可能性も極端に低くなるかもしれません。おまけにスマホを手にしてウロウロしているのは全員同好の士ですからちょっと声を掛け合えば会話も弾む――。そうなったら心の健康も取り戻せて医療費の問題も吹っ飛んでしまうかもしれません。まさに「ポケモンGO! ピンピンコロリ!」です。

 高齢者、寝たきり候補としては以上ですが、さらに元教員として思うことは、「ポケモンGO」が不登校や引きこもりを劇的に減らすのではないかということです。

 私たちが思う最悪の引きこもり――もう何年も部屋に籠ったきり一歩も外に出てこない、昼夜転倒して風呂にも入らず一日中ネットゲームに没頭して他に何もしていない(らしい)、家族との会話はメモのやり取りで済ませ、意に従わないと部屋を破壊し「火をつける」と脅す、だから家族は何も言えず、ただ尽くしている――そんな引きこもりが「ポケモンGO」に引きずり出されるわけです。今までは部屋に籠っているからゲームしかすることがなく、ゲームをしなければならないから部屋に籠っていた子どもが、初めて「ゲームをするには屋外に出なければならない事態」に直面するわけです。
 もちろん最初から日中の屋外へというわけにはいきませんから深夜の徘徊になります。皆が寝静まってから密かに家を出るわけです。ひとりでコソコソと歩み始めます。
 ところが困ったことに、一歩外に出ると「ポケモンのいるところに人間あり」なのです。ブームですから昼夜を問わずだれかが歩いています。同じ個所に集まってきます。そのうえ事情を知らない人が何の遠慮もなく声をかけてきたりします。
「なんか見つかった?」(以下、「ポケモンGO」をやったことがないのでそういう会話が成り立つかどうかははなはだ疑問なのですが)
「オレ、リザードン持ってるけど、何かと交換してくれない?」
「さっき、あそこにゼニガメがいたよ」
 それどころかまったく何も考えずに、「そこ曲がったところにフシギダネがいるって。一緒に探しに行こう!」とか言って手を掴んで走らせたりします。そうこうしているうちに気がつくと同好の仲間と一緒に歩いていたりする、ポツリポツリと会話らしいことも始まる。とにかく社会とつながってしまう・・・。
 ゲームには中毒性がありますから一度ハマったら簡単には止めることができません。夜じゅう走り回ってポケモンを探し、あたりが白々と明けてきたからといってドラキュラではありませんから慌ててねぐらに帰る必要もありません。ほんとうに疲れ果てるまで歩いてようやく帰宅です。そして目が覚めたら再び「ポケモンGO!」。

 歩くことと太陽の光を浴びることが体や心に悪いはずはありません。必ず全身に動物的な“生きる力”が甦ってきます。
 さらに彼に声をかけてくる人たちは全員「ポケモンGO」に夢中になっている人間ですから会話内容に困ることもない、彼を困らせることもない、こちらから話しかけてもスマホを手にしている者同士だと絶対に胡散臭がられたり怪訝そうな顔をされたりする心配もない。かくして彼は「ポケモンGO」を通して社会復帰の第一歩を踏み出し始める・・・・・・。

 そんなバカなと思うかもしれませんが不登校・引きこもりは160万人もいるといいます。その中で0.1%が私の予言通りになるとしたらそれだけでも1600人です。これまで1600人もの不登校・ひきこもりをほとんど同時に引きずり出した人も組織も装置もありません。

 期待して見ていきましょう。

*ただし、毎週末小学生の子どもにスマホを持ち出され、夕方まで戻ってこないという不都合にウンザリした保護者が、必要もないのに携帯を買い与えてしまう、そんな厄介な状況も目に浮かばないわけでもないのですが・・・・・・。