カイト・カフェ

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「現在のところ可能性は極めて低いのですが・・・」~日本が核武装する日

 北朝鮮ピョンヤンで開かれた第7回朝鮮労働党大会が閉幕したようです。
 36年間も開かれなかった(開かずにやってこれた)党大会をなぜ開くのか――よくわからなかったのですが、メディアによると、
「先代も開けなかった党大会を開くことによって権威をアピールし、金正恩が名実ともに北朝鮮の最高指導者であることを内外に知らしめるため」
なのだそうです。
 それが成功したかどうかは今後の評価を待つことにして、しかし少なくとも遠く離れた日本の、さらに山奥に住むジジイである私などは強く“知らしめられた”ひとりとなりました。北朝鮮は今の態勢のまま、何十年も続いていくかもしれないのです。

 それと正反対の情報――このままでは北朝鮮はもたないという話は何十年も前からありました。特に金正日時代の大飢饉や今の金正恩が立った時期、そして直近では「次元の異なる制裁」「過去二十年間で最強」といわれた国連の経済制裁が決議された先々月などは、それぞれ「ああこれで数年どころか数か月で北朝鮮は崩壊する」と思わせるに十分でした。
 ところがどっこい、今回届いた映像を見ると北朝鮮はちっとも困っていない。

 ピョンヤンの街には超高層ビルが並び道路には車が満ち満ちている。路上に貧困の様子はなく、人々は生き生きと働いている、高官たちは自信に満ちいる・・・。
 特に金正恩氏は丸々と血色もよく、とても響くきれいな低音で自信にあふれた演説をしている。
「これからの北朝鮮は米露と並ぶ責任ある核保有国として、核兵器の先制使用はしないことを宣言するとともに核不拡散にも積極的に協力していく。そしてこれまで敵対関係のあった国々とも対等な立場で友好関係を結んでいきたい」
 どこの大国の国家元首かと思わせるほど堂々とした宣言です。

 もちろん南の朴槿恵さんのお父さんのように密室で部下に暗殺されるという可能性もないではありませんが、北朝鮮の人民に反抗の力はなく、諸外国に本気で金王朝を滅ぼそうという意欲がない以上、体制はそのまま続いていきそうです。
 そして20年も30年もたつ間に北朝鮮の核およびミサイル技術はどんどん向上して、ニューヨークも北京もモスクワも、ロンドンもパリも標的に見据えて北朝鮮は世界に君臨する――そんな悪夢が現実性を帯びてきます(現在のところ可能性は極めて低いのですが)。

 一方、北朝鮮の核ミサイルに怯える韓国では「わが国も核武装すべき」という世論が7割近くにものぼり、並大抵のことではないとはいえ、20年、30年と時間をかければ核兵器を持つ可能性もないわけではありません(現在のところ可能性は極めて低いのですが)。38度線を挟んで多数の核ミサイルが対峙する時代が来るのです。

 しかしそうなったとき――東アジア4カ国の内の3カ国が核保有国となる時代――それでも日本は非核三原則を保持できるのでしょうか?

 おりしもアメリカ大統領選挙予備選では共和党の候補が「日本も韓国も核武装すればいいじゃん」と発言し、驚いたことにその発言者が支持を落とさない――アメリカ国民の多くは日本が核武装することに案外抵抗がないということが分かったのです。
 それを受けて日本国内でも、日米同盟が解消される可能性とともに核武装の是非を問い直す空気が生まれています。日本がアメリカの支援を全く受けず、独力で軍事を賄って核武装する日が来ないとも限らないのです(現在のところ可能性は極めて低いのですが)。

 フィリピン大統領選では中国との融和を訴えるロドリゴ・ドゥテルテ候補が当選を確実にしたそうです。これで南シナ海の領土問題は少なくとも中比間ではなくなります。この問題はフィリピンが中国に対して訴えているものですからフィリピンが黙れば問題もなくなるのです。

 アメリカが去りフィリピンが手を引いた後、マラッカ海峡の安定航行は日本が中心となってごくわずかな東南アジア諸国と守らなくてはならなくなるかもしれません。そのとき自衛隊核兵器を持って南シナ海に常駐します(現在のところ可能性は極めて低いのですが)。

 つい半年ほど前まで、トランプ氏が共和党の候補となる可能性はほとんど問題とされませんでした。しかし今や堂々たる候補で本選挙も制圧しかねません。
“現在のところ可能性は極めて低い”はずの問題が明確な現実となるのに、時間は驚くほどかからないのです。

 私は自分の子供や孫や教え子たちが生きなければならない時代に対して、かなり深刻な不安を持っています。
 もちろん“現在のところ可能性は極めて低いのですが”。