カイト・カフェ

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「トランプ・マジックの話」~アメリカが手を引いて日本が軍事大国になるという手品

 改めて辞書で調べて「ああ、マジックというのはやはり魔法・手品なんだな」と感心したり首を傾げたりしています。魔法と手品ではだいぶ感じが異なるからです。
 魔法といえばやはりタネも仕掛けもなく、魔法使いや魔女たちの才能や修練によって成し遂げられる奇跡や表現のことです。人間業ではありません。
 一方、手品の方はタネも仕掛けもあることが前提で、その「タネや仕掛け」をどう悟られないかが勝負どころの人間業です。
 手品師が“魔法”だと言って芸を披露するのは嘘つきな話ですし、魔法使いが“手品”だと言って奇跡を見せるのも卑怯な話です(私はMr.マリックは後者ではないかと長く疑っています)。

 さて、アメリカ共和党の大統領候補者指名を争うドナルド=トランプ氏がとんでもないことを言い出しました(ずっと言っていますが)。「日本がアメリカの防衛義務を負わないのに、なぜアメリカが日本を守る必要があるのか」といったことは早くから発言していましたが、ここにきて、日本が在日米軍の駐留経費を大幅増額せねばアメリカは撤退する、日本も韓国も自分の国くらい自分で守れ、金持ちなんだから原爆も自分たちで作ればいいじゃないか、とか言いだしたのです。

 3か月前ならどうということはないのですが、今や共和党の候補となり次期大統領の座も視野に入ってこようとする人の発言です。実際に大統領となって言葉通りに行動するとも思いませんが、駐留経費の大幅増額だとか在日米軍の大幅縮小といったことぐらいはやろうとするでしょう。そのとき日本はどう対応するのか。空いた米軍の穴を自衛隊の大幅増強によって埋めようとするのか――。

 今のところトランプ大統領が実現する可能性は五分五分以下です。
 しかし確実なことがあります。それはアメリカ大統領候補が日韓の原爆保有を訴えても彼の支持率は落ちないということです。一定のアメリカ国民は、日本が原爆を保有すると考えてもさほど抵抗感がない、そのことをトランプ氏は証明してみせたのです。
 これまで考えてみたこともなかった話です。アメリカが自らの負担軽減のために日本を見捨てるかもしれないという話はありましたが、見捨てる代わりに原爆の保有を認めるという、ある意味、非常に筋の通った話をしたのはトランプ氏が初めてです。論理としてこれほど納得できる話はありません。

 一方、日本国内にはこの話を願ってもない吉祥として受け取る人々がたくさんいます。アメリカが日本の再軍備・核保有を認めるなら、トランプでも花札でも何でもいいや――そう思える人たちです。この人たちは今こそ絶好の機会と勢いづいているのかもしれません。日本が英米・フランス・ロシア・中国と肩を並べ、強い経済力と軍事力で世界に影響を与えられる国家に成長できるかもしれないからです。

 それがトランプ氏が私たちに見せた、深刻なマジックです。