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「ゴム跳びの話」~昔の遊び

 児童館では現在「ゴム跳び」がちょっとしたブームになっています。というよりは職員たちで流行らせようとしています。
 伝統ある遊びですからもちろん子どもたちの食いつきは抜群です。
 しかしこの遊び、本当に謎です。

 小学校の「生活科」ではしばしば「昔の遊び」がテーマになり、けん玉やコマ、ヨーヨーなどが扱われることが少なくありません。リズム感を養ったり身体の巧緻性を高める点でも意味あることだと考えられ、積極的に進めるふうもあります。もちろんゴム跳びも結構な運動量ですので、実際に教えている先生もいないわけではありません。
 ただしひとつだけ重大な制約があります。それは「ゴム跳び」が女の子の遊びと考えられてきたため、クラス全体に広めにくいのです。禁制と言われているわけではないのに、なんとなく男子は近づきにくく、触れてはいけない雰囲気があります。

 私の子どものころは校庭や公園の隅で、女の子が数人、いつでも歌を歌いながらゴム跳びを楽しんでいました。当時の女の子は遊ぶときもスカート姿だったので、下着が見えてはいけないということで裾をパンツの中にたくし込んみ、ブルマーのように膨らませて跳ぶのがが常でした。男子が近づき難かったのにはそうした事情もあったのかもしれません。下着が見たくて近づいていると勘ぐられたのではかないませんから。
 私が子どものころといえば半世紀も昔のことです。では一体いつごろからこの遊びは続いているのでしょう?

 今年90歳になる母に聞くと自分も子こどものころに夢中になってやったと言います。ネット上でもゴム跳び歌として「金鵄(きんし)輝く日本の〜」という「紀元2600年」の報祝歌が出てきますから、1940年(昭和15年紀元2600年)にはゴム跳びが行われていたことは確実です。それ以前は、となるとこれは分からないところです。

 Wikipediaによれば国産輪ゴムの第一号は1923年(大正12年)だそうですから輪ゴムを使ったゴム跳びはそれ以降のことと考えられます。しかし別に普通のゴム紐だっていいわけで、結局、それ以上は歴史をたどることができませんでした。

 ネットをあちこち駆け回りながら「ゴム跳び」を調べている最中、驚くべきことに気づきます。それはこの遊びが日本の独占ではないということです。
 Youtube上でもフランスやスペイン、グアテマラやタイなど、世界各国のゴム跳びを見ることができます。しかも遊び方はほぼ同じ、基本的に女の子の文化であることも変わりありません。世界で同時に行われているのに、横のつながりはほとんど見えないのです。

 コマやヨーヨーは商業ベースに乗りやすく、ベイ・ブレードやスーパー・ヨーヨーいった具合にブームはしばしば意図的につくられ、繰り返し子どもたちのもとに戻ってきます。
 ゴム跳びはそうではありません。輪ゴム数十個をチェーンのように編めばできてしまう用具なので、金儲けの対象にはなりにくいのでしょう(*注)。しかしそれにも関わらず延々と今日まで続いている。
 ブームもない、「世界ゴム跳び協会」とか「世界ゴム跳び選手権」といったものもなく、誰かが意図的に伝承させようとしているわけでもないのに女の子の間で綿々と続けられてきた――私はなんだかとてもウキウキとした気持ちになってきます。
 こんなもの、男の子に絶対に渡してはいけません。

*とは言っても、ネットで調べたらアメリカ製「ゴム跳び紐(¥350)」とか日本製「ゴム跳びのゴムひも(¥895)」とかもあってびっくりしました。