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「大学ランキング、日本の凋落、韓国の死」〜自分の目で見る⑥

北京大にも抜かれ…東大、アジア首位転落 京大も88位に後退(2015.10.1産経)
 それが「(THE)世界大学ランキング2015-16」で起こった事態です。長く20位前後を保ってきた東大が43位に転落し、京都大学も59位から88位に急下降したのです。産経新聞を始めとするマスメディアの落胆も大きく、
26位のシンガポール国立大(同25位)にアジア首位の座を明け渡した。42位の北京大(同48位)にも抜かれた。
 といった言い方になります(なにかとてつもなく差別的な匂いがしないわけでもありませんが)。
 さっそく内容を調べなくてはなりません。
 THE世界ランキング2014―2015(14年版)と2015−16(15年版)ではどう評価が変わったのか、東大を例に比較します。

        【2014版】 【2015版】
  1 教 育   81.4 → 81.4
  2 論文引用  74.7 → 60.9
  3 研 究   85.1 → 83.0
  4 国 際   32.4 → 30.3
  5 産学連携  51.2 → 50.8
    総合評価  76.1 → 71.1

 見るとわかるように明らかに成績の落ちているのは論文引用です。ここだけで14ポイント近くも落としてしまうと勝負になりません。
 実は京都大学も同じで、
「教育(70.4→70.6)」「論文引用(50.7→46.6)」「研究(68.4→69.3)」「国際(29.0→26.1)」「産学連携(73.3→79.0)」「総合(62.8→59.9)」
 と「国際」「論文引用」を除く3項目で成績を伸ばしたにもかかわらず、2項目の減点で総合評価を下げてしまいました。前にも言ったように「国際」の比率はわずか5%ですから、実質的には「論文引用」の減点が急下降の原因と断言してかまいません。
 日本の大学に何が起きたのでしょう?

 実はこれも一種の詐術なのです。2014年11月19日のニュースに「タイムズ・ハイアー・エデュケーションとエルゼビア、『世界大学ランキング』で業務提携に合意」という記事があります。それによるとこれまで「(THE)世界大学ランキング」が使用していたデーターベースをトムソン・ロイター社の「Web of Science(WoS)」からエルゼビア社の「Scopus」に変更したというのです。 
 言ってみれば「A図書館の貸し出しベスト100」から「B図書館貸し出しベスト100」に切り替えたようなものです。
 これでは評価の継続性は図れません。いわばものさし自体が変わってしまったわけですから以前と比べることは無意味なのです。

 そう思って調べなおすと「(THE)世界ランキング2015-16(15年版)」における順位の大変動というのは日本に限ったものではありませんでした。お隣りの韓国などはさらに悲惨で、14年版で100位以内にいた3大学のうち2大学が100位以下に押し出され落ち方も尋常ではなかったのです(ソウル大50位→85位、KAIST52位→148位、浦項工科大学校66位→116位)。

 これもやはりデータベース変更の被害者かと思ったのですが意外やそうでもなく、例えばソウル大の場合「教育(75.5→66.5)」「論文引用(48.7→50.0)」「研究(77.1→70.5)」「国際(30.3→30.9)」「産学連携(86.3→85.4)」「総合(64.8→60.5)」とランクダウンは「研究者による評価」の低下が原因のようなのです。

 逆に順位の跳ね上がった大学としてはライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン(いわゆるボン大学、ドイツ)の194位→95位などがありますが、ここも「教育32.2→45.1」「研究22.2→47.5」と「研究者による評価」の影響の大きいことが覗えます。

 今回のTHE大学ランキングの変動幅は大きく、13年版から14年版に移るときに10番以上ランクアップした大学は11しかなかったのに、15年版への移行では32もあります。ランクダウンについて10大学から27大学に増えています。さらにベスト100位圏内への入れ替えは14年版では7大学だったのが15年版では15と倍増しています。
 最も落ちたのは先ほどの韓国KAISTの96位ダウン、最も上昇したのも先に示したライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン(いわゆるボン大学)で101位アップ。
 総じてドイツ・オランダ・スウェーデンあたりに急上昇した大学が多いのも何か恣意的なものを感じさせます。こうなるとどこまでまじめに受け取っていいものかわかりません。

参考「THE世界大学ランキング2013-15 比較」the20142016web.xls

(この稿、続く)