カイト・カフェ

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「世界が日本になる」〜東京1位、京都1位

 イギリスの「モノクル」という情報誌の世界住みやすさランキングで東京が1位になったというニュースがありました(6月13日 日経新聞)。
 世界の都市ランキングというのは何種類もあって、東京は最も安全な町(治安)でも世界一なら、最も危険な町(自然災害)でも世界一位になっています。しかし総合的なランキングではせいぜいが3位か4位で、住宅事情や物価に飛躍的な改善がなければ絶対に一位になることはない――それは東大が英語で授業を行い卒論もすべて英語記述になり、留学生が現在の10倍くらいにならないと世界ランキングの10位以内に入ってこないのと同じように、明らかなことだ――そう思っていただけに非常にめでたい気持ちです。
 もっとも東京が世界一になったのはやはり「モノクル」の評価基準のおかげで、おいしいランチがいくらで食べられるかといった主観的なものがあったり、海や山にどれだけ近いかといった他のランキングにはない項目があったりと、かなり特殊な事情もあります。世界を公平に評価するなどというのは至難ですから、ある意味ランキングなどその程度、といった言い方もできましょう。

 一方、京都の方はもっとも影響力の高いと言われるアメリカの大手旅行雑誌「TRAVEL+LEISURE」の「世界の魅力的な都市」で2年連続一位を獲得したと言います(7月8日 朝日新聞)。
 こちらは読者アンケートの結果ですから、ある意味、公平で納得のいくものです。門川市長が「各地の自治体と協力し、日本の魅力を高めていきたい」と語ったように、日本観光のさらなる起爆剤となるものですから、これもやはり非常にめでたいできごとと言えます。

 こうした評価が世界の津々浦々に広がり、観光客がどっと押し寄せる、それによって観光業が大いに潤う――それもいいことですが、私は何より、外国の方々がその目でこの国を見て帰ることに価値があると思っています。

 日本に来て「ほんとうに道にゴミが落ちていないんだ」と思って帰る人もいると思いますが「ないと言ったのによく見ればあるじゃん」という人だっているでしょう。「世界で最も安全だと思ってきたのに財布を盗まれた」とか「落としたスマホが結局返ってこなかった」という人だっているかもしれません。けれどおそらく十中八九は好印象を持って帰るに違いありません。

 そして「ほんとうに日本は良い国だった」と宣伝してくれる人がいて、100人に1人くらいが「自分の国もそうであったらいいのに」と思って自国のあり方を変えようとしていく――そうなるとたとえば、あの悪名高い中国人観光客のマナーも20年後にはすっかり鳴りを潜めてしまう、そんなこともあるのかもしれません。中国で100人に1人と言えば1200万人ですから。

 同じことが世界各国で起る――そのとき、世界は日本になるのです。
 日本のように人々の立ち振る舞いが美しく、たおやかで優しい人間関係が広がります。“おもてなし”が当然のサービスで、人々は互いをいたわり、自然をいとおしみます。
「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉もありますが「文化は高い方から低い方に流れる」という言葉もあります。日本の常識は世界の非常識と言われて久しくなりますが、変わるべきは日本ではなく世界の方です。

 以上、この大げさな話を私は子どもたちにしたいのです。もちろん誇張や誇大妄想を含んでいることは十分に承知しています。けれど美しいものを守るにはそのくらいしなければだめなのです。
「汚い公園を美しくしましょう」というのは大変ですが「美しい公園をこのままに保全しましょう、さらに美しくしましょう」というのは遙かに簡単です。

 子どもには夢を持たせ、さらにこの国と世界を美しいものに変えて行ってほしいのです。