「非婚の時代」�B〜結婚のススメ

 高度成長期に電気炊飯器とガスレンジ・冷蔵庫が台所に革命をもたらしたように、80年代は瞬間湯沸かし器と電子レンジが台所を一変させました。

 真冬に苦もなく食器が洗えること、冷たくなった食材を一瞬のうちに温められること、この二つがかなって初めて、独身生活は食事づくりの苦痛から解放されました。5分で夕食の準備ができ、5分で片付けもできるのです。

 けれどそのころ、同時に深夜営業の店も増え始め、コンビニでも惣菜や弁当が買えるようになってそもそも食事づくりなどしないでも済むようになってきたのです。今や外食産業も花盛りで、食事のとり方はものすごく多様になりました。

 最近、久しぶりに大型スーパーの総菜売り場を眺めたのですが、10m近い惣菜の並びを順番にひとつずつ買って食べても、一カ月は優に持ちそうです。毎月10日はイカリング、11日が酢豚で12日はトンカツ・・・そんなふうに決めても飽きが来そうにないのです。“おひとり様パック”も充実していますから「ひとつ口はもったいない」ということもありません。経済的にはむしろ一人でいる方が有利なのです。

 おそらく“独身貴族”という言葉がささやかれ始めたころからその傾向は進み、今や完成の域に達したのかもしれません。

「そもそもなぜ結婚しなくてはならないのかわからない」

 結婚の必要性をまるで感じない人が出て来るのも当然です。

 もはや結婚しなければならない積極的理由はどこにもありません。老後はどうするのだと言った言い方もありますが、男性の5人に1人、女性の6人に1人は生涯一度も結婚せずに人生を送るのです。その人たちが“老後”になる時代には、その人たちのニーズに応える社会が必ず出現しています。老後のために今を我慢することはありません。

 ただし、結婚する必要はないのですが、「した方がいいか」「しない方がいいか」という話になれば、それも私は「まず間違いなくした方がいい」と答えると思います。これだけ独身生活が安定的に送れるようになると、10年たっても20年たっても、それこそ半世紀過ぎたって個人の生活の主要な部分は、まったく変わらないだろうからです。50年後も同じように暮らしているのです。そんなの――つまらなくありませんか?

「狭い家の中で二つの価値観が交錯するわけですからただでは済まないのです」

 昨日はそうお話ししました。大変な面もありますが、家庭を持つことは新しい自分を発見したり創ったりすることです。そして子どもが生まれたりすると、人生はどんどん変化していきます。

 乳幼児の親であることと小学生の親であること、中学生の保護者であることはまったく違います。とりあえず“生かしておく”が最低目標である時期と、本気で人生観を語らなければならない時期とでは、同じ人間ではいられないのです。変化が強いられ、そのために変化を遂げていきます。

「人生は、何かを成し遂げるにはあまりにも短く、何もしないで過ごすにはあまりにも長い」

 誰かの箴言ですが、まったくその通りです。ノーベル賞を取るような偉大な仕事をしている人はそれだけで人生を終えることができるでしょうが、普通の、市井の人だったら、結婚でもしないとなかなか人生を全うすることは難しいのです。

 この際、相手なんか誰でもいいですから、結婚してしまいましょう。その上でダメだと思ったら元に戻せばいいのです。それは汚点ではありません。いまどき、“バツイチ”はむしろ勲章です。