「卒業」

 一年間、ご苦労様でした。そしておめでとうございます。 例年のこととはいえやはり卒業式は特別の日、何となく華やぎ、同時に引き締まった気持ちになります。特に初めての担任学級を卒業させるお二人の先生には、格別の感慨がおありでしょう。  先日、あるテレビ番組で94歳の元教師の「初任のときの教え子に会いたい」という願いをひ孫がかなえようとする企画がありました。ひ孫の女性はテレビ局の協力もあって、代用教員として18歳で担任した元児童16人を探し出すことに成功します。そして番組は、学校に資料を見に行くという設定で呼び出された元教師が、サプライズで元教え子と再会する場面を映し出します。教え子と言ってももう86歳、72年ぶりの再会です。 ところがサプライズは、元教師よりも見ている私たちの側にありました。なんともうすっかり年寄りになった教え子たちの中に、元教師は次々と子ども時代を見出すのです。 「あ、言わないで。・・・分かった、○○ちゃんでしょ。学校の坂道を降りたところの右手の家の」 「ああ、○○さんね。お姉さんがいた」  もちろん個人的な能力の問題もありますが、やはり初めての児童は特別なのです。  ところで、教え子の方はどうなのでしょう。子どもにとって担任が初めてかどうかなんて関係ないようにも思っていたのですが、もしかしたらそうではないのかもしれません。なにしろ注ぎ込む教師のエネルギーがハンパではありませんし、不慣れでチグハグなところも何となく記憶を補強しそうです。86歳の教え子たちが皆思い出を持っていて、72年を経てお詫びやお礼やらを語っている姿がとても印象でした。  今では歌われなくなりましたが、私は「仰げば尊し」の歌詞が好きです。中でも好きな部分は1番から3番まで共通する最後の一節です。それを今、心の中で高らかに歌って、今日は子どもたちを送り出したいと思います。 「今こそ別れめ いざさらば♪」 *「め」は意志・決意を表す古語の助動詞「む」の已然形。したがって「今こそ別れめ」は「さあ、今こそ別れよう」の意味です。